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2017.08.17 Thu

ザ・シーバス マスターズ 2017世界チャンピオン 鈴木敦氏が語る
ザ・シーバス マスターズ2017

BAR TIMES 編集部

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TOP BARTENDER Philosophy

バータイムズ編集部が今注目のバーテンダーをご紹介する編集企画「TOP BARTENDER Philosophy」(トップ バーテンダー フィロソフィー)。バーテンダーの仕事とは、カクテルとは、今後のビジョンはなど、トップバーテンダーたちは、どんな思いやこだわりを持って自らを高め、理想に向かって邁進しているのか。普段のカウンター越しでは見られない一面をご紹介いたします。

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世界150カ国以上で愛飲されているスコッチウイスキー「シーバスリーガル」。そのカクテルコンペティション「ザ・シーバス マスターズ 2017」が7月1日から5日間の日程で開催された。今年で4回目を数える同大会では、世界一の座を狙い各国から15名のファイナリストたちが東京に集結。数日間にわたるプレゼンテーションを繰り広げた結果、中国代表として出場した日本人バーテンダー、鈴木敦氏(Speak Low/Sober Company-上海)が栄光のタイトルを手にした。鈴木氏にとって「ザ・シーバス マスターズ 2017」とはどんな意味をもたらしたカクテルコンペティションだったのか。その思いを聞いた。
(撮影場所:3MM BAR/東京・恵比寿)



優勝カクテルのコンセプトは“言語を超えた会話”

世界チャンピオンおめでとうございます。まずは「ザ・シーバス マスターズ 2017」に挑戦したきっかけを教えてください。

鈴木 実は2016年にも出場していて、優勝まであと一歩というところまでいきました。結構やり尽くした感があったので再び挑戦するかかなり悩みましたが、グローバルファイナルが東京だと知った時、出るなら今年しかないって思ったんです。最終的に決意したのは、店のスタッフみんなが強く後押ししてくれたことが大きかったですね。

鈴木さんにとってどのような大会でしたか?

鈴木  とてもユニークな大会でしたね。最初の2日間はファイナリスト全員で東京の街に繰り出しトレジャーハントをしたり、茶道を体験したり、人気のバーへ訪れたりしました。東京の空気や日本の文化を肌で感じ、3日目以降から行われる実技競技のプレゼンテーションに大いに役立ちました。私も知らない東京がたくさんありましたね。大会側からするとインスピレーションを与えることだけが目的ではなく、シーバスリーガルがもっとも大事にしている2つの言葉“ブラザーフッド”と“ジェネロシティー”を形づくること。行動を共にし、互いに助け合い、協力することで “仲間意識”と“相手に対する寛容さ”を芽生えさせることが一番重要な目的なのだと実感しました。

見事世界チャンピオンの座を手にした鈴木氏。ステージでその喜びと仲間への感謝を伝える。見事チーム優勝を勝ち取り喜び合う3人。左から香港代表のライアン氏、中国代表の鈴木氏、メキシコ代表のハイディ氏。

“ブラザーフッド”をもっとも実感した瞬間はいつでしたか? 鈴木  大会最終日に行われたチーム戦ですね。15人だったファイナリストが5人に絞られ、共に闘った10人の選手たちと審査員を含め4人のチームをつくるんです。私のチームはメキシコ代表のハイディと香港代表のライアン、それに審査員のイアン。シーバスリーガル12年を使いどんなカクテルを創作するか、前夜に新宿のゴールデン街で会議をしました(笑)。お酒が入るとみんな熱くなって、いろんな意見が出る。ああでもない、こうでもない、それはいい、それはダメだという調子でね。そこで4人の距離がグッと縮まったように思います。そんな中で生まれたのが優勝カクテルの「THE DOUBLE TALK(ザ・ダブルトーク)」でした。まさにブラザーフッドの精神が創り上げた最高のカクテルです。

どんな思いがカクテルに込められているのですか?

鈴木  このカクテルは“リチュアル(儀式)”をテーマに創作しました。ダブルすなわち「2」がキーワードになっていて、2杯分のカクテルを自分と相手のグラスに注ぎ、乾杯の代わりにグラスをテーブルに2回タップする。国や言語が違

っても互いにグラスを傾け合うその瞬間を共有したい、そんな思いを表現したかったんです。新しいフレンドシップのはじまりであり、言語を超えた会話。それがこのカクテルのコンセプトです。それともうひとつ、シーバスリーガル12年は全世界で1秒に2本売れていると言われます。それをレシピでも表現したくて、シーバスリーガル2に対してカンパリを1、ブラン ベルモット(ビアンコ)を1の割合にしています。ここでも「2」がキーワードになっているんです。優勝した時はどんな思いがこみ上げてきましたか?

鈴木  出場するからには結果を残したい、そのための準備はしっかりやってきましたから自信がまったくなかったと言ったら嘘になりますが、壇上で名前を呼ばれた瞬間、驚きのあまりしばらくポカンとしてしまいました(笑)。チーム優勝=個人優勝でもあり、共に助け合った3人の仲間にはとても感謝しています。本当に嬉しくて何度も何度も抱き合って喜びを分かち合いました。ザ・シーバスマスターズに2017に挑戦して本当によかった。優勝できたことはもちろん嬉しいのですが、何よりも一生涯の友に出会えたことが一番の喜びです。


優勝カクテルの「THE DOUBLE TALK(ザ ダブル トーク) 」。シーバスリーガル12年、カンパリ、ヴェルモットと世界のどのバーにもある材料を使い、2:1:1で合わせたシンプルな一杯。手前の抹茶塩はガーニッシュ。マンダリンオレンジやカフィアライムで香港版、チョコレートやライムでメキシコ版など、その国ならではの素材を使ったガーニッシュでこのカクテルを楽しんでほしいと鈴木氏は語る。

“海外で活躍したい”という
強い思いと行動力が自らの道を切り開く

ところで、バーテンダーになったきっかけは何ですか?

鈴木 学校を卒業して進路に迷っていた時、地元の葛飾柴又にあった小さなショットバーで求人募集をしていました。手に職を付けたいと思っていましたし、バーテンダーへの憧れもあって思い切って扉を開けてみることにしたんです。いろいろ経験を積んで24歳になった時、漠然と海外で挑戦してみたいって思ったんです、それもニューヨークで。水すら注文できないほど英語はできなかったですが、それでも行ってみました(笑)。日本人の知り合いがニューヨークで有名な『エンジェルズシェア』というバーで働いていたので訪ねてみたところ、ちょうど人手が足りない時だったようで運良く働かせてもらえたんです。そこで今の店のオーナーである後閑信吾氏と知り合いました。

そのままニューヨークに?鈴木 一度日本に帰りましたが、どうしても海外で挑戦したいという思いが抑えきれず今度はロンドンへ行きました。行く先々のバーで自分のプロフィールを渡していたら、運良く働き口が見つかりました。ビザの関係で再び帰国し何も決めないまま次はカナダのトロントへ。最初はジャマイカ人が経営する寿司店で働いたのですが(笑)、地元で年に一度のカクテルコンペがあると聞き唯一の日本人として参加しました。トロントにはあまりバーがないイメージだったのですが、当日30人くらいのバーテンダーが集まってきたので驚きました。「えっ、こんなにいたの!」って(笑)。優勝は逃しましたが別の店から声がかかるなど、ステップアップにつながりましたね。「THE DOUBLE TALK」もそうですが、言葉が分からなくても自分たちの仕事を通じて会話ができる、海外に行くとそれがより実感できます。

「大会で優勝できた時、歴代のチャンピオンから“君も新しいブラザーフッドだね。おめでとう!”と声をかけてもらえました。とても温かい気持ちになるし、本当に光栄なことだと思っています」と鈴木氏。

今後の目標を聞かせてください。鈴木 現在私は上海にある「Speak Low」という店のカウンターに立っています。多種多様な人達が毎日やってきて、国や言葉など関係なくみんな賑やかにお酒を飲む。上海はグローバルな街だとつくづく感じますね。「Speak Low」は4年、「Sober Company」は半年とどちらの店もオープンしてまだ間もないですが、スタッフ全員と“ブラザーフッド”と“ジェネロシティー”の精神で力を合わせ、この街にしっかり根付いていけるよう頑張っていきたいと思っています。それと、4人のブラザーフッドでつくったカクテル「THE DOUBLE TALK」が世界中のバーで飲まれている光景を早く目にしたいですね(笑)。

本日はどうもありがとうございました。今後のご活躍を楽しみにしています。



鈴木氏のカクテルメイキング動画「THE DOUBLE TALK(ザ ダブル トーク) 」をBAR TIMES チャンネルでご覧ください。(撮影場所:3MM BAR/東京・恵比寿)

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