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2020.09.29 Tue

特集企画 カクテル・ルネッサンス第八回 「ネグローニ」

取材協力 Peterバー 鎌田真理(ザ・ペニンシュラ東京)

禁酒法時代にまで遡るアメリカのカクテル黄金期。その時代に生まれ、長く忘れ去られていたカクテルに、現代の素材と技術で新しい息吹を吹き込む「カクテル・ルネッサンス」。
[The World’s Best-Selling Classic Cocktails 2019]でベスト50に選ばれたクラシックカクテルの中から、毎回一つのカクテルに注目。ベーシックなレシピやつくり方だけでなく、BAR TIMES が今もっともおすすめしたい進化したクラシックカクテルをご紹介します。第八回目は[ネグローニ]。世界中で愛されるジンベースのクラシックカクテルです。今回は、ザ・ペニンシュラ東京「Peterバー」の鎌田真理さんにネグローニの魅力をうかがいました。


Drinks International
The World’s Best-Selling Classic Cocktails 2019


世界中のカクテルファンに愛される
伯爵の名を冠したクラシックカクテル

イタリア フィレンツェの老舗リストランテ「カソーニ」の常連客だったカミーロ・ネグローニ伯爵が、いつも食前酒として飲んでいるアメリカーノではなく、ソーダの代わりに少量のジンを入れるよう店のバーテンダーにオーダーしたことが始まりだと言われています。かくしてこのカクテルは美食家の伯爵にたいそう気に入られ、この伯爵の名を頂くようになったそう。

「The World’s Best-Selling Classic Cocktails」では、常にオールドファッションドに続く人気カクテルとして世界中のカクテルファンから愛されています。



タンカレー ロンドン ドライジンをベースにしたスタンダードな「ネグローニ」。タンカレー ロンドン ドライジンのきりっと辛口の味わいがベルモットの深い甘さやカンパリのほろ苦さを和らげる、全体的にバランスの良い味わい。


日本でのネグローニ人気の要因は何だとお考えですか。

「海外での流行が日本にも伝わってきたこともありますが、世界中でクラフトジンが流行り、その流れでジンベースのクラシックカクテルの中でも最もシンプルでおいしいカクテルの一つ、ネグローニが人気になったのではと考えています。四季(気温)を問わず楽しめ、リフレッシングで、甘味やコクもあります。それに苦みのあるカクテルというのが日本では新鮮だったのかもしれません。」

バーテンダーからするとネグローニの魅力は何でしょうか。

「最大の魅力は多様性にあると思います。例えば、バーボンをベースにしたBoulevadierやスイートベルモットをドライベルモットに代えたNegroni Bianco、テキーラベースのTegroni、 エスプレッソコーヒーを加えたCoffee Negroni など、ベースやベルモットの種類、アルコール度数を変えても美味しく飲めるのが魅力です。」

鎌田さんにとって「ネグローニ」はどんなカクテルですか。

「個人的にコリアンダーやパセリ、茗荷、セロリ、春菊といった苦味のある食材が好みなので、スパイスを使用したジンをベースに、苦みフレーバーのカンパリを使用したネグローニはとても好きなんです。それと、10年ほど前、Mr.ネグローニと呼ばれたGaz Reganとフランスのコニャックで5日間過ごす機会がありました。彼のつくるフィンガーステアネグローニを皆で飲んだ楽しい記憶があって、私にとってネグローニは思い出のカクテルでもあります。」


鎌田 真理(かまた まり)
2007年、ザ・ペニンシュラ東京の開業時からPeterバーのシニアバーテンダーとして入社。2009年、ディアジオワールドクラス日本大会で優勝を果たし世界大会に挑戦。現在は同ホテルのビバレージマネージャーとして飲料部門を統括する。


タンカレーの特徴や魅力はどのような点ですか。

「タンカレー ロンドン ドライジンは、ジュニパー、コリアンダー、リコリス、アンジェリカの4つのボタニカルのみが使われていて、トラディショナルなロンドン ドライジンを体現しているブランドだと思います。4つのボタニカルの明確な味わいがパワフルでありながら、カクテル全体の味をバランスよく仕上げてくれる。特徴的な副材料と合わせていただいてもジンらしい風味を失うことなくベースを生かすことができます。とはいえ、副材料とのバランスには気を付ける必要があります。また、タンカレー ナンバーテンは、シトラスハートと言われる、フレッシュのライム、グレープフルーツ、オレンジをボタニカルに使用しているのが最大の特徴であり、それゆえのフレッシュフレーバーが魅力です。エレガントなスムースさの中に、フレッシュシトラスの風味が重なりあって、まるで一つのカクテルのようです。シトラス系・ハーブ系と絶妙にマッチし、心地よい優しさと甘味を感じるエレガントさがあります。その味わいや香りを更に広げるイメージで副材料と調合するのがおすすめです。」



タンカレー ナンバーテンをベースにした鎌田さんオリジナルの「Five Palates Negroni」」。フルーティーな甘み、ワインのフレーバー、シトラス、そして心地よい苦みが味わいの特徴。更にスモーキーフレーバー、塩味が加わることにより、より複雑に味わいの一体感を楽しむことができる。


オリジナル ネグローニの特徴を教えてください。

「タンカレー ナンバーテンの特徴をどう引き出すかを工夫いたしました。今回はシトラスの対称となるフレーバー要素(塩味)を加えて作成しました。ガニッシュをオレンジスライスにしたのは、シトラスハートにあるオレンジを意識しています。果汁を加えることによりタンカレー ナンバーテンの香りや味わいが大きく広がるからです。

正直、最初に相性の良さそうな材料を直感で選んだのですが、それがスモークソルトとメスカルでした。私はカクテルを作成する際に感覚で作成しているのですが、そのあとになぜこれが美味しいのかを考えます。そこで次の点に気が付いたのです。

五味のうち2つのパート(塩味、旨味)を加えて材料一つ一つが、相乗効果、対比効果、抑制効果をするようにしたのです。ここではスモークソルトと合わさったメスカルを旨味ということであてはめます。塩味はスモークソルト、甘味はベルモットとガニッシュのオレンジ、酸味はタンカレー ナンバーテンの柑橘フレーバーとガニッシュのオレンジ、苦みはカンパリです。

相乗効果は同じ味をもつものを混合したときに、相互に味を強め合う現象のことですが、ここではタンカレー ナンバーテンのフレッシュな柑橘のフレーバーとオレンジスライスの組み合わせ。そして、ベルモットの甘味とフレッシュオレンジフルーツの糖度の組み合わせが相乗効果となっています。対比効果は異なる味を混合したときに、一方または両方の味が強められる現象のことですが、スイカにお塩をかけて甘味を強調するイメージですね。ここでは、スモークソルトがベルモットの甘味を強調し、その甘味がタンカレー ナンバーテンの柑橘を強調する。甘(ベルモット、オレンジスライス)→酸(タンカレー ナンバーテン、オレンジスライス)→旨(メスカル)→苦(カンパリ)→塩(スモークソルト)→甘というように全ての材料がそれぞれの味を強調しています。

それと同時にそれぞれの材料が抑制効果もなしています。酸っぱいレモンに砂糖を加えて食べやすくするイメージですね。タンカレー ナンバーテンの柑橘フレーバーとオレンジスライスの酸をベルモットの甘味で和らげている。そして、ベルモットの甘味はスモークソルトの塩味で和らぐ。酸→甘→塩→苦→旨→酸というように全ての材料がそれぞれの味を和らげています。

この三つの効果がなして、Five Palates Negroniが完成いたしました。」


鎌田さんが考案した「Five Palates Negroni」の味わい効果グラフ。

Five Palates Negroni


[レシピ]
・タンカレー ナンバーテン/30ml
・カンパリ/30ml
・チンザノ1757ロッソ/30ml
・メスカルアハル/5ml
・スモークソルトウォータースプレー

[つくり方]
ロックグラスに氷を入れ、ビルド。オレンジスライスで仕上げる。


ネグローニ


[レシピ]
・タンカレー ロンドン ドライジン/30ml
・カンパリ/30ml
・チンザノロッソ/30ml

[つくり方]
ロックグラスに氷を入れ、ビルド。オレンジピールで仕上げる。



ザ・ペニンシュラ東京 / Peterバー
現在は月・火 休業、11:30 - 23:30(水ー土)、11:30 - 16:00(日、祝)で営業しております。
最新の営業時間につきましては、ウェブサイトをご確認ください。
https://www.peninsula.com/ja/tokyo/5-star-luxury-hotel-ginza


鎌田真理さん(ザ・ペニンシュラ東京)のタンカレー ナンバーテンのジントニックの記事もご覧ください。

   

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