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2021.04.13 Tue

グレンモーレンジィの特徴を生かすカクテルとは和と洋の伝統が折り重なる
エレガントな一杯「里山香る茶割り」

鹿山博康(Bar Benfiddich/東京・新宿)

自身の店が「The World’s 50 Best Bars 2020」で40位に選出されるなど、世界にその名を轟かす鹿山博康氏(Bar Benfiddich/東京・新宿)。実家の畑で自ら栽培するハーブなどを多用する“農業バーテンダー”としても知られる同氏が創り出したのは、グレンモーレンジィに、日本の伝統的な香木であるクロモジを煎じたお茶を合わせた“エレガント×エレガント”なカクテル「里山香る茶割り」。なぜグレンモーレンジィに、カクテルの素材としてはあまり一般的ではないクロモジ茶を合わせたのか、そしてどのように創作するのか、オリジナリティにあふれるカクテルの全容に迫る。

クロモジ茶で引き立たせる、グレンモーレンジィのエレガントな香り

バーテンダーとして働く中で、アブサンなどの洋酒に欠かせないハーブに興味が湧き、実家の土地を利用してそれらを栽培することを始めた鹿山氏。週に1〜2度は訪れるという畑では、市場では手に入りにくい素材なども栽培し、その畑仕事の中でカクテルのアイディアが湧くのだという。

「カクテルを作るときの着想は、畑にいるときに得られることが多いんです。育てているハーブや周辺に自生している素材を見ながら『これを使えたら面白いな』と感じることから始まり、その素材に合うものを探しながら組み立てていきます。単体で使用する素材もあれば、個性が強い素材の場合、同じ属性のものを合わせて中和したり、デコレーションとして訴求することもありますね」

このように、独自の方法でカクテルを考案している鹿山氏だが、クロモジもまた実家の山の周辺に自生しているという。しかしなぜ、グレンモーレンジィにクロモジのお茶を合わせたのだろうか。

グレンモーレンジィの個性を消さぬよう、同じ属性の香りを合わせることで相乗効果をもたらしているのだという。「ウイスキーカクテルといえば、ウイスキーの樽や麦に由来する味わいに、そこから甘味や苦味、酸味といったテクスチャーをさらに積み重ねられる。ですが、あくまで中心軸にあるのはウイスキーのそのものの香味であって、ベースの味が活きた複合的なカクテルとなります。今回のカクテルのベースであるグレンモーレンジィは、端的にいうと華やかでエレガントなウイスキーだと思っています。そうした魅力を活かすべく選んだのが、日本の里山を感じさせながらも、エレガントな香りを有するクロモジを煎じて作ったお茶です。このクロモジ茶を合わせることによって、グレンモーレンジィのエレガントさがさらに引き立つ“エレガント×エレガント”なカクテルとなるんです」

クロモジの枝のみを煎じることで、香りをより強く抽出

樽の個性を活かすことで原酒にも個性を与えているグレンモーレンジィを、日本人にとって親しみ深い茶割りにすることで、その個性をさらに引き立てる「里山香る茶割り」。クロモジ茶という一見ユニークなお茶を使用するが、作り方はシンプルだ。

「クロモジは近年、健康効果が注目され流行っているからか、そのお茶も結構市販されているんです。『里山香る茶割り』には、自分で煎じたクロモジ茶を使用しているのですが、作り方としては枝の部分のみを15分ほど鍋でぐつぐつと煮出しています。市販のクロモジ茶には葉も含まれているものが多いですが、クロモジの香りは主に枝にあり、これを煎じることでより強く香りが引き出せるんです。日本のウイスキー文化でもある水割りからインスパイアを得たカクテルでもあるのですが、グレンモーレンジィの良さを引き出すために甘味、苦味、酸味をあえて加えていません。そうすることで、ベースの味わいが直に伸び、グレンモーレンジィの華やかでエレガントな香りに、クロモジのほのかなエレガントな香りを纏わせた、マイルドな仕上がりになります。里山を感じさせる、今までにない新しい茶割りかもしれませんね」

抗菌作用があるクロモジは、室町時代や江戸時代の頃は歯ブラシ代わりに使われていたという。高級爪楊枝の素材としても知られるが、和菓子を食す際には必ずクロモジの楊枝を使うようにと、かの千利休が決めたのだとか。

普段からユニークな素材なども使用する鹿山氏だが、カクテル名には、多くの人が分かるワードを使いながら、そのカクテルを表現するであろう名を付けるそうだ。
「クロモジは日本の里山に生えている香木です。エレガントでありながら少し湿気を感じさせる香りは、季節で例えるなら春というよりは秋だと思っています。秋といえば里山をイメージする方も多いでしょう。だから『里山香る茶割り』と名付けました」。

シンプルなレシピだから活きるグレンモーレンジィの個性

1987年から、他に先駆けてウッドフィニッシュを実施していることから“樽のパイオニア”とも称されるグレンモーレンジィ。バーテンダーを始めたばかりの頃の鹿山氏に、樽による仕上がりの違いを教えてくれたのがこのウイスキーだったのだという。
「バーテンダーを始めた17年前、勤めていたバーには4種類ほどグレンモーレンジィがありました。当時は樽の違いで個性を表現しているウイスキーはグレンモーレンジィぐらいでしたし、感銘を受けたのを覚えています。思えば、そうした樽の違いで初めて飲み比べをしたのがグレンモーレンジィでした」

鹿山氏にとって思い出のあるグレンモーレンジィだが、エレガントさを崩さぬように意識することで、クロモジ茶以外の素材でもその魅力を発揮できるという。

「今回使ったのはクロモジ茶ですが、玉露でも良いですし、桑の葉を使った桑茶でも良いと思います。お茶で割るだけなら甘味や酸味が加わらないので、グレンモーレンジィの華やかさやエレガントさが強調されるんですよ。軸となるベースの味わいはなるべく崩さぬように、エレガントなウイスキーにはエレガントな香りの素材を使用するなど、同じ属性を合わせることで個性をブーストさせていくのもありだと思います」

「里山香る茶割り」は、グレンモーレンジィとクロモジ茶という2つの素材からなるシンプルなカクテルだが、まるでいくつもの素材が合わさったかのような複雑でエレガントな香りが広がる。山や畑での時間も大切にし、日本の伝統素材への造詣も深い鹿山氏らしい、和と洋の伝統が折り重なったクラシックモダンなカクテルだ。

グレンモーレンジィ 里山香る茶割り レシピ

・グレンモーレンジィ オリジナル 45ml
・クロモジ茶 75ml
・(ガーニッシュ)クロモジの枝 数本


材料に氷を加えステア、ワイングラスに注ぎ、中にクロモジの枝を入れる。※クロモジ茶の作り方:1リットルの水にクロモジ40gを入れ、15分ほど鍋で煎じる


鹿山博康 (かやま ひろやす)


2013年に、薬草酒を中心としたバー「Bar Benfiddich」を東京・西新宿にオープン。「Asia’s 50 Best Bars 2020」で15位、「The World’s 50 Best Bars 2020」で40位に選出されるなど、今や世界的に評価されるバーへと成長させ、自身もトップバーテンダーとして、世界中のバーイベントに数多くゲスト出演している。実家の畑で自らハーブを栽培し、カクテルにも多用することから“農業バーテンダー”としても知られている。


Bar Benfiddich(ベンフィディック)
東京都新宿区西新宿1-13-7 大和家ビル 9F
Tel: 03-6258-0309


   

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