BAR TIMES

2018.08.6 Mon

「The SG Club」が渋谷にオープン後閑信吾さんがつくる
アメリカンウイスキーカクテル

BAR TIMES編集部

ニューヨークの名店「Angel’s Share」でヘッドバーテンダーを務めたのち、上海の「Speak Low」、「Sober Company」と次々に世界的な人気店をつくりあげてきた日本人バーテンダー、後閑信吾さん。昨年には「Tales of the Cocktail」でバー業界のアカデミー賞ともいわれる「International Bartender of the Year」を受賞する快挙を成し遂げ、その名は世界中に知れ渡っている。そんな彼が、いよいよ東京でバーをオープンする。――突如として舞い込んだサプライズ・ニュースは瞬く間に人々の間を駆け抜け、誰もが期待に胸を躍らせていたと言っても過言ではない。

そして2018年、後閑さんは帰ってきた。彼らしいと言うべきか、我々の想像や期待をはるかに超える形で、日本と世界とを繋ぐそのバーテンダーは、今、東京のバーカウンターに立っている。今回は、その新店「The SG Club」(東京・渋谷)と、アメリカンウイスキーベースのオリジナルカクテルについて後閑さんに聞いた。




地下1階と1階にそれぞれコンセプトの異なる二つのバーを内包している。いざ扉を開ければそこには和洋折衷とも言うべきか、細部にまで趣向の凝らされた独創的な空間が待ち受けている。「The SG Club」。自身のイニシャルを看板に刻んだのかと思えば、どうやらそうではないらしい。

「僕のことを知っている方にはイニシャルでしょ?ってよく言われるんですけどね(笑)。「ちびちび飲む」という意味の“Sip”と「ごくごく飲む」という意味の“Guzzle”の略で、2つの異なるコンセプトを込めているんです。だから、各階でBGMからメニューから内装からすべて全く異なる雰囲気を演出しています。」

 
店構えから、常に革新的である彼ならではのスピリットが表現されている。“Sip”をあらわす地下1階のバーは随所に新しさを交えつつ、オーセンティックさも失わないバー。その一方で、“Guzzle”をあらわす1階のバーは、いかにもフラットでカジュアルなスタイル。14時オープン、コーヒーやノンアルコールのカクテルも充実している。


完璧な空間作りを心がける彼は〈ストーリー〉を大切にしてきた。「The SG Club」に吹き込まれたテーマとは。

「『The SG Club』のテーマは万延元年遣米使節団。ジョン万次郎や勝海舟、福沢諭吉などが属したその使節団は1860年に徳川幕府が始めて公式に送り込んだものであり、彼らを約5万人のアメリカ人が迎えたといいます。アメリカ人が初めて見る侍という存在と、侍達が初めて見る大国アメリカ。双方に相当な刺激を与えた機会であったはずです。彼らが滞在した辺りには、バーテンディングの父とも言われるかの有名なジェリー・トーマスのバーがあったといいます。」


「そののちトーマスの出版したカクテルブックに〈ジャパニーズカクテル〉というカクテルが収録されています。きっとそのインスピレーションは侍達から得たものだと。彼らが直接対面したという記録はありませんが、もしも、その侍達が西洋のバー文化に触れ、江戸に戻ってバーをオープンしていたら、という仮説のもとでこの店舗を作りあげました。」

 
デザインチーム、バーチーム一体となって追求したこだわりの店内には、細部にまで趣向が凝らされている。洋燈のない時代、障子の反射光を利用する江戸時代の知恵を採用したり、トイレには落語が流れていたり遊び心満載である。


長い年月、海外のバー文化に接してきた彼は、今回の帰国をどのように捉えているのだろうか。

「日本とアメリカでは、飲み手も作り手も全く異なります。アメリカでは、バーはどんな時でも利用できる、いわば“みんなのもの”。日本人にとっての居酒屋くらいの位置づけでバーがあるんです。僕はバーテンダーとして、“みんな”がバーを嗜むといった、バー文化の根付きを一つの目標としています。どちらの文化が良い悪いとかではなく、僕自身は勝手に双方の好きなところをとって組み合わせている感じですね。僕はアメリカでは「いかにも日本人らしい」と言われるし、日本では「アメリカっぽい」と言われますから(笑)」


バーは、かっこいい。憧れを、つくる。
「昨年、「International Bartender of the Year」に選んでいただいたことで、自身の責任というものをより一層考えるようになりました。賞を獲ったアジア人として、何ができるか、どのようにこの業界に貢献していくのかと。名誉ある賞とはいえど、この話を知らない方が大多数であるというのが現実です。だからもっとバー文化が広く根付いていくような活動をしなければならない。昨今は世界的にカクテルブームと謳われていますし、日本でも全体的にバー文化が少しずつ盛り上がってきているように感じますが、それでも若者の酒離れと、バーテンダー不足にはかなり危機感を抱いています。バーって行きづらいよね、バーテンダーって大変そう、そんなイメージを払拭したい。バーの素晴らしさを僕らが身をもって伝えていきつつ、憧れをつくっていけたらと思います。」

 
今後の躍進に目が離せない。



「アメリカンウイスキー」オリジナルカクテル
世界におけるアメリカンウイスキーのトレンドと相まって、近年、バーシーンで注目を集めている「スーパープレミアムバーボン」。その中でも特に目覚ましい成長を遂げているのがウッドフォードリザーブです。今回は「ジェントルマンジャック」「ウッドフォードリザーブ」を使用したカクテルを披露していただきました。
 


ジェントルマンズ・ウイスキーサワー

 
テネシーウイスキー「ジェントルマンジャック」を使用したオリジナルのウイスキーサワー。ウイスキーサワーという呼称は聞きなれないが、海の向こうではオールドファッションドの次くらいに定番のカクテルの一つである。通常はウイスキー、レモンジュース、砂糖、卵白をシェイクして作るが、通常のウイスキーサワーの棘のある感じや酸味、生臭さといった部分をジェントルマンジャックのメロウな感じで調和し、さらにそのウッディで滑らかな風味を引き立たせるためにメイプルシロップとオレンジジュースで酸味と甘味を投入したという。

後閑さん「日本でもハイボールは既に認知度の高いもの。入り口としては広いように思います。ウイスキーサワーは海外のお客様からの注文も多いので、そのお店の独自性を表現するのにぴったりのカクテルです。」


ヨンカーズ・ジュレップ

 
ケンタッキーダービーの公式カクテル「ミントジュレップ」をアレンジした一品。競馬場とリンゴで有名な町・ニューヨーク州ヨンカーズ。馬の好物であるリンゴを加え、ミントとともにディルをトッピングすることで青々とした競馬場の芝も表現している。

後閑さん「ウッドフォードリザーブは上質なバーボンなので、合わせる蜂蜜にもこだわりました。希少な桜の木の蜂蜜は華やかで相性が良いうえに、非加熱のために生感のある蜂蜜はフレッシュなミントとよく合います。クラッシュアイスが溶けても薄まらないよう濃厚に仕上げているので、グラスの中の氷をがしがしかき混ぜながら、ミントのフレーバーが中に入っていくさまを楽しんでほしいですね。」


和牛マフィア・ファッションド

 
クラッシクカクテルの王道、「オールドファッションド」をアレンジ。ネーミングからして目を疑うこの一品、名前通りのカクテルである。火にかけて甘い香りを出した神戸牛の脂をウッドフォードリザーブに混ぜ合わせ、冷凍庫で冷やして固まった脂をフィルターで漉したものがベースになっているという。「和牛マフィア」ブランドのビーフジャーキーをトッピングに使用。

後閑さん「定番のクラシックカクテルというだけあって、その店にどのようなハウス・オールドファッションドがあるかはとても重要。バーボンのクオリティがごまかせないレシピなので、香り高いウッドフォードリザーブと、それに見合った最高品質の和牛・蜂蜜を起用しました。必ずといっていいほどお客様は驚きますね(笑)」

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