BAR TIMES

2017.09.11 Mon

BAR TIMES 編集企画 ジントニックスタイル Vol.5「ジントニックに正解はない」。
真逆の発想が生んだ2つのシグネチャー

保志 綾 × タンカレーナンバーテン

ジントニックスタイル
ジントニックは店の顔。シンプルなレシピなだけに使用する素材、つくり方などバーテンダーの思いが反映され、その店の味わいの傾向が分かるという。バーテンダーはその1杯にこだわり、悩み、自分の味わいを模索する。ジントニックは理想とする形を永遠に追い求められるカクテルのひとつなのではないだろうか。トップバーテンダーたちががつくるジントニック、そのスタイルを紹介する。
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プロフィール


保志 綾(ほし・あや)

大学時代にアルバイトでバーテンダーを経験。卒業後は一般企業へ就職する予定も、来店客から掛けられた「ありがとう」の感謝の言葉に感激し、本格的にバーテンダーの道を志す。様々なバーで経験を積み、2017年3月、東京・西麻布にオープンした「Bar Dealan-Dé」でヘッドバーテンダーを務める。向上心と明るく朗らかなキャラクターからすでに多くの常連客で賑わう人気店に。




ジントニックはジンの個性が顕著に表れるごまかしの効かないカクテルだ。だから心底惚れ込んだジンに出会った時、そのバーテンダーはどんなジントニックをつくるのだろうか。タンカレーナンバーテンを愛してやまないバーテンダーのひとり保志綾氏(Bar Dealan-Dé/東京・西麻布)は、真逆の発想から生み出した2種類のジントニックを店で提供している。そのどちらを選ぶかは客次第だ。「ジントニックに正解はない。お客様が飲みたいジントニックが正解だと思う」と語る保志氏のジントニックスタイルとはいかなるものか、話を聞いた。


「タンカレーナンバーテンの完璧なバランスを崩さない」
辿り着いた答えは、“何も足さない”こと。


シンプルなつくりのジントニックは数多くあるが、保志氏はライムさえも使わない。その理由はこうだ。
「今の店が今春オープンしたことと、最近のクラフトジン人気の高まりもあって、あらためてタンカレーナンバーテンをじっくり味わってみました。そうしたら何も足さなくていいんじゃないかって思えたんです。タンカレーナンバーテンの持っているシトラス香が十分ライムの代わりを果たしているし、もはや何も足したくないと感じました。これほどボタニカルとシトラスのバランスが完璧なジンはないですね。このバランスを崩さないためには、ジンにトニックウォーターを加えて、最後にソーダをほんの少し。トニックだけだと甘味が強く飲み飽きてしまいますから少量のソーダを入れますが、それだけですね。それともう一つこだわっているのはジンを常温で使うこと。タンカレーナンバーテンは香りがとても良いジンなので、冷凍してしまうとせっかくの香りが閉じてしまいます。ひと口目で味と香りをダイレクトに感じる、まるでタンカレーナンバーテンをそのまま味わっているかのようなジンントニックに仕上げています」。

氷の入ったグラスの中でタンカレーナンバーテンを約40回転ステア。常温の状態から冷やし香りを立たせるのだという。ライムは入っていないが、炭酸の泡とともにタンカレーナンバーテンの持つシトラスの香りが弾ける。

ボタニカルでジンの風味を引き立てる
スペインで出会ったコパグラス ジントニック。


今年の春、保志氏はスペイン・バルセロナで新しいスタイルのジントニックに出会った。それは“コパグラス”という大ぶりのワイングラスのような形状をしたグラスで提供されるジントニックだったという。
「スペインでは今、空前のジントニックブームというか、どのバーへ行っても地元の人達が食前、食中、食後と気軽に楽しんでいる光景を目にします。ジントニックのメニューだけでも様々なジンの銘柄がズラリと並んでいて、どのジンで味わうかお客さん自身も選ぶ楽しさもあります。しかもどのバーでもジントニックはコパグラスで出てきますし、少しハイエンドなバーになるとボタニカル、特にハイビスカスの花が入ったジントニックを多く見ました。ボタニカルでもっとジンの風味を引き立たせるという考え方なのですが、これがまたおいしいんです(笑)。刺激を受けましたね、こういう自由なつくり方もあるんだなって。それでどうしてもこのスタイルを私のシグネチャーにしたくて、少しアレンジを加えた形でお店で提供しています。ボタニカルは、ジュニパーベリー、カルダモン、ハイビスカスの花、レッドペッパーの4種類。ひと口飲むと香りが鼻孔から抜けていく、そんなボタニカルが際立った一杯です。何も足さずバランスを重視したジントニックとは正反対ですが、ボタニカルを加えることでタンカレーナンバーテンをドレスアップさせ、新たな魅力を引き出したジントニックだと思っています。味わいだけではなく、ハイビスカスの花によってジントニックが徐々にピンク色に染まっていく様子は見た目にも美しいですよ。おかげさまで今ではすっかり店の看板カクテルとして定着しました。お客様のその日の気分によって2つのジントニックを楽しんでいただけることが嬉しいですね」。

コパグラスで提供されるボタニカルが入ったジントニック。ライムとレモンのシトラスも加えられる。スペインで購入したというジントニック用のボタニカル。


「スタンダードも自由なスタイルも受け入れてくれる、
クラフトジンの先駆けならではの懐の深さがある。」


ここ最近、世界はもとより日本でもクラフトジンへの注目が高まっている。タンカレーナンバーテンは、1960年代に誕生した「タイニーテン」と呼ばれる手づくりの小型蒸溜器を使用し、マスターディスティラーの手で少量ずつ丹念につくられる。いわばクラフトジンの先駆けともいえる存在だ。
「いろいろなジンを飲みましたが、最後はやはりタンカレーナンバーテンに行き着くんです。本当に好きなんでしょうね。今日、最初におつくりしたジントニックで『タンカレーナンバーテンの持っているシトラス香がライムの代わりを果たす』とお話しましたが、それは製法に大きく関わっていると思います。タンカレーナンバーテンは香り付けに使うオレンジやライム、グレープフルーツに生の果実を使います。これは世界的にも稀なことなんです。香り高いジンですからそれなりの量を入れていると思いがちですが、例えばオレンジにいたってはたった1個しか使用しないそうです。いくら容量400Lの小型蒸溜器だといっても微調整のレベルにしか過ぎないと思ってしまいますが、たったそれだけでも違いが出るそうなんです。その微妙なさじ加減を職人が見極め、一つひとつ完璧なバランスに仕上げていく。私はタンカレーナンバーテンはクラフトジンの先駆けだと思っています。だからこそスタンダードはもちろんどんなスタイルのジントニックも挑戦させてくれるし、受け入れてくれます。懐の深いジンですね」。

「ジンの中ではもっともタンカレーナンバーテンが好き。だから2つのジントニックがお店のシグネチャーとして定着していることは本当に嬉しいことです」と話す保志氏。



スタンダード ジントニック RECIPE
◎タンカレーナンバーテン:45ml
◎トニックウォーター:適量
◎タンサン:適量


コパグラス ジントニック RECIPE
◎タンカレーナンバーテン:75ml
◎トニックウォーター:適量
◎タンサン:適量
◎ボタニカル(ジュニパーベリー/カルダモン/ハイビスカスの花/レッドペッパー):適量
◎ライム:1/8カット
◎レモン:1/8カット



取材撮影/ BAR TIMES 撮影場所/Bar Dealan-Dé 取材協力 / キリン・ディアジオ株式会社

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