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バーをこよなく愛すバーファンのための WEB マガジン

2019.10.17 Thu

「成田 一徹 to the BAR 」in BAR TIMES 第十回
EAU DE VIE〈東京〉

Office Ittetsu & BAR TIMES

バーを愛した切り絵作家の故・成田一徹さんの著作権を管理されている「Office Ittetsu」と荒川英二氏(バーUK)のご協力のもと、成田さんが遺された作品の一部を「成田 一徹 to the BAR 」 in BAR TIMES としてご紹介させていただけることになりました。成田さんが切り描いたバーという世界の魅力に触れてください。


第十回 EAU DE VIE〈東京〉2003年

上京後、長く居を構えたのは戦前の下町が残る谷中。自宅の近くにあった酒場は、一徹にとってまさに”ネイバーフッド・バー(ご近所バー)”だった。仕事に疲れた時やアイデアに悩んだときは、この店のカウンターで一息ついて頭を休めた。いつも穏やかな笑みで迎えてくれた新田申幸マスターとは生涯、契りを交わし、付き合い続けた。
(神戸新聞総合出版センター「NARITA ITTETSU to the BAR」より転載)


 ネオンのジャングルも連日となると、さすがに辟易する。そんなとき、ジャングルの中にではなく、大海原に浮かぶ孤島にたった一軒ひそやかに開いているようなバーを夢想する。
 たとえば下町の路地の奥にある、看板も上がっていないしもた屋風のバー。深夜、人気の途絶えたビジネス街のビルの底で、一軒だけ煌々と輝く「BAR」のネオン。
 谷中は大都会・東京の中の孤島である。有名な墓地が広がるとはいえ、山の手線の内側にあるとは信じられないほどの静けさを保ち、東京のエアポケットそのものだ。
 そんな谷中に、一軒のいいバーがある。
 深夜、寝静まった古い東京の町に「EAU DE VIE」の看板だけが明るく輝いている。
 二分も歩けば、谷中霊園の黒い海。店を出て、酔いに火照ったからだを墓地の霊気にさらせば、ご先祖様たちのつぶやきが幻聴のように聞こえてくる、かもしれない。
(朝日新聞社「TO THE BAR 日本のBAR 74選」より抜粋)



月刊「清流」より@上田佑勢

成田 一徹 (なりた いってつ)


1949年神戸生まれ。サラリーマン生活のかたわら切り絵に目覚め、88年に上京。切り絵作家として独立した。BARの空間をモチーフにしたモノクロームの切り絵をライフワークとしつつ、新聞、雑誌、書籍を中心に、街の風景や市井に暮らす人々、職人の仕事や生き様など多彩なテーマで作品を発表した。エッセイストとしても、軽妙で味わい深い文書にファンも多く、各地で個展、グループ展を多数開催した。講談社フェーマススクールズ・インストラクターも長くつとめた。2012年10月、脳出血で急逝。

著書に『to the Bar 日本のBAR 74選』 (朝日新聞社)『カウンターの中から』(クリエテ関西)『東京シルエット』(創森社)『The Cigger Story-葉巻をめぐる偉人伝-』 (集英社)『成田一徹の切り絵入門』 (誠文堂新光社)『あの店に会いに行く』(中央公論社)『神戸の残り香』 『新・神戸の残り香』(神戸新聞総合出版センター)『NARITA ITTETSU to the BAR』(神戸新聞総合出版センター)など多数。


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切り絵作家 成田一徹さんの作品がバーカウンターに蘇る「成田一徹 バーマット」詳しくはこちら


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