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2020.03.3 Tue

たまさぶろのBAR遊記世界一バーテンダーがプロデュース「BARを愉しむ焼酎」、明治記念館でお披露目

たまさぶろ 元CNN 、BAR評論家、エッセイスト

 後閑信吾の名を知らぬ日本のBAR関係者はいない。

 後閑はバーテンダーとして日本で下積みを送った後、単身渡米。マンハッタンのイーストヴィレッジに位置するBAR「Angel’s Share」にてヘッドバーテンダーとして勤務する傍ら2012年、「バカルディ・レガシー・カクテルコンペティション」にアメリカ代表として出場、世界一に輝いた。

 カクテル大会で世界一に輝いた日本人バーテンダーはそう珍しくない。しかし、後閑が非凡な点はアメリカ代表として戴冠。その後、上海のSpeak Low、渋谷のThe SG Clubなど世界のトップ50に入るBARを出店。世界でもっとも注目を集めるバーテンダーのひとりとして、過言ではない。

 バーテンダーとして世界的なスポットライトを浴びてきた後閑にもたげた思いは「なぜカクテル作りに日本の蒸留酒がないのか」という疑問。世界で活躍する日本人バーテンダーが珍しくない現在、それでもBARで使用される蒸留酒は、ジン、ウォッカ、ラム、テキーラ、ウイスキーなど海外発祥。ジャパニーズ・ウイスキーが世界を席巻し、国産のジンが続々と登場する現代において、世界に誇る焼酎がカクテルのベースとなっても…という思いが湧き出た。

 日本酒、焼酎、泡盛…それぞれを使用したカクテルは存在しないわけではないが、それらが世界で使用される機会は稀だ。カクテル作りに適した蒸留酒が必要なのでは…そんな発想から、後閑が代表を務めるSGマネジメントが世界へ発信する焼酎プロデュースをスタートさせたのが2年前。その思いが今年ついに結実。先月2月14日、芋、麦、米と3酒類の焼酎「The SG Shochu」を発売。19日には東京・明治記念館にて、そのお披露目が行われた。

 BAR評論家と名乗りすでに10年となったが、明治記念館で商品の発表が行われるなど初めて。イベントで何度かこちらにお世話になったが、それはラグビーW杯日本開催地をダブリンから中継、日本代表の壮行会など、皇室や元首相が登壇するような大規模イベントばかり。そんな会場で焼酎のお披露目とはやや驚いた。

 会のスタートは、「くまモン」のクリエイターとしても著名になった放送作家・小山薫堂のビデオメッセージから。すでに日本の酒業界を超越した趣さえ感じた。

 演出は凝っていた、ただし後閑はあくまで監修の立場を貫き、実際に開発したのは、各大手焼酎メーカー。米焼酎は「白岳」「しろ」で知られる熊本の高橋酒造株式会社が、芋焼酎は「さつま白波」などを主力商品に持つ鹿児島の薩摩酒造株式会社、麦焼酎は「いいちこ」で海外進出も果たしている大分の三和酒類株式会社がそれぞれ担当。この日は各社の代表取締役社長も登壇した。

 「The SG Shochu」の商品名は、ずばりぞれぞれ「KOME」、「IMO」、「MUGI」。ここには日本発の蒸留酒としての強い思い入れがある。「仮に“スイートポテト“などと命名してしまうと、海外でこの商品を知った客が日本を訪れた際に“スイートポテトをくれ”とオーダー、日本のバーテンダーが戸惑うかもしれない。それなら“IMOを”とオーダーされたほうが、この焼酎であることがはっきりする」と力強く解説。焼酎名も「SUSHI」同様、日本語のまま海外で定着して欲しいという願いが込められている。

  「KOME」には米発酵の吟醸香、「IMO」は芋ならではの力強いフレーバー、ウイスキーのように樽熟成させた「MUGI」は豊かなアロマを感じさせ、「これはこれで従来通り、ストレート焼酎として飲んだほうが…」と思わせたが、実際に振る舞われたカクテルを口にすると、主要蒸留酒と同様40度程度の度数に保たれたベース酒だけに、それぞれの特徴が活かされたハーモニーを愉しむことができた。

 この日のカクテルは、KOMEを使った「トマトの木」、IMOベースの「バロンナガサワ」、そしてMUGIを使用した「大江戸バナナ」。それぞれに焼酎の個性を活かしたユニークなカクテルに仕上がっていた。

 ボトルデザイン、ラベルデザインについての凝りようにも言及。デザインは、サヴォイホテルのメニューブックなどを手がけたイギリスのユナイテッド・クリエイティヴズ社が担当。洋酒風なデザイン要素と和風の伝統的な文様を調和させ、ラベルを仕上げた。そこには後閑ならではの「A Tradition In Evolution」、「Sharing and Gratitude」…、伝統と革新、共有と感謝という自身のメッセージが書き込まれている。

「さつまいもの原産地は南米。それがヨーロッパを巡り、蒸留方法とともに日本、九州にわたり、芋焼酎が生まれた。“IMO”がペルーのBARカウンターに里帰りし、世界を巡るギリシャ人がそれをオーダーして、カクテルを飲む…」そんな夢を膨らましているとか。お酒を巡る世界の物語を想像するのは、なかなかスケールが大きく、愉しい。

  さて、この日本発「バーを楽しむ焼酎」は、我々にどこまで夢を与えてくれるだろう。


たまさぶろ BAR評論家、エッセイスト、元CNN
立教大学文学部英米文学科卒。『週刊宝石』、『FMステーション』など雑誌編集者を経て渡米。ニューヨーク大学にてジャーナリズム、創作を学ぶ。CNN本社にてChief Director of Sportsとして勤務。帰国後、月刊『PLAYBOY』、『男の隠れ家』などへBARの記事を寄稿。2010年、東京書籍より『【東京】ゆとりを愉しむ至福のBAR』を上梓し、BAR評論家に。これまでに訪れたバーは日本だけで1500軒超。他に女性バーテンダー讃歌・書籍『麗しきバーテンダーたち』、米同時多発テロ事件以前のニューヨークを題材としたエッセイ『My Lost New York』などあり。

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