BAR TIMES

2018.06.25 Mon

バーテンダー 高橋直美×ニッカ チーフブレンダー 佐久間正が語らうカフェジンの魅力「使うほどに分かるカフェの底力。
ニッカは凄いものをつくったと感じます」

BAR TIMES 編集部


今では世界でも稀少な存在となったカフェ式連続式蒸溜機。「カフェスチル」とも呼ばれるこの蒸溜機から生み出される蒸溜液は、原料由来の香りや味わいがしっかりと残る。その味わいのある蒸溜液に、和のスパイスである国産の山椒とフレッシュな香味を持つ和柑橘を合わせたのが「カフェジン」だ。世界でも類を見ない個性あふれるカフェジンの開発秘話を、世界一のバーテンダー高橋直美が、ニッカウヰスキー チーフブレンダー佐久間正に聞く。(撮影場所:バー・ガスライトEVE/東京・銀座)



「緑色を思わせるジンにしたい。緑美しい山椒との
出会いがそれを実現してくれました」(佐久間)

高 橋 ずっと知りたかったんですが、なぜカフェジンのボタニカルのひとつに山椒を選んだのですか。
佐久間 新商品の開発にあたってチームのみんなと “緑を思わせるジンにしたいね”ってイメージを共有していました。グリーンを思わせるジン。まさに今日、高橋さんにつくっていただいたジントニックのあのライムのグリーンです。であればライムをボタニカルにしてもよかったんですけど、せっかく日本発のジンであるなら、そこは日本の素材を使おうと。日本の素材で緑を想起させるものとして様々なものを試しましたが、一番ピンと来たのが山椒だったんです。
高 橋 開発イメージが味わいではなく、色だなんてユニークですね。
佐久間 そうかもしれませんね。先ほど高橋さんがグラスのフチにつけた青実山椒を「緑色の香りがする」っておっしゃいましたけど、カフェジンのボタニカルに使用している山椒の実はまさしく緑色なんです。乾燥させていますが本当に美しい生のままの緑色をしています。その土地でしかできないフレッシュな香りのする山椒に出会えたことはカフェジンを開発するうえで非常に大きかったです。
高 橋 だからカフェジンのラベルも緑なんですね。私が最初にカフェジンを味わった時、すぐに山椒と分かったのはそんな特別な素材によるものだったんですね。納得しました。でも、“緑”というイメージだけで開発チームの皆さんと感覚の共有ができるってすごいですね。
佐久間 試作をいくつも試して、これは違うねっていうと、みんなも同じ感覚なんです。長年一緒にやっていますから。

高橋直美(たかはし なおみ)
第39回全国バーテンダー技能競技大会総合優勝、I.B.A.ワールドカクテルチャンピオンシップ2013 チェコ・プラハ大会プレ・ディナーカクテル部門優勝、第28回高知県民賞 龍馬賞受賞など輝かしい経歴を持つ。現在東京・銀座「バー・ガスライトEVE」の店長を務める。


佐久間 正(さくま ただし)
1982年ニッカウヰスキー株式会社に入社。入社後、北海道工場に配属。以降、欧州事務所長(ロンドン)、本社生産部原料グループリーダー、栃木工場長等を歴任。2012年4月からブレンダー室室長、兼チーフブレンダーを務める。
「このジンはニッカにしかできない。
決定的に何が違うってそこなんですよね」(高橋)

高 橋 開発にはどのくらいの期間がかかったのですか。
佐久間 プロトタイプをつくったのが4年くらい前です。当時、スーパープレミアムといわれるジンやウオッカが人気で、柑橘を強調したジンや甘みのあるウオッカに興味を持ちました。うちも何かできないかってその時思ったんです。当社はグレーンウイスキーも製造していますから、ウオッカをつくるなら貯蔵前のカフェ蒸溜液を生かせば甘い口当たりのやわらかいものができるだろうと思いつきました。ジンは、元々ウヰルキンソン・ジンをつくっていますから、ジュニパーベリーなどのベースは持っています。それに、レモンやオレンジなどの柑橘をフレッシュなまま冷凍保存して減圧蒸溜させる製造技術は当社が特許を取得しています。ただ、和柑橘では試したことがなかったので、ゆず、かぼす、甘夏などを減圧蒸溜して一度ベーススピリッツと合わせてみたんです。そうしたらチーム全員が「おっ、これいけるね!」って。世界でも稀なカフェスチルと特殊な製造技術を駆使して、どこにも真似のできない、当社でしかつくり得ないスピリッツが誕生しました。
高 橋 ニッカにしかできない、決定的に何が違うってそこなんですよね。普通のジンだとベースのアルコールをカバーするためにジュニパーベリーなどの香りがのっかっている感じですが、カフェジンの場合、まろやかなベーススピリッツの層があって、その上に香りの良い和柑橘の層がのっている。つまり、カフェジンはそもそもの酒質がいいんです。穀物の優しい甘い香り、ふわっとした味わい、これはカフェならでは。聞けば聞くほど本当にいいお酒ですね。
佐久間 ありがとうございます。我々は日本のジンではなく、ニッカのジンをつくりたかったんです。



「人がちゃんと見てあげないと安定しない。そこが
カフェの面倒なところです(笑)」(佐久間)

高 橋 最後にもうひとつ教えてください。カフェだからこそのご苦労はありますか。
佐久間 普通、ジン用のスピリッツは原料を発酵させて蒸溜機で徹底的に雑味を取り除き、アルコールしか残っていない状態にします。当社のカフェスチルは、1963年に導入された当時としても大変に古い機械で、現代のものと比べると蒸溜効率は劣ります。効率が悪いというのは蒸溜のスピードが遅いとか、原料の発酵に時間がかかるという意味ではなく、しっかり雑味を取り除けないということなんです。逆に言うと、原料由来の味わいが残ったまま。原料には大麦麦芽やトウモロコシを使いますが、育った土地や環境によってそれ自体も味わいが異なるんです。そのバラつきを職人たちがうまく調整しています。こういった苦労はカフェならではじゃないかと思いますね。
高 橋 相当な手間がかかっているんですね。

佐久間 人がちゃんと見てあげないと安定しないのがカフェの面倒なところです(笑)。出てくるアルコールを見て、人間の手でバルブを調整してあげないといけない。そういうところは手間がかかります。
高 橋 実際には機械がつくっているのですが、手づくり感がありますよね。
佐久間 表現はちょっと違うかもしれませが、電子レンジでチンするのと、ガスコンロでコトコト煮るくらいの差があると思っています(笑)。
高 橋 だからこんなに贅沢な味わいのジンができるんですね。当店で取り扱いを始めてから約1年間経ちますが、カフェスピリッツの底力というか、凄いものをニッカはつくっているんだなってひしひしと感じます。ますますファンになりました。本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
佐久間 私の方こそ、まさにカフェジンのイメージにぴったりのおいしいジントニックをいただき、ありがとうございました。

※編集の都合上、本文はすべて敬称略としています。




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