「ウイスキーと2人の花嫁」特別試写会ウイスキー評論家・土屋守さん
特別トークショー

ウイスキー好きも映画好きも楽しめ、大人のユーモアたっぷりの映画『ウイスキーと2人の花嫁』。2018年2月17日の公開に先駆けて、渋谷ユーロライブにてバーテンダーの方々を対象にウイスキー試飲付きのスペシャル試写イベントが行われました。会場にいる皆さんでDewar’s12年のハイボールを嗜みながら、ウイスキー評論家・土屋守さんによる軽快なトークショーが繰り広げられました。

■土屋 守（つちや まもる）
1954 年生まれ。日本のウイスキー評論家、作家。日本初のウイスキー専門誌『The Whisky World』 （2005 年 3 月-2016 年 12 月）、『ウイスキー通信』（2001 年 3 月-2016 年 12 月）の編集長として活躍し、現在は『Whisky Galore』（ 2017 年 2 月創刊）の編集長を務める。 NHK 朝の連続テレビ小説「マッサン」ではウイスキー考証として監修を務めた。ウイスキー文化研究所代表。

土屋　『ウイスキー・ガロア（WHISKEY GALORE）』というこの映画の原題は、昨年度我々ウイスキー文化研究所が発行した専門誌の名前でもあります。私は1987年より5年ほどイギリスに滞在していたころにスコッチウイスキーと出会い、スコットランド全ての蒸留所を回るほど魅了され、95年から長く執筆活動を続けてきました。そして昨年、新たな専門誌を発行しようとなったとき、私は強く『ウイスキーガロア』という名前を推しました。まだ日本では認知度の低い言葉ではありますが、ウイスキーを愛する人間ならば皆いつかは出会う物語であるだろう、と思ったからです。

土屋　第二次世界大戦から1年半後の1941年2月5日に起きたSSポリティシャン号事件は、ウイスキーの他に歴史上一度も使われていないジャマイカ紙幣が積まれていたということもあり、史実的にも非常に意義のある事件なのですが、当時はウイスキーが配給制であったため、原作の小説は「ウイスキーがない未曾有の事態」というユーモアな文章で物語が始まります。そのくらい島の人々にとっては、ウイスキーがない日々はありえないものだったんですね。この映画の軸は頑固な父親と二人の娘の心温まるストーリーですが、「ウイスキーのない結婚式はありえない」という台詞が出てくるように、二人の娘とその恋人と、そして父親とを繋ぐものがウイスキーであり、これほどウイスキーを愛情深く丁寧に描いている作品はないだろうと思います。とにかく全編ウイスキーへの愛に溢れている。また、「ガロア」はゲール語（スコットランドの母語）で「いっぱいある」という意味の通り、劇中には女の人でもウイスキーをカパカパと飲むシーンが多くありまして、観ていてこれほどウイスキーを飲みたくなる映画もありません。ウイスキーを嗜む人間である限り、『ウイスキーガロア』という物語を知らない人はいないというほど避けては通れない物語です。ぜひ全国のウイスキー愛好家の方々に楽しんでいただければと思います。