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NEW2025.10.24 Fri

ヘネシー グローバル カクテル コンペティション『#HennessyMyWay2025』
ジャパンファイナル 優勝者インタビュー
伝わりやすいコンセプトを練り込み、
温かみのあるカクテルに。
世界大会という貴重な場を愉しみたい。

阪田遥菜さん(サンクチュアリコート琵琶湖 / 滋賀)

2025年8月に開催された、コニャックブランド「ヘネシー」のカクテルコンペティション『#HennessyMyWay(ヘネシーマイウェイ)』。約100名の応募者の中を勝ち抜き、日本チャンピオンに輝いた阪田遥菜さんに会いに、滋賀県は琵琶湖へと向かった。
カクテルに込めた想い、世界で初めて”extra old”の名が与えられた伝説的なコニャック「ヘネシー X.O」の魅力の引き出し方、そして日本代表として世界大会に挑む意気込みを訊いた。

「先輩たちに負けたくない」とプレッシャーをはねのけた
『#HennessyMyWay 2025』ジャパンファイナルで優勝した阪田遥菜(はるな)さん。

日本チャンピオン・阪田遥菜さんに会うべく、JR「安曇川駅」を降り立ち、シャトルバスで「サンクチュアリコート琵琶湖」へ向かう。田んぼが連なるのどかな風景の中を、琵琶湖へ向かって進んでいくと、宮殿のような門構えのホテルに到着。そのままバスは、広大な敷地を進んでいき、まるで琵琶湖と一体になるようなロケーションの豪奢な建物へと到着した。
ここ「サンクチュアリコート琵琶湖」は会員制のリゾートホテルで、阪田さんのいるバーもまた会員のみが利用できる場所になっている。

大会時のきりりとした装いとはまた違う、柔らかな印象のユニフォームをまとった阪田さんが出迎えてくれる。阪田さんが本格的にバーテンダーのキャリアをスタートさせたのは、2023年4月のこと。バーテンダー歴2年ほどで優勝を勝ち取ったことは、まさに快挙である。

「同じホテルグループの方々がたくさん応募していて、私も負けていられないと思って応募しました。小さな頃からやっていた極真空手の大会でも、部活の試合でも、前夜に寝られないことなんてなかったのに、吐き気がするくらいプレッシャーを感じていましたね(笑)。ただもう先輩方に負けたくないという気持ちで自分を奮い立たせていました」

コンペティションに向けてもっとも時間と労力をかけたのは、コンセプトづくりとそのコンセプトをわかりやすく伝えるプレゼンテーションの練習だった。日常業務の前後に時間を設け、思案と練習を重ねた。同じホテルグループのバーテンダーがやってくる機会が多く、アドバイスをもらえたことも大きな助けになった。

「ここまで一つのお酒を深堀りして、どっぷり向き合ったのは初めてかもしれません。何を訊かれても答えられるくらい勉強をしましたし、コンペティションのテーマの一つ、サスティナビリティへの意識や取り組みが大会後の実務のカクテルづくりにもつながっています」
優勝カクテルは、家族や仲間と愉しむために生まれた
「ヘネシー X.O」の魅力を最大限に表現
阪田さん考案のカクテル “環~Meguru~”。紅茶、スパイス、梅酒、いちじくの実や葉など「ヘネシーX.O」と相性のいい素材をストーリーにのせて組み合わせ、あたたかみのあるおいしさを生む。

ジャパンファイナルで使われた「ヘネシー X.O」の起源は、ヘネシー家が家族や親しい仲間のために秘蔵の年代物のオー・ド・ヴィー(原酒)を特別にブレンドしたことにある。約100種類のオー・ド・ヴィーがブレンドされ、リッチでパワフル、かつ極めて滑らかなスタイルが特徴だ。

「『ヘネシー X.O』のコンセプトを原点に、カクテルのコンセプトも集約させていきました。誰が聞いてもわかりやすいものにしようと意識し、家族や仲間というキーワードをはめ込み、人との巡りや素材の巡りを意味する『環(めぐる)』にたどり着きました。味わいの面でもっとも大事にしたのは、『ヘネシー X.O』がもつ温かみのある味わいを表現すること。私の地元・和歌山産の素材を取り入れています。規格外のいちじくを用い、熟成感を軸に、山椒の爽やかさ、柑橘・じゃばらや梅酒の酸味などでバランスを取っていきました。役目を終えた葉までも余すことなく使って、素材の命を何度も巡らせる。『ヘネシー X.O』の深く複雑な味わいが、素材と重なり合います」

『 “環~Meguru~”』
〈材料〉
・Hennessy X.O…40ml
・和歌山ティー(自家製)…20ml(※1)
・環~Meguru~
 コーディアル(自家製)…10ml(※2)
・環~Meguru~
 ミスト(自家製)…1spray(※3)
・ガーニッシュ:
 規格外いちじくのキャラメリゼ
 いちじくの葉
〈つくり方〉
①ミキシンググラスに、Hennessy X.O、和歌山ティー、環~Meguru~コーディアル(自家製)、氷を入れてステアする。
②氷を入れたグラスに1を注ぎ、環~Meguru~ミスト(自家製)を振りかける。キャラメリゼしたいちじくを添える。

(※1)いちじくの葉とAOKI FARM「山椒とじゃばらが香る 和歌山スパイスティー・アールグレイ」をブレンドし、水出しで抽出。
(※2)母手製の梅酒、規格外のいちじく、三温糖、シナモンスティックなどを水と合わせて煮詰める。
(※3)和歌山ティーの抽出に使った茶葉を蒸留し、香りのスプレーに活用
「“環~Meguru~”」のカクテルメイキング動画はこちら
優勝後、お客様のあたたかさに触れて「つねに挑戦者の気持ちでいたい」と決意

ジャパンファイナル優勝後、阪田さんはお客様からの多くのあたたかい祝いの言葉に包まれたという。

「私たちのホテルが会員制ということもあり、何度も通ってくださるお客様が多いのが特徴です。『あなたに会うためにまた来た』と足を運んでくださる方も沢山います。私がバーテンダーを目指し始めた頃から、成長を見守ってくれている方達が優勝を知って、自分のホテルや同系列のホテルのイベントにわざわざ駆けつけてくださったり。 そういった方々に優勝報告ができたことが、とても嬉しかったですね」

2025年10月30日、31日にかけて催されるフランスでの世界大会では、18カ国の優勝者が競い合う。

「日本のバーテンダーらしさ、女性ならではのおもてなしを表現したいと思っています。おしぼりを出す、ボトルを拭くといったバーテンディングはとても日本的です。女性らしいしなやかな動きも意識したいですね」

さぞ緊張が高まっているのでは、と察するが、阪田さんからはこんな意志が訊かれた。

「一生のうちでも貴重な経験なので、何よりも世界大会自体を愉しんで取り組めたら、と思っています。他の国の方との交流もしっかりして、この先にもつながっていく関係を構築できたらと思っています」

阪田さんがそんな想いに振り切れたのは、あるお客様の言葉の影響だという。「恥かいてくればいいんだよ。フランスで恥かけるなんて誰でもできることじゃないんだから。おばあちゃんになっても自慢できるよ」。そんな言葉に大きく励まされた。

この先、バーテンダーの道を歩んでいく阪田さんにはこんな目標がある。

「優勝後、同じホテルグループでのゲストバーテンダーをやらせていただく機会が増えました。今後はリゾートホテルだけに限らず、いろんなスタイルで活躍されているバーテンダーの方々と交流していきたいですね。この先、どんなバーテンダーになれるかは本当に自分次第だと思ってるので、常に挑戦者の気持ちで何事も貪欲にやっていきたいです」

阪田遥菜(さかた はるな)
1999年生まれ、和歌山県出身。5歳から15歳まで極真空手の道場に通う。大学時代に海外留学をしたり、飲食店でアルバイトをしたりした経験から、多くの人と接することができるホテル業界に興味を持つ。大学卒業後、2022年にリゾートトラスト株式会社へ入社。「お客様と一番近い距離で働きたい」との理由でバーテンダーを志し、日本ホテルバーメンズ協会(HBA)認定資格を取得後、2023年4月よりバーテンダーとしてのキャリアを本格的にスタートさせる。現在は、2024年開業の会員制リゾートホテル「サンクチュアリコート琵琶湖」にてバーラウンジを担当する。


インタビュー・文 沼 由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『EST! カクテルブック』『読本 本格焼酎。』『江戸呑み 江戸の“つまみ”と晩酌のお楽しみ』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。

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