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2018.03.16 Fri

最高蒸留・製造責任者 ビル・ラムズデン博士インタビュー【後編】グレンモーレンジィ スピオス
ライ・ウイスキーが紡ぐ絆

BAR TIMES 編集部

“完璧すぎるウイスキー”として世界中の人々に長く愛されてきたGLENMORANGIE(グレンモーレンジィ)。48年目となるInternational Wines and Spirits Competition 2017ではScotch Whisky カテゴリー最多となる7つの金賞を獲得するなど、極めて高いクオリティを維持し続けるグレンモーレンジィは、今春も我々の元にまた新たな楽しみを届けてくれるようだ。2018年3月2日に限定発売されたプライベート・エディション第9弾 “SPIOS(スピオス)”。1920年代に最盛期を迎えたライ・ウイスキー樽で熟成され、時代を超えて姿を変えた記念碑的なウイスキーの誕生。今回はその発売を記念して、常に進化し続けるグレンモーレンジィの愛に溢れたストーリーを、最高蒸留・製造責任者であるビル・ラムズデン博士に伺いました。


最高蒸留製造責任者 ビル・ラムズデン博士インタビュー【前編】はこちら

 


2018年3月2日に限定発売されたプライベート・エディション第9弾 “SPIOS(スピオス)”。
1920年に最盛期を迎えたライ・ウイスキーの樽で熟成させるという業界初の試みに踏み出したビル博士。
土っぽいアーシーさとスパイシーさがありながらソフトな優しさを兼ね備えたスピオスの裏には、博士とある著名な方との絆の物語がありました。

「ボトルにしたいという思いは全くなかった」。
ビル博士とライ・ウイスキーを結びつけたもの。

「 “SPIOS(スピオス)”は、ただの実験から始まったんです。私自身が20年程前にこういう実験をやってみたいと思いついたいわば好奇心のようなもので、ボトルにしたいという思いは全くありませんでした。スピオスの物語は、1997年頃ウイスキーライターの故マイケル・ジャクソン*氏がアメリカンウイスキーのサンプルを持ってきて下さったことから始まります。ライ・ウイスキーを飲んだことがなかった私は、その味わいの良さや、バーボンとのはっきりとした違いに面白さを感じました。そしてマイケルがその時語ってくれたストーリーが、強く私を惹きつけたんです。1920年代のライ・ウイスキーが盛んだった時代、バーボンよりもライウイスキーが飲まれていた時代の話ですね。」

今でも世界中で愛されるクラシックカクテル――マンハッタンやオールドファッションドは、当初ベースとしてライ・ウイスキーが使われていたんですね。そして20年代というのはジャズの最盛期でもあり、ジャズ好きな私としては彼の語ったことがとてもロマン溢れるストーリーのように思われました。それで、元来のバーボン樽ではなく、ライ・ウイスキー樽を使ってみたくなったんです。とはいえ97年頃の市場を見ても、ライ・ウイスキーは既にポピュラーではなかったので、ライ・ウイスキー樽を入手するまでには10年かかりました。元々バーボン樽のオリジナルと比較するために実験的に作っただけだったのですが、いざ2年ほど前にテイスティングしてみたら味わいがとても良かったのでボトル化の動きへ進み、スピオスが誕生したんです。」

*マイケル・ジャクソン
(Michael Jackson、1942年3月27日 – 2007年8月30日)
ビールとウイスキーを得意とするイギリス人ライターで、それらに関する著書も多く記している。世界的なビール評論家であり、ベルギービールを広く世界に紹介したことで知られる。


尊敬と、感謝の意が込められたウイスキー。
ビル博士の考える“SPIOS”の魅力と、その嗜み方。

「まずはじめに、ライ・ウイスキー樽を使って熟成させたのが業界初であるという部分は大きいでしょうね。元々私が実験として見たかったのは、樽に残ったほんのわずかのライ・ウイスキーがどのように作用するかということでした。なので、スピオスを楽しむ際には是非グレンモーレンジィ オリジナルと比べて味わうことをお勧めします。同じ10年熟成、同じ作り方であるバーボン樽のグレンモーレンジィ オリジナルと、ライ・ウイスキー樽のスピオスとの違いを楽しんでほしい。バーボンと比べてライの方がスパイシーで色々な風味をもっているので、スコットランドのゲール語で“スパイス”を意味する“スピオス”と名付けました。オリジナルがソフトで華やかでフルーティである一方、スピオスは土っぽいアーシーさと胡椒やシナモン、唐辛子入りのチョコレートのようなスパイシーさを持っています。バーボン樽とライ・ウイスキー樽を比較する実験は大成功でした。もう今後発売されることはないので、本当に一期一会の作品です。
そして何より、私とライ・ウイスキーを巡り合わせてくれた、スピオスの生みの親ともいえるマイケル・ジャクソン氏。彼は私が若いときから、ウイスキーだけでなく様々な知識や、影響を与えてくれたとても大きな存在でした。なのでこの“スピオス“は、彼に対するオマージュ的な作品でもあるんです。感謝の思いが込められた、私にとっても大事なウイスキーです。」


「何かを愛することに特別な理由はない」。
全てのウイスキービギナーとラバーへ。

「日本には本当に良いバーが揃っています。私が感じる魅力の一つに、日本のバーでは素敵なジャズミュージックがBGMでかかっているという点は大きいですね。ついつい長居してしまいます。私は色々な国を訪れていますが、実はアメリカやヨーロッパよりアジアの方が女性や若い人がウイスキーを嗜む光景をよく見るんです。グレンモーレンジィ オリジナルの柔らかさも特に女性に受け入れられやすいものであるかもしれません。ウイスキーのなかには、グレンモーレンジィ シグネット*のようにチョコレートの風味を醸し出すものもありますし、ウイスキービギナーでもラバーでも、老若男女の方々に楽しんでほしいですね。若者の酒離れという話も耳にしますが、特別な知識など関係なしにシンプルにもっと楽しく飲んだらいいじゃないと思います。何かを楽しんだり愛することに特別な理由はありません。まだ20代であった私のように、そのきっかけがグレンモーレンジィであればこれ以上の幸せはありませんね。」

*グレンモーレンジィ シグネット
グレンモーレンジィが長年の研究を重ね、チョコレートモルトを使用するなどユニークな製法で生み出した、ベルベットのような味わいのプレミアム・シングルモルト。


これまでの歩みと、守りたい未来。
常に革新を忘れない、グレンモーレンジィが進む先。

「私もすぐにではありませんが、いずれ身を引く時は必ず訪れます。なので既に自分の後継者となる人材を育てているところです。次の人に渡す時のグレンモーレンジィは私が働き始めたときより全然良い状態だと思うので、より進化させていけるはずです。自身のリタイアまでにやりたいことは沢山あります、全てできるかどうか分からないほどです。今後また新たな製品として次々にお届けする予定なので秘密事項ではありますが、実はアードベッグとグレンモーレンジィの蒸留所自体を拡張していくという目標があります。グレンモーレンジィカンパニーがもつ2つの蒸留所のウイスキーのラインナップをさらに増やしていけたら嬉しいですね。そして中国・インド・南アメリカ辺りの、まだグレンモーレンジィがあまり認知されていない国にも同じように愛されるようになっていくといいなと考えています。」
 


 
 
ビル・ラムズデン博士
革新的なウイスキーで世界を驚かせてきた稀代のイノベーター。グレンモーレンジィとアードベッグの最高蒸溜・製造責任者を務める。2017年International Whisky Competitionでは、Master Distiller of the Yearの2年連続受賞を成し遂げた。

GLENMORANGIE(グレンモーレンジィ)
グレンモーレンジィ・シングルモルト・スコッチウイスキーはスコットランドのハイランド地方で1843年に誕生。フルーティーでフローラルな風味が特徴。最高級のオーク樽で熟成、テインの男たちの熟練の職人技で丁寧に仕上げた 「完璧すぎる(Unnecessarily Well Made)」ウイスキーは、伝統と最新技術を融合させるパイオニアとして高い評価を受けている。


プライベート・エディション 第9弾 “SPIOS”
<商品概要>
商品名:グレンモーレンジィ スピオス
(プライベート エディション 第9弾)
希望小売価格:11,000 円 (税込 11,880円)
発売開始日:2018年3月2日(金)より数量限定発売
取り扱い:百貨店/酒類専門店など
仕様:700ml アルコール 46度 ノンチルフィルター


アメリカン ライ・ウイスキー
ライ・ウイスキーはライ麦を主原料とするウイスキーであり、ライ麦由来のかすかな苦みがあり、ピリッとしたスパイシーなものから、まろやかなものまで存在する。ライ・ウイスキーはマッシュ(原料となる麦芽液)51%以上がライ麦で作られているものと定められ、バーボンと同様に内側を焦がしたオーク樽での2年以上の熟成が義務付けられている。20世紀前半にアメリカの高級サロンで上流階級層に多く嗜まれ、「マンハッタン」や「オールド・ファッション」などのカクテルのインスピレーションにもつながっている。



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