2024.11.26 Tue
LEGENT特集 トップバーテンダーインタビューバーボンらしさと複層的なフレーバー。シェイクに耐えられるコシの強さもあわせ持つ。
新橋 清さん(サンルーカル・バー/東京・神楽坂)2023年から数量限定で発売されたプレミアムなアメリカンウイスキー「LEGENT(リージェント)」が、2024年11月26日(火)より通年販売されることとなった。ビーム社のマスターディスティラー フレッド・ノウ氏が造ったバーボンの原酒を用い、サントリーのチーフブレンダー・福輿伸二氏がブレンドを担当。ふたりのレジェンドが新たな領域に挑戦して誕生したアメリカンウイスキーである。
その味わいはいかに? カクテルにする可能性は?
「LEGENT」通年発売記念企画として、3人の著名なバーテンダーに「LEGENT」を体験してもらい、その魅力と可能性を語ってもらう。
アメリカンウイスキー「LEGENT(リージェント)」
ふたりのレジェンドの挑戦
「山崎」「響」の開発を手掛ける福與伸二による精緻なブレンディング技術と感性、そして、バーボンの歴史を背負うフレッド・ノウが守り続けてきた、アメリカの大地が育んだ力強いバーボンの原酒が融合。
常識を超えた新しい製法
ビーム家が200年以上の守り続けてきたストレートバーボンに、ワイン樽とシェリー樽でそれぞれ後熟させた原酒をブレンド。バーボンらしい力強さにワイン樽由来の芳醇な香りと甘み、シェリー樽由来のスパイスのような香味が加わり、これまでにない複雑味を実現しています。
「LEGENT」ホームページ
https://www.suntory.co.jp/whisky/legent/
●容量 750ml ●アルコール度数 47%
●希望小売価格(税別) 7,200円
開業の2010年より、当時のオーセンティックバーでは珍しかった14時から開店を貫くバーである。オーナーバーテンダーの新橋清さんは、明るい時間から開店する理由をこう語る。
「当初は、そんな時間に誰が来るの、なんて周りから言われました(笑)。独立までの20年は、17時から深夜まで営業するバーで経験を積みましたが、お酒を飲むには夜じゃないといけないということはありません。もし深夜まで飲んで翌日にダメージが残ってしまうようなら、明るいうちに味わう1杯が明日の活力につながるようなバーを開きたい、と考えてのことでした」
ランチ後の食後酒やディナー前の食前酒を飲みに来る客もいるし、買い物帰りの主婦が帰宅前にカクテル1杯を味わいに立ち寄ることもある。「サンルーカル・バー」でそんな光景が当たり前になったのは、新橋さんの真摯な仕事の向き合い方やもてなしによるところが大きいのだろう。
さっそく、新橋さんに「LEGENT」をテイスティングしてもらう。テイスティンググラスに注ぎ、赤褐色の琥珀色のウイスキーを入念に香り、こんな風に表現する。
「原料のとうもろこし由来の甘い香りやバニラといったバーボンらしい魅力を十分持ち合わせていますね。ワイン樽とシェリー樽でそれぞれ後熟させた原酒をブレンドすることで、柔らかさやほどよい酸味が重なって深みのある香りを生んでいます。バーボンで酸を感じる香りがすることは珍しいので、おもしろいですね」
今度はグラスに口を付け、余韻までじっくり味わう。
「味わいも香り同様、骨格にバーボンらしい甘味がありますね。その後にカカオのような深みや香ばしさ、さらに続いてフルーツのような後味が広がります。甘味の後に酸味が追いかけてきて、その甘酸のバランスが非常によく整っていて心地よいです。グラスに注いでから少し置くと、さらに甘い香りが立ってボリューム感と旨味が増しますね」
ストレートの他に、少量の水の加水、オンザロックといった飲み方でも味わってもらった。新橋さんに響いた飲み方はまずはストレート。そして、オンザロックだった。
「ストレートがもっともLEGENTが持つ多層感や複雑味を存分に味わえます。アメリカンオーク樽で熟成したバーボンらしいバニラ感が最初にやってきて、次にシェリー樽由来と思われるチョコレートのような風味、最後にワイン樽由来であろう酸味、と口の中で段階的にいろんな味わいに変化していきます。アルコール度数が47%と高めなので、ひと口目よりも少し口が慣れたふた口目の方がより深みが感じられますね。飲み進めるほどに、最初は見えなかったフレーバーが見えてきそうです」
オンザロックにすると「柑橘の風味が出てきましたね。うん、おいしいです」と新橋さん。「氷が入るので当然のことながらクールなニュアンスが出てきます。ロックにはいくつかの氷を入れる場合と、大きめの氷を1個だけ入れる場合があります。前者の方が氷が溶けるのが早く緩んでしまうので、LEGENTの場合は大きめの氷を1個入れて、純粋に冷やして味わうことを目的に本来の持ち味の甘味やコクやボリューム感をゆっくり愉しむのがよいのではないでしょうか」
バーボンの先駆者ジムビーム蒸溜所の7代目マスターディスティラー、フレッド・ノウ氏と、ジャパニーズウイスキーの歴史を切り拓いてきたサントリーの5代目チーフブレンダー、福與伸二氏の2人のブレンド技術が融合した「LEGENT」。新橋さんはどんな飲み手を想像したのだろうか。
「名ブレンダーの2人がタッグを組んだだけあって、1+1が3にも4にもなる世界観が広がっていると思います。それは、ブレンドの技術でどれだけ味わいをドレッシングするのかといえるのかもしれません。スコッチやジャパニーズがお好きな方にもこの新しさを体験していただきたいですし、バーボンファンの方にはとくに召し上がっていただきたいですね。これまでになかった味の広がり方の新鮮さを愉しんでいただけると思います」
「LEGENT」をベースにしたクラシックカクテルをリクエストすると、新橋さんから返ってきたのは「リージェント・デイジー」なるカクテル。クラッシュアイスを入れたグラスにグレナディンシロップとレモンジュースが入り、レモンとミントが添えるスタイルである。
「レモンとシロップのみを加えるウイスキーサワーや、卵白を入れるウイスキーサワー。ミントジュレップなども試してみたのですが、LEGENTが持つなめらかさやバニラ感が消えてしまうような気がして。その点、デイジースタイルのカクテルは、ミントが入ることで清涼感が出ますし、グレナディンシロップは冬場ならフレッシュのザクロでつくることもできます。ミントをグラスの中に落としたり、レモンスライスをつぶしたりして、お客様自身の手で味の変化をつけて愉しんでいただけます。また、私が理想とするシェイクは、使うベーススピリッツによっては、時にコシ砕けになってしまうことがあります。厚みがないと耐えられないとでもいうのでしょうか。でも、LEGENTは骨格がしっかりしていて、ハードシェイクをした後も副材料と相乗しながら”らしさ”をとどめるコシの強さを実感しました」
- 『リージェント・デイジー』by Kiyoshi Shimbashi
- 〈材料〉
- ・リージェント……50ml
・フレッシュレモンジュース……20ml
・グレナディンシロップ……2tsp
・レモンスライス
・ミント - 〈つくり方〉
- ① 小型のワイングラスにクラッシュアイスを入れて冷やす。シェイカーにリージェント、フレッシュレモンジュース、グレナディンシロップと氷(分量外)を入れてシェイクする。
② ①をグラスに注ぎ、レモンスライスとミントを飾り、ストローを添える。
新橋 清(しんばし・きよし)
1969年埼玉県生まれ。とあるイベントでバーテンダーの上田和男氏に出会い、この人の元でバーテンダーになりたいと思い、20歳の時に資生堂パーラーのバー「ロオジエ」入店。店長だった上田氏に師事し、7年勤める。同店の建て替えに伴い、上田氏が開業した銀座「テンダー」で約13年経験を積。1993年(23歳)、フィンランディア ウォッカのカクテルの世界大会「フィンランディア ウォッカ国際ドリンクカクテルコンペティション・デザート」で優勝。2004年、ベネンシアドール公式称号資格認定試験で最優秀賞を獲得。ほか、受賞歴多数。2010年、自身のバー「サンルーカル・バー」開業。
サンルーカル・バー
東京都新宿区神楽坂6-43 K’s Place102 Tel:03-6228-1232
明るい時間なら自然光が差し込む店内はカウンター6席、テーブル1卓。スタンダードカクテルや季節のフルーツを使ったカクテルを中心とする。店名はスペインの港町、サンルーカル・デ・バラメーダという地名から命名。安らぎをもたらし、新たな気持ちで船出ができる港のような店にしたいとの想いが込められている。
インタビュー・文 沼由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『読本 本格焼酎。』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある