BAR TIMES

2017.01.17 Tue

たまさぶろのBAR遊記ニューカレドニアBAR探訪2)
「二日ヴァ酔い」注意!
スパークリングではない
妖しい「カヴァ・バー」

たまさぶろ 元CNN 、BAR評論家、エッセイスト

愛飲家にとって「カヴァ」と言えば、スペインのベネディス地域を中心にシャンパーニュ式製法で作られるスパークリング・ワインと決まっている。ニューカレドニアでBAR巡りをするため、現地ガイドにお願いすると「カヴァ・バー」体験は必須…と熱烈に勧められる。ニューカレドニアはフランス領…「Cava…そうか、フランス領にも関わらず、シャンパンではなくスペインのスパークリングがお勧めとは、コレいかに…」と首をかしげていると、これが「カヴァ違い」と後に判明する。

ニューカレドニアにおいて「カヴァ」と言えば、南太平洋諸島原産のハーブの一種を指すそうだ。

つまり「Cava」ではなく「Kava」、別名「ヤンゴーナ(yangona)」。コショウ科の潅木で、学名はPiper methysticum。南太平洋の各島嶼(しょ)では古来、宗教的儀式の際に使用されることが多く、メラネシアからポリネシアにまたがる地域で用いられる向精神性薬物なんだそうだ。ヤンゴーナはハワイからニューギニアまで広く自生しているとかで、この植物の根を乾燥させ粉状にしたものを、水で揉み出し漉した液体が「カヴァ」。カヴァには鎮静効果があり、日本でも漢方薬の一種として徴用された時期があったという。


カウンターの向こう側 サーブされるのを待つ甕に入った「カヴァ」

このドロ水のような液体「カヴァ」を専門に飲ませる店を「カヴァ・バー」と呼ぶ。特にニューカレドニアでは他島嶼と異なり、宗教的、社会的儀式に使用されなかった背景もあり、嗜好品として常用されている。このカヴァ・バーではアルコールは販売されていないが、カヴァそのものにアルコールに似た、酩酊感をもたらす効果があり、飲むと口の中がしびれ、そのしびれが胃に下りてくる感覚を味わうこともあり、ニューカレドニアンの社交場として賑わう。

前回のレポートで知り合ったニューカレドニアンのロザルカさんも10日ばかりの夏休みの帰省中に「もう友達と三度は足を運んだよ」とのこと。現地ではかなりポピュラーな社交形態のひとつのようだ。カヴァ・バーは、一般的に「ナカマル」と呼ばれ、ニューカレドニアのヌベアだけで、100軒ほどがそろう。しかも、店によって味も異なるそうで「あそこのカヴァは純度が高い」と、なにやら怪しい会話も交わされるそうだ。


BARで知り合ったニューカレドニアンのロザルカさん

ロザルカさんのお勧めは、ヌメアの郊外ヌー島のヌヴィル(Nouville)まで足を延ばす「Nakamal Le Sunset」だった。だが、さすがに少々距離があるので断念。

Nakamal ’Le Sunset’
Rue Contre-Amiral Joseph du Bouzet,
Noumea,
Nouvelle-Caledonie

そうは言っても、BAR評論家を標榜しながら、BAR体験を見送るわけにも行かない。現地ガイドに依頼し、ガイドお勧めの一軒にさっそく足を運ぶことに。案内されたのは「Nakamal 21(ナカマル・ヴァンテアン)」。


こちらがカヴァ・バー「Nakamal 21(ナカマル・ヴァンテアン)」入口

ヌメアのちょっとした外縁に足を運んだその場には、すでに怪しい雰囲気が漂っていた。通りには「ナカマル」が営業中であることを知らせる赤いランプがともっている。昔、派出所(現・交番)の軒先に設置されていた赤色灯のようにも見えるが、なぜか怪しい。そして、店の門構えも、敷居をまたぐには少々勇気がいる。店はちょっとした一軒家の庭を解放したようなカジュアルな感じで、テーブル席と呼ぶよりも、パテオのような場所が庭の中に点在している。足を踏み入れると、はしゃいで走る子供とすれ違う。そう、ナカマルは酒場ではない。子供がカヴァを飲むことはないが、その他はスナック菓子程度を提供しているだけなので、家族で訪れる人々も多いとか。

いよいよ、そのカヴァをふるまってくれるカウンターへと向かう。地下へと降りる面妖な階段を行くと、その先に雑多な売り物がならんだカウンターがあった。カウンターと呼ぶよりも、むしろ配給所と被配給者を隔てる板のような感じだ。ここでココナッツの殻を使ったお椀にカヴァをついでもらい、その場でほぼ一気飲み。そして、「パテオ」に戻り、その余韻を味わいながら家族、友人と談話する。あまりひとりで来る場所ではないらしい。

ここまでたどり着いておきながら躊躇する必要はない。100mlからオーダー可能とのことなので、まずはその一杯から。100パシフィックフランなので、一杯100円ぐらいの感覚。

注がれたその姿は、ドロ水とまではいかないが、糠のしぼり汁かのような感じで、あまり食欲(呑欲?)をそそらない。さっと写真を撮り、「えいや」と飲み乾す。少々、咳き込んでしまいそうな喉越しながら、なんとか飲み込む。むむむ、なんと言おうか…。龍角散など苦い漢方薬を水で溶いて呑んだ…と形容するのがもっとも相応しい。美味いのか…。いや、なんとも言えない。


地階のカウンターへと向かう階段

数人でパテオに陣取り、同行者と感想を交わす。中には「お、いい気分になって来た」と漏らす者もあるが、少々口の中がピリッとするだけで「酩酊」という感覚からはかなり遠い。現地在住三十年、ガイドの山田眞治さんによると「やはり、お酒をよく召し上がる方にとっては、効力が低いらしいです」とのこと。それでも酒同様、これを飲みすぎると、二日酔いならぬ「二日ヴァ酔い」になるので注意が必要だとか。

利きが弱いのか…ということで、もう一杯挑戦することに。「せっかくだから…」とわけの分からない理由で、二杯目は200ml。これも一気に飲み乾す。むむむ…。やはり、喉越しについての感想に変わりはない。


あまり美味そうには見えない「カヴァ」。これで100ml、100円程度

パテオで雑談していると、ちょっと「ボーっ」として来たかな…という気分になる。これが癖になり、強者ともなるとカウンターでペットボトルに量り売りしてもらい自宅で楽しむと言う。

なるほど、これはこれでかなりインパクトあるニューカレドニア体験。日本ではまずお目にかかることもなさそうで、かつリーズナブル。せっかくなので「二日ヴァ酔い」にならない程度に挑戦してみるのも、正しい海外体験のひとつかと考える。

では、みなさん、Cincin!

Nakamal 21
21 rue Felix Broche,
Noumea,
Nouvelle-Caledonie
Phone: +687-798074

 


 

たまさぶろ
元CNN 、BAR評論家、エッセイスト
立教大学文学部英米文学科卒。週刊誌、音楽雑誌編集者などを経て渡米。ニューヨーク大学にてジャーナリズム、創作を学ぶ。CNN本社にてChief Director of Sportsとして勤務。帰国後、毎日新聞とマイクロソフトの協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」をプロデュース。日本で初めて既存メディアとウェブメディアの融合を成功させる。これまでに訪れたバーは日本だけで1000軒超。2015年6月、女性バーテンダー讃歌・書籍『麗しきバーテンダーたち』上梓。米同時多発テロ事件以前のニューヨークを題材とした新作エッセイ『My Lost New York ~ BAR評論家がつづる九・一一前夜と現在』、好評発売中。
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