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バーをこよなく愛すバーファンのための WEB マガジン

2017.06.7 Wed

たまさぶろのBAR遊記ニューカレドニアBAR探訪5)
天国にいちばん近い島のお酒事情と
ヌメアのお勧めBAR その2

たまさぶろ 元CNN 、BAR評論家、エッセイスト


シャトーロワイヤル・ビーチ・リゾート&スパ

ビールの話題になったので、ヌメアの中心中の中心「ココティエ広場」の目の前にある「ココナッツ・バー」にも触れておく。


ココティエ公園側から見た「ココナッツ・バー」 一階が正面入口

ニューカレドニア観光局などが集まるヌメアの中心に鎮座する広場から「アナトール・フランス通り」を渡った「フオッシュ通り」との角に位置する老舗で、昼間から営業している割には18時ぐらいには閉店してしまう老舗バー。

バーとは言っても、年輩の女将さんが切り盛りしている「パブ」と呼ぶほうがふさわしい。ヌメア市街地を炎天下に散策、カラカラになった喉を潤すに最適のロケーションだ。

老舗であれば、どこにでも情報が記載されていそうなものだが、日本のガイドブックどころか、googleにさえその位置の記載がない。この情報社会にて不可思議ながら、住所も見当たらない。観光局が配布している日本語の地図にも「バー」と記載されているのみだ。


気さくな女将さん 写真にもにこやかに応えてくれた
入口から私のような怪しい東洋人がずかずかと入っても、店の人が出て来る様子はない。はて…何か声をかけたほうが良いだろうかと思案していると、左手のテーブル席のお客さんが「おーい、お客さんだよ」的にフランス語で店の奥に声をかける(実際はなんと言ったかまったく不明)。すると女将さんがにこやかに出て来る。ビールを頼み、写真を撮っていいか訊ねると、このように応えてくれた。

南国の地元のバーらしい、のんびりした雰囲気が東京もんには、ひたすら羨ましい。フランス語でもできれば、女将さんと世間話でもしたいところだが、時間もない。「メルシー」とあいさつし、店を出る。どうせならビールの2、3杯ゆっくり飲んで、ヌメア中心地の移り変わりについてでも話を聞いてみたいもんだ。私がフランス語を話せれば…だが…。

ココナッツ・バー
Corner of Foch Ave and Anatole France St
Coconut Square
Noumea

ちなみにココティエ広場周辺のお店は、ここだけではなく夜の早い時間には閉店してしまう。中心街だから…と夜半になってから「さて、どこかで一杯」と考えても、いっさい店は開いていない。中心街に宿を取る方は、くれぐれも頭に入れておいてもらいたい(5月末に閉店したとの残念な情報もあり、訪れる方は確認を。女将さんが元気であることを願う)。


ホテルならではの瀟洒なバー・カウンター
さて、こうしてニューカレドニアでも、呑んだくれて一日が終わる。やはり最後は帰路を心配する必要がないホテルのバーで一杯やって床に潜り込もう。

ヌメアで2泊したのが、アンスバタ・エリアのシャトーロワイヤル・ビーチ・リゾート&スパ(Chateau Royal Beach Resort and Spa)。予備知識なしでバーに足を運ぶと、ここのテラスから望める夕陽がまた絶景。こうした驚きは人生を豊かにしてくれる。

旅先でもっとも信頼がおけるのは、国内外を問わずホテルのバー。宿泊客ゆえぞんざいに扱われることもなく、スタンダードなバーテンディングから大きく踏み外すことも少ない。ホテルのバーで一杯やりながら、その街の全容や、時としてその歴史、さらにお勧めバーやレストランなどを聞き出すことができる旅情報の宝庫だ。しっかりしたホテルがある都市なら、良いメインバーを備えたホテルを選ぶのが、出張や旅の基本だと考えている。

観光地だけにこちらのホテルには、時間帯によって日本人スタッフが常駐。色々とアレンジを頼ることができるので、フランス語、英語の苦手な方には勧めたい。

まずはジントニックから。銀座のような空手チョップを食らってもへこたれない立派な氷が用意できるわけではないので、まぁ、及第点と言ったところ。しかし、ご覧のトロピカル・ドリンク、そして麗しきバーテンダーが作るスタンダード「オールド・ファッションド」はご覧の通り。一日を締めくくるにはぴったりの一杯を味わうことができ、満足のいく仕上がりだった。

Bar Le Warai
Chateau Royal Beach Resort and Spa
140 Promenade Roger Laroque,
Noumea 988807
Nouvelle-Caledonie
Phone: +687 29.64.00

こうして、ベッドにもぐりこめば、旅の疲れも癒されるというもの。各位、旅先のバーのチェックは念入りに。そこには旅の醍醐味が待っているゆえ。


オリジナル・カクテル


オールド・ファッションドも中々の出来栄え

ホテルバーのデッキから望む夕陽

最後にBARのみならず、ワイン愛好家への情報をひとつ。

ニューカレドニアは、フランス領だけにワインの品ぞろえは総じて良い。しっかりしたレストランはワイン・リストを持ち、一般の愛好家なら満足できるだろう。「いやしかし、部屋でもワインを」という方は、水上レストラン「ル・ルーフ」から競馬場へと進む通りに位置するフランス・ワイン専門店「ラ・ブティック(La Boutique)」をお勧めしたい。日本人が利用するであろうアンスバタ・ビーチに面するホテルからは徒歩圏なので、労せずしてお好きなワインを買い求めることができる。ニューカレドニアはフランス国内…つまりフランス産ワインに関税がかからない分だけ、価格的にも日本よりもリーズナブルだ。

ニューカレドニアでは伝統的にボルドー・ワインが主流だそうだ。確かにワイン・セラーを眺めても圧倒的にボルドーの品が多い。一見してその品ぞろえをちょっと不思議に感じ訊ねたところ、かつての船便の都合だそうだ。日本も同様だが、フランスから輸入すれば、その船は赤道直下を通過せざるを得ない。するとどうしても気温の上昇は著しい。そこで温度の変化に強い、つまり温度が上がったとしても味が変化しにくいボルドーのワインが優先的に輸入された経緯があるそうだ。ボルドーの濃い味わいは温度による変化の影響を受けにくく、ブルゴーニュなど繊細なワインは温度変化に弱く敬遠されたという。

もちろん現在は保温技術の向上により、他地域のワインも積極的に輸入されるようになったが、やはり昔からの商流のコネクションが強く残っているので、ボルドーのほうが品数が多くなっている。

私もこちらで3本ほど購入し、ブーライユのホテルまで持参した。世界遺産の環礁を眺めながら飲むワインはなかなかオツなものだった。

この店ではウイスキーなども扱っているが、日本のウイスキーは現在、ニューカレドニアでも絶大なる人気を誇っており、仕入れた先からすぐに売れてしまうのだそうだ。しかもお値段も中々。お店で「なぜひと箱ぐらい持って来てくれなかったの」と冗談がとんだほど。日本からニューカレドニアへ、ウイスキーの輸出事業でも始めようか…。

そしてなんと驚くなかれ、こちらのワイン・ショップは、初日にBARで出会ったロザルカさんの実家。つまりショップの主が、ロザルカさんのお父さんとのこと。旅先の偶然は、驚きに値する。ロザルカさんの各種情報提供という恩もある…みなさん、ニューカレドニア訪問の際は、ぜひこちらでワインの一本でもお求めを。

ラ・ブティック(La Boutique / Le Vin Passion)
2 Bis Rue Gabriel Laroque,
Val Plaisance, Noumea
New Caledonia
Phone: +687 78.49.28

ロザルカさんとの再会も祈念しつつ、果たして次回、天国にいちばん近い島に渡るのはいつか…ブーライユの満天の星に願いつつ、本レポートを締めたい。

ニューカレドニアBAR探訪5)天国にいちばん近い島のお酒事情とヌメアのお勧めBAR その1

 


 

たまさぶろ
元CNN 、BAR評論家、エッセイスト
立教大学文学部英米文学科卒。週刊誌、音楽雑誌編集者などを経て渡米。ニューヨーク大学にてジャーナリズム、創作を学ぶ。CNN本社にてChief Director of Sportsとして勤務。帰国後、毎日新聞とマイクロソフトの協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」をプロデュース。日本で初めて既存メディアとウェブメディアの融合を成功させる。これまでに訪れたバーは日本だけで1000軒超。2015年6月、女性バーテンダー讃歌・書籍『麗しきバーテンダーたち』上梓。米同時多発テロ事件以前のニューヨークを題材とした新作エッセイ『My Lost New York ~ BAR評論家がつづる九・一一前夜と現在』、好評発売中。
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