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NEW2025.08.10 Sun

後閑信吾さんが手がける香港のバー「GOKAN」が歓喜に沸いた
1st Anniversary

世界が注目するバーテンダーとして存在感を放つ後閑信吾さん。2024年夏、香港に後閑さんの名を冠したバー「GOKAN」を誕生させた。今年7月には1周年記念パーティーを開催。氷屋が軒を連ねていた通りに位置することから、「氷」をキーワードとするクールなバーながら、この夜ばかりは熱い、熱い ! 豪華なゲストシフトとこの夜だけのカクテル&フードにバーファンが熱狂。歓喜に沸いた様子をレポートする。

香港「GOKAN」は五感を刺激するバー

数々の栄誉ある賞を受賞してきたバーテンダー、後閑信吾さん。カクテルの構築だけでなく、その手腕はバーづくりにおいても遺憾なく発揮される。2025年7月に開催された世界最大のカクテルとスピリッツの祭典「Tales of the Cocktail(テイルズ・オブ・カクテル)」で、史上初の2冠達成をしたことは記憶に新しい。後閑さんが手がける2つのバーがインターナショナル部門と米国部門で同時受賞したのだ。
(「後閑信吾氏が、史上初のダブル受賞!」記事はこちら

彼の名を冠したバー、香港「GOKAN」もまた、コンセプトから空間づくり、カクテル一杯に込めるレシピ・名前・味、それらが織り成すメニュー構成はわくわくさせるギミックに溢れている。

かつて氷屋が軒を連ねていた「Ice House St.(氷屋通り)」に位置することから、氷をテーマに取り入れている。バーの建物自体も、氷の貯蔵施設として利用されていたものだ。倉庫を思わせるようなレンガを配したり、冷蔵庫の扉を開けて入る個室もある。レトロな風合いを取り入れた空間づくりがおもしろい。デザートにはかき氷を用意する。「マッカラン ペドロヒメネス」をかけて味わう贅沢な一品にも注目だ。

メニューを開くと「甘」「酸」「辛」「鹹(しおけ)」「苦」と「五味」に分類されたカクテルがならぶ。フードも充実していて、「五色」「五適」「五法」が取り入れられている。つまり、コンセプトは「五感」。店名は、ダブルミーニングになっているわけである。

ふたりのトップバーテンダーがカクテルをつくりまくる

開店1周年を祝うパーティーは、「Asia’s 50 Best Bars 2025」(マカオ)のセレモニーの翌日に催されたこともあり、香港のみならず世界各国からバー関係者やファンが訪れた。「GOKAN」は開店からわずか1年で33位にランクイン。その注目の高まりからも、開始前から店頭には長蛇の列ができ上っている。

Asia’s 50 Best Bars 2025 Official photo- Red Carpet ©JACK COOPER

ゲストシフトも豪華だ。ロングカウンタ―で後閑さんとともにカクテルを振る舞うのは、エリック・ヴァン・ビークさんである。エリックさんは「The World’s 50 Best Bars 2024」で1位に輝き、「North America’s 50 Best Bars」でも2年連続1位に輝いたメキシコ「Handshake Speakeasy」のバーディレクターだ。
頂上に輝くふたりのトップバーテンダーが並ぶ風景はなんとも贅沢……! この夜だけのカクテルが味わえるとなれば、それはバーファンが集い、テンションも上がるというものだ。

フードは、メキシコの伝統と日本の食材を掛け合わせて“タコス革命”を起こしたマルコ・ガルシアさんが来店。ウナギ、赤身・中トロなど魚介類を最適な調理法で仕立てるタコスが登場。
パーティーが終わる23時まで会場は盛り上がり続け、長蛇の列もまた途切れることがなかった。

写真提供 ©Sonia Cao

写真提供 ©GOKAN

「GOKAN」の先に思い描く新しい挑戦

実は、バーでは公に打ち出してはいないが、渋谷『The SG Club』や大手町『The SG Tevern』、沖縄『El Lequio』などと同様に、「GOKAN」にもまた深いストーリーを込めたと後閑さんは語る。
「渋谷『The SG Club』は、1860年に幕府が派遣した77人のサムライ達が遣米使節団としてアメリカに派遣されたストーリーから、歴史と事実とフィクションをかけ合わせてコンセプトをつくりました。それで、江戸とニューヨークが融合したスタイルの内装にしたり、使節団の辿った航路に因んだカクテルメニューを提供したりしています。『GOKAN』はその番外編。完全にフィクションです。使節団のサムライたちの船が漂流したら、それが香港にたどり着いたら。さらに、日本料理を知るサムライがIce House St.でイギリス人の貿易商と知り合ったなら……なんて発想から、時代設定をして、日本食の考えをカクテルやフードに落とし込み、空間づくりをしました。でも、ちょっと情報過多になりそうで、あえてストーリーを隠すことにしたのです」

さらに、次なる挑戦も視野に入れている。
「『GOKAN』はこれまで手掛けてきたバーのなかではフードにも力を入れていて、日本食、かき氷、カクテルといった3本柱のストロングポイントがあります。メニューやオペレーションなどバーのスタイルをフォーマット化して、別の場所で『GOKAN』を展開できたら、なんて未来を思い描いています。アジアに限らず、ヨーロッパやアメリカ、中東などにもチャンスはあるでしょう。やってみたいことのアイデアとチャレンジは尽きません」
パーティーで数百杯ものカクテルをつくった直後だというのに、疲れをまったく見せずにそう語る後閑さん。 
今年8月には、「The SG Club」3階にSGグループ初となるおまかせのカクテルコースで愉しませるバー、その名も「参階 (Sangai)」をオープンした。アイデアをひとつひとつ形にしていく姿勢もまた、世界が後閑さんに注目する理由である。
(The SG Club 参階 – Sangai オープン。記事はこちら)

GOKAN
G/F, 30 Ice House Street, Hong Kong
OPEN DAILY 17:00~LATE
Reservations @gokan.hk


文 沼 由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『EST! カクテルブック』『読本 本格焼酎。』『江戸呑み 江戸の“つまみ”と晩酌のお楽しみ』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。

写真 Sonia Cao(曹ソニア)
デジタルエージェンシーで培ったブランドストーリーテリングを武器に、現在は飲食業界におけるプロモーション、クリエイティブ、そしてバーテンディングの分野で幅広く活躍中。広島の「The Bar TopNote」ではマーケティングディレクターを務め、バー空間の演出からカクテルの創作まで、その多才な感性を発揮している。Diageo World Class 2025 Japan TOP10に選出された注目のバーテンダーでもある。

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