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バーをこよなく愛すバーファンのための WEB マガジン

2019.07.24 Wed

「成田 一徹 to the BAR 」in BAR TIMES 第七回
バランザック〈神戸〉

Office Ittetsu & BAR TIMES

バーを愛した切り絵作家の故・成田一徹さんの著作権を管理されている「Office Ittetsu」と荒川英二氏(バーUK)のご協力のもと、成田さんが遺された作品の一部を「成田 一徹 to the BAR 」 in BAR TIMES としてご紹介させていただけることになりました。成田さんが切り描いたバーという世界の魅力に触れてください。


第七回 バランザック〈神戸〉2004年 現在閉店

神戸・三宮の中山手通の1丁目には、一徹の行きつけのバーが集中する、一徹に言わせると「魔の三角地帯」がある。この酒場もそのエリアにあったが、一徹にとってはここは「バー・ホッピングの中休みの1軒」だった。マスターの太田茂さんは、東京にも支店を開業されるなど精力的な方だったが、残念ながら先般病のため他界。神戸の店は閉じられたが、東京・神楽坂に残る支店は現在も繁盛している。
(神戸新聞総合出版センター「NARITA ITTETSU to the BAR」より転載)


 「バランザック」のカウンターに座って天井を見上げている。バック・バーの上部から真上へ大きくアールをつけて、一面に竹を敷き詰めた独特の天井である。知る人ぞ知る名店「スライス・バー」の天井をイメージしたものだという。
 かつて、キャバレーやクラブがひしめく神戸・東門筋のド真ん中にあった「スライス・バー」は、そこだけが時代に取り残されたような空間だった。初めてスイングドアを押し開け、時に燻された見事な店内を見たときの感動を昨日のことのように想い出す。
 進駐軍の兵士がその上で踊り、お忍びの映画スターが頬杖をついたバーカウンター。紫煙にくすんだアメ色の壁。闇にほの浮かぶ竹の天井は、パパの揚国 勲さんの故国特有の造りだと聞いた。パパとママの佳き時代の昔語りが古い店内に響いていた。
 そのママは十八年前に亡くなり、パパも震災の前年他界した。
 深夜二時、客は途絶えた。カウンターの向こうには主の太田茂さん。
 酔眼でまだ竹の天井を見上げている。
(朝日新聞社「TO THE BAR 日本のBAR 74選」より抜粋)



月刊「清流」より@上田佑勢

成田 一徹 (なりた いってつ)


1949年神戸生まれ。サラリーマン生活のかたわら切り絵に目覚め、88年に上京。切り絵作家として独立した。BARの空間をモチーフにしたモノクロームの切り絵をライフワークとしつつ、新聞、雑誌、書籍を中心に、街の風景や市井に暮らす人々、職人の仕事や生き様など多彩なテーマで作品を発表した。エッセイストとしても、軽妙で味わい深い文書にファンも多く、各地で個展、グループ展を多数開催した。講談社フェーマススクールズ・インストラクターも長くつとめた。2012年10月、脳出血で急逝。

著書に『to the Bar 日本のBAR 74選』 (朝日新聞社)『カウンターの中から』(クリエテ関西)『東京シルエット』(創森社)『The Cigger Story-葉巻をめぐる偉人伝-』 (集英社)『成田一徹の切り絵入門』 (誠文堂新光社)『あの店に会いに行く』(中央公論社)『神戸の残り香』 『新・神戸の残り香』(神戸新聞総合出版センター)『NARITA ITTETSU to the BAR』(神戸新聞総合出版センター)など多数。


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切り絵作家 成田一徹さんの作品がバーカウンターに蘇る「成田一徹 バーマット」詳しくはこちら

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