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ウッドフォードリザーブ蒸溜所ツアーレポート『ウッドフォードリザーブ』マスターディスティラー エリザベス・マッコール氏がいざなう、五感を刺激する蒸溜所ツアー

BAR TIMES REPORT

『ウッドフォードリザーブ』は、競馬の最高峰のレースの1つ、ケンタッキーダービーのオフィシャルバーボンとしても知られている。エレガントでスムースなフレーバーは、ケンタッキーダービーのオフィシャルドリンクであるミントジュレップに最適なのだ。カクテルメイキングのイマジネーションを湧きたててくれる『ウッドフォードリザーブ』は、ミクソロジストに愛され、アメリカでのプレミアムバーボンブームを牽引してきた。現在では、アジア数カ国でカクテルコンペティションを開催している。2025年夏、カクテルコンペティションの各国の優勝者と共にウッドフォードリザーブ蒸溜所を訪れると、マスターディスティラーを務めるエリザベス・マッコール氏が出迎えてくれた。

ウッドフォードリザーブに息づくケンタッキーの象徴

ルイヴィルの目抜き通りにある、ブラウンフォーマン社が保有する『オールドフォレスター』のビジターセンター。小規模の蒸溜所にもなっていて、製造工程を見学できる(左)。ストリートには随所に馬をモチーフにしたアート作品が(右)。

アメリカ中東部に位置する、バーボンウイスキーの本場・ケンタッキー州。 面積は北海道の約1.25倍で、南はテネシー州と隣接している。州内で人口の最も多い都市であるルイヴィルは、北はオハイオ川を挟んでインディアナ州と隣接しており、19世紀から水運で栄えてきた。市街地にはビクトリア様式建築が建ち並び、歴史を感じさせる。目抜き通りには、約3kmの距離に6つのバーボンウイスキーの蒸溜所やビジターセンターが密集。ルイヴィルを拠点に、バーボンウイスキーの蒸溜所を巡る”ケンタッキー バーボン トレイル”を楽しむ全米からの観光客も多いという。ストリートには馬をモチーフにしたアートも飾られ、バーボンウイスキーと馬の都市であることがうかがえる。

ウッドフォードリザーブ蒸溜所がある、ウッドフォード郡の牧草地帯。

ルイヴィルから東に、車に揺られること約1時間。ウッドフォード郡に入ると広大な牧草地が広がり、馬がのびのびと過ごしている姿に心が癒される。ケンタッキー州は“ブルーグラス(牧草)の州”の愛称をもつ。その名の通り、州の北部から中央部にかけては豊かな牧草に覆われ、競走馬の産地としても栄えてきた。石灰岩を潜り抜けたライムストーンウォーターはミネラルやカルシウムが豊富で、ウイスキーの仕込み水としてだけでなく、豊かな牧草も育むのだ。馬にとっては、最高のご馳走だろう。競走馬の牧場だけでなく、カジュアルに乗馬を楽しめる施設も点在している。

ウッドフォードリザーブ蒸溜所の入口。彩り鮮やかな花々に、気持ちも華やぐ。蒸溜所の敷地内も手入れが行き届いており、花が咲きほこっていた。

緑豊かな景観になじむビジターセンター。ここでも、馬のアート作品が目をひく。

ウッドフォードリザーブ蒸溜所に着くと、エントランスは『ウッドフォードリザーブ』のエレガントで華やかなフレーバーを体現したかのような花々で彩られていた。随所に、馬をモチーフとしたアート作品が飾られており、『ウッドフォードリザーブ』は、バーボンウイスキーと馬という、ケンタッキー州を体現したブランドであることが感じられる。

波乱の歴史を歩んだ蒸溜所。2023年には女性マスターディスティラーが誕生

アメリカ合衆国の国指定歴史建造物に登録されている、1840年前後に建てられた石造りの建物。発酵と蒸溜、樽詰めが行われている。

ウッドフォードリザーブ蒸溜所は、1812年に創業した蒸溜所をルーツに持つ。幾度かのオーナーチェンジや、禁酒法、戦争の影響で蒸溜停止に追い込まれるなど、アメリカの歴史に翻弄されてきた。1994年にブラウンフォーマン社が買い戻し、再建に着手。バーボン業界が低迷してた時代で、メジャーな蒸溜所や政府関係者も湧きたったという。そして、2003年にウッドフォードリザーブ蒸溜所の名称に。現存する蒸溜所としてはケンタッキー州最古ともいわれており、アメリカ合衆国の国指定歴史建造物に登録されている。約180年の時を刻んだ石灰石でできた建物と、エネルギッシュな芝生のコントラストが印象的だった。

ウッドフォードリザーブ蒸溜所のマスターディスティラー、エリザベス・マッコール氏。

蒸溜所を案内してくれたのは、2023年2月からウッドフォードリザーブ蒸溜所のマスターディスティラーを務めるエリザベス・マッコール氏。エリザベス氏は、ルイビル大学で修士号を取得しており、2009 年にブラウン・フォーマンの研究部門のメンバーとしてキャリアをスタート。前マスターディスティラーであるクリス・モリス氏にテイスティング能力を見出され、2018年にアシスタントマスターディスティラーに就任。認定スピリッツスペシャリスト(CSS)の資格も保有している。

鉄分を含まないライムストーンウォーターの恵みと5〜7日間に及ぶ発酵が生む奥深い味わい

イトスギ製の発酵槽は8つ。直径2mほどで、容量は1つ28,000L。

発酵7日目の発酵液をテイスティングするMixology Heritage(東京都)の山田采弥氏。『ウッドフォードリザーブ』が主催するカクテルコンペティション『A SPECTACULAR DISCOVERY 2nd JAPAN FINAL』の優勝者だ。

石灰石でできた建物は2階建てになっており、2階分を占拠する形でイトスギのファーメンター(発酵槽)が8つ並んでいた。ステンレスのファーメンターが一般的になった現在でも、昔ながらの木製のファーメンターにこだわり、奥深いフレーバーを追求している。

『ウッドフォードリザーブ』のマッシュビルは、コーン72%、ライ麦18%、大麦麦芽10%と、ライ麦の比率が高め。これにより、スパイシーな風味がもたらされるという。仕込み水には、蒸溜所周辺から湧き出る、ライムストーンで濾過されたミネラルやカルシウムが豊富で鉄分を一切含まないライムストーンウォーターを用いている。

一般的なバーボンウイスキーは発酵は3~6日間でおえるが、『ウッドフォードリザーブ』では5~7日間かけており、効率よりも品質を重視している。発酵槽内の発酵液は、それぞれ時間経過が異なっており、プクプクと泡立っている槽と、泡立ちが落ち着きエステリーな香りを漂わせている槽があった。7日目の発酵液をテイスティングさせてもらうと、はっきりとした酸味とエステリーな香りが感じられた。

銅との接触が香味を磨くバルジ型ポットスチル

スコットランドのフォーサイス社製の銅製のポットスチル。3基が1セットで、2022年に左側の3基が増設された。 バルジ型のポットスチルは、ネックも2m以上と長く、ポットスチルの半分以上を占める(左)。樽詰め前のハイワイン。バーボンウイスキーは、ハイワインを加水して、アルコール度数125プルーフ(62.5%)以下で樽詰めすることが義務づけられている。ウッドフォードリザーブ蒸溜所は110プルーフ(55%)にするのがこだわりだ(右)。

隣の蒸溜工程に移動すると、サウナのような暑さ。ウッドフォードリザーブ蒸溜所は、バーボンウイスキーには珍しく、銅製のポットスチルで3回の蒸溜を行っている。ポットスチルはバルジ型といって、本体とネックの間にボールのような膨らみがあり、もろみを加熱して発生した蒸気と銅が接触する面積が多い設計。それにより、華やかなフレーバーが生成され、硫黄臭は削ぎ落ちるという。ネックも長い設計なので、重い蒸気は上がって来れず、スムースでエレガントな酒質になるのだ。蒸溜したてのハイワインからは、フローラルな香りがし、花の蕾が思い浮かんだ。

ハイワインが詰められた樽は、Barrel Run(レール)をつたって自重で熟成庫へ移動していく。

トーストとチャーが形づくるウッドフォードリザーブの個性

石灰石を積み上げた熟成庫Cは、1890~1892年頃に建築。荘厳な雰囲気を醸し出していた。 エリザベス氏と談話する山田氏と各国の優勝者たち。今回のツアーには、シンガポール、タイ、マレーシア、韓国、中国、そして日本から『ウッドフォードリザーブ』のカクテルコンペティションの優勝者が参加した(左)。鏡板が赤色の樽は、ケンタッキーダービーが開催されるチャーチルダウンズ競馬場で天日干しにしていた樽。その下の空いているスペースは、『マスターズ・コレクション』のための特別な場所だ(右)。

石灰石を積み上げた熟成庫に入ると、30度を超える外気とは一転、ひんやりと涼しいことに驚かされる。棚はオープンリック式といって木製でできており、3段の棚が4層積みあがり、ウイスキーの心地よい香りが漂っていた。冬は氷点下を下回ることもあるほど冷えるので、熟成庫内をスチームで一時的に温め、自然と冷やすことで、寒暖差を作りだし熟成を促進している。エリザベス氏は、熟成によりハイワインに色やフレーバーがつく様子を、紅茶のティーバッグを熱湯に浸す行為に例えて説明してくれた。

樽は、一度、置かれたらローテーションはせず、5~7年ほど熟成される。これにより、熟成庫の場所による熟成の違いを把握しており、マスターズコレクションを熟成するのに適した場所、というのが決まっているのだ。

フレーバーの80%は樽由来だとエリザベス氏。まず、アメリカンオークの幹を9か月間、屋外で様々な天候にさらす。そうすることによって、タンニンが和らぎ、アメリカンオークのフレーバーが抽出しやすくなるという。新樽の内側にトースト処理(弱火で加熱)を10分間施し、その上で、チャー(強火で焦がす)を25秒行う。木材をトーストしてアメリカンオークの甘みを引き出すのが『ウッドフォードリザーブ』のこだわりで、パンをトーストして穀物の甘みを引き出すのと似ているという。

ウッドフォードリザーブ蒸溜所では、コニャックやシェリー、ピノノワール、シャルドネなど様々な酒類を熟成していた樽でのフィニッシュを試みているが、フレーバーを追加するのではなく、既にあるフレーバーを強調するためにバレルフィニッシュを意識しているそうだ。

ツアーで再発見する200種のフレーバー。日本再登場が待たれる『ダブルオークド』

アメリカで“コアファミリー”として展開されている、『ウッドフォードリザーブ』『ウッドフォードリザーブ ダブルオークド』『ウッドフォードリザーブ ウィート』『ウッドフォードリザーブ ライ』『ウッドフォードリザーブ モルト』の5種類をテイスティングした。

テイスティングは、手入れされたガーデンを眺めながら、フードペアリングで味わった。「スワリングした直後はアルコールがたつので、落ち着かせてからテイスティングするのがおすすめです」とエリザベス氏。まずは、『ウッドフォードリザーブ』からテイスティング。1996年にリリースされてから愛され続けている、ウッドフォードリザーブ蒸溜所のフラッグシップだ。「チェリー、ほんのりとバナナ、胡椒のようなスパイス感、タバコ、ダークフルーツ…」とフレーバーをひろっていくエリザベス氏。「パルメザンチーズのチップスは油分と塩分があり、アルコールを柔らかくしてくれます。ペアリングで味わうと、『ウッドフォードリザーブ』からココナッツとパイナップルのフレーバーが出てきませんか?」というエリザベス氏に、優勝者たちも頷きながらペアリングを味わった。

次に、日本では、2025年の11月に再び販売される『ウッドフォードリザーブ ダブルオークド』を。デザートのように味わえるバーボンウイスキーをコンセプトに開発された製品だ。マッシュビルは『ウッドフォードリザーブ』と同じで、熟成工程にこだわっている。最初に、チャーを施した樽で熟成し、その後、30分間トーストした後に、軽くチャーを施した樽で12ヶ月間後熟を行う。「バタースコッチのようなフレーバーが感じられると思います」とエリザベス氏。既に展開が始まっている韓国では、甘いだけではなく重厚感のあるフレーバーから、特別なひとときを彩るウイスキーとして存在感を発揮しているそうだ。

『ウッドフォードリザーブ』も『ウッドフォードリザーブ ダブルオークド』も、コラムスチルで蒸溜した原酒とポットスチルで蒸溜した原酒をブレンドしている。ポットスチルで蒸溜した原酒は風味豊かで、個性の異なるコラムスチルで蒸溜した原酒とブレンドすることにより、『ウッドフォードリザーブ』ならではのエレガントで華やかなフレーバーが生まれるという。

「バナナのフレーバーを感じたら、それが、フレッシュなバナナなのか、熟成したバナナなのかまで深掘りすると、さらに『ウッドフォードリザーブ』を愉しんでいただけると思います」とエリザベス氏。各製造工程で味や香りを体感し、『ウッドフォードリザーブ』にある200種類以上のフレーバーを再発見したカクテルコンペティションの優勝者たち。『ウッドフォードリザーブ ダブルオークド』が、日本で再び飲める日が待ち遠しい。

ウッドフォードリザーブ 商品情報

ウッドフォードリザーブ

1812年、国指定歴史建造物であるウッドフォードリザーブ蒸溜所の敷地内で、上質なバーボンづくりの技術が初めて行われました。ケンタッキー・ストレート・バーボン・ウイスキーの完璧にバランスのとれた味わいは、力強い穀物や木の香り、甘いアロマ、スパイス、フルーツや花の香りなど、200以上の感知可能なフレーバーノートで構成されています。

[テイスティングノート]

:リッチでハチミツのような色合いを持った光沢あるマホガニー色。

香り:エレガントでクリーミー。強いバニラ香に濃厚に熟したフルーツの寄せ集めが重なり合う。バタースコッチ、シナモン、微かなブラックペッパー。

味わい:口いっぱいに広がるスパイス、バニラ、キャラメル、フルーツフレーバー、微かなミント。

余韻:長く、極めて滑らか、爽やかで微かなスパイスとペッパー。

■容量:750ml ■アルコール度数:43%

ウッドフォードリザーブ ダブルオークド

熟成を終えたウッドフォードリザーブの原酒を、通常よりも樽の内側を3倍長く、ゆっくりトーストしたアメリカンホワイトオークの新樽に入れ、更に12ヶ月間熟成を行います。

[テイスティングノート]

:濃い琥珀色

香り:ダークフルーツ、キャラメル、ハニー、チョコレート、マジパン、トーストしたオークのリッチな香り。

味わい:バニラ、ダークキャラメル、ヘーゼルナッツ、リンゴ、フルーツ、スパイスのフルボディのミックス。

余韻:長くクリーミーで、リンゴのハチミツのような香り。

■容量:750ml ■アルコール度数:43% ※※2025年11月発売予定

ウッドフォードリザーブ初のイベントを12月に開催予定!

ここには12月に開催される3日間限定のイベント告知が入ります。ここには12月に開催される3日間限定のイベント告知が入ります。ここには12月に開催される3日間限定のイベント告知が入ります。ここには12月に開催される3日間限定のイベント告知が入ります。ここには12月に開催される3日間限定のイベント告知が入ります。ここには12月に開催される3日間限定のイベント告知が入ります。

■ ウッドフォードリザーブ インスタグラム/https://www.instagram.com/woodfordreserve


取材・文 馬越 ありさ

慶應義塾大学を卒業後、ラグジュアリーブランドに総合職として入社。『東京カレンダーWEB』にてライター・デビュー。エッセイスト&オーナーバーマンの島地勝彦氏に師事し、ウイスキーに魅了され、蒸留所の立ち上げに参画。ウイスキープロフェッショナルを保有し、酒類コンペティションの審査員も務める。公社)日本観光振興協会 日本酒蔵ツーリズム推進協議会 会員。

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