BAR TIMES

2017.03.1 Wed

たまさぶろのBAR遊記「ワールド・クラシック・カクテル」の
ワークショップでカクテル作りを体験

たまさぶろ 元CNN 、BAR評論家、エッセイスト

BAR評論家を標榜しているためか、カクテル・メイクについても「さぞかし一家言あるに違いない」と思われる。大変残念なことに、私にはバーテンダーとしての素養は備わっていない。

弊著『【東京】ゆとりを愉しむ至福のBAR』を上梓する直前、京王プラザホテルの今は無きスカイラウンジ「ポールスター」で、バーテンダー・スクールを開催していると耳にし、「しっかりしたBARで一度くらい学んでおいたほうがよかろう」と調子に乗り参加した。講師陣は、日本ホテルバーメンズ協会(HBA)のコンペティションで受賞歴を持つバーテンダーたち。現在は、渋谷の「バー・カルバドール」オーナー渡辺高弘さんもその一人だった。

「今日、初めてシェイカーを振る人は?」との講師からの問いに、元気よく手を挙げたのは参加者15人中、私ひとり。実はこの教室、参加者はみな駆け出しのバーテンダーもしくはアルバイト経験者ばかり。カウンターに立ったことない者は私だけだった。シェイカーの振り方を伝授されるものの、氷の入ったシェイカーの冷たいこと冷たいこと、振るという行為そのもので精一杯だった。

30分にわたる練習の後、各々がカクテル「バレンシア」をシェイクする運びとなった。レシピはシンプルに、アプリコット・ブランデー、バレンシアのオレンジジュース、オレンジビター数ダッシュ。それをシェイクするだけ。全員まったく同様、1mlの違いもない。


ワークショップで使用した素人にはもったいないような瀟洒なシェイカー


筆者の腕による「ダイキリ」の完成 悪くない仕上がりだったと思いたい
震える手でジガーカップを操り、とにかくシェイクし、完成させた。参加者全員のバレンシア・カクテルがカウンター上に勢ぞろい。15人分のバレンシアが並ぶわけだが、その色合いの異なること異なること。まったく同様のレシピながら、どれひとつ同じ色合いがないのだ。

さて、自分の一杯を試してみる。口に含んだバレンシアを思わず「ぶーっ!」と吹き出した。いや、吹き出しやしなかったが、危うく吹き出すほどだった。冷たいのに、素材がまったく調和していない。

がっくりと肩を落としたままバーテンダー教室を後にした。振り返ってみれば、カクテルの奥深さを思い知ったという点では、BAR評論家として、ひとつの成長と喜ぶべきだろう。やはり、私はカウンターのこちら側にいるべき人間なのだ。

こんなエピソードのおかげ(?)でシェイカーを振ることを頑なに拒んできたわけだが、つい先週、ANAインターコンチネンタルホテル東京が開催した「カクテル・ワークショップ」に招待された。36階に位置する「MIXXバー&ラウンジ」に足を運ぶと、そこでハッと気づく。招待席上にシェイカーがセットされている。


カクテルに合わせてもらったサービス・アペタイザー「ムール貝のライムとニンニク…」

「カクテル・ワークショップ」と称するほどだ、これは招待客がカクテル作りに挑戦する企画と当日、気づいた。少々の抵抗を試みるも、なにしろ招待されたテーマがズバリ、カクテル作り。作らないことには意味がない。覚悟を決め、お題目にダイキリを選ぶ。

ダイキリも、ラム、フレッシュライムジュース、シロップをシェイカーで振るだけのシンプルなカクテル。提供されたシェイカーがかなり大ぶりだったこともあり、今回はシェイクのスタイルそのものよりも、シェイカーの中味に集中してみた。なにしろ前回は、シェイカーの「振り方」にこだわり、形だけに気を配っていたのが、失敗の原因と考えた。今回は、そもそも中の氷の置き方から注意を払いシェイクに集中。シェイカー内の氷と液体の動きに神経をとがらせる。


西村さんによるカクテル「浦島太郎」 煙が立ち込めているのがお分かりになるだろうか
ショートグラスに注ぎ、真っ先に自ら味見。うむ、さすがにこの7年間の研鑽が、効いたのだろうか。これで元々、グラスさえ冷やしておけば、なんちゃってバーなら人様に飲んでもらえるかもしれない。素材をすべてシェイカーに入れ込んだ際、バースプーンで味見、少々甘めだったのでライムジュースを追加したのも、功を奏した。

ダイキリの出来は悪くなかったはず。やはり、人間とは成長するものなのだな…と自画自賛。その後、MIXXバー&ラウンジのバーテンダーさんに、カイピリーニャとマティーニをご馳走になり、大満足でお役ごめんと相成った。

筆者を含め、いつもBARに通ってはカウンターで薀蓄をたれるようなような客は、ぜひカクテル教室などで実体験を勧めたいものだ。

現在系列の「インターコンチネンタル・ホテルズ&リゾーツ」のバーでは、このダイキリを含めた「ワールド・クラシック・カクテル」7種を7軒のインターコンチネンタルで提供しており、3月31日(金)、次の「プレミアム・フライデー」までカクテルに合わせたアペタイザーをサービスしている。私が頂いたのは、アボガドのディップとコーンチップ、ムール貝のライムとニンニク・マリネ。カクテルもアペタイザーもどちらも「この後は、ディナー…」という際にピッタリだ。もちろん、カクテルは私が作るわけではないのでご安心のほどを。


「日本のお伽話カクテル」春の「花咲か爺さん」は日本酒ベース

こちらのMIXXバーでは、アシスタント・チーフ西村和也バーテンダーによる、そのクリエイティビティを発揮したカクテルシリーズ「日本のお伽話カクテル」をリリース。今年1月から2カ月ごとにひと品ずつ提供を進めている。この日、堪能したのは、泡盛をベースとした「浦島太郎」と日本酒をベースとした「花咲か爺さん」。「浦島太郎」に至っては、サーブされた外箱が開けられると、まるで煙が上がって来るような演出までされている。その味も、和のユニークさに溢れている。

さすがに、これはワークショップが開かれたとしても素人が真似できるような代物ではない。外国人客も多い国際的ホテルならでは。ビジネスマンとして外国人客を迎えた際は、こちらで日本ならではの一杯を振る舞い、ビジネストークのきっかけにしてはいかがだろう。

 


 

たまさぶろ
元CNN 、BAR評論家、エッセイスト
立教大学文学部英米文学科卒。週刊誌、音楽雑誌編集者などを経て渡米。ニューヨーク大学にてジャーナリズム、創作を学ぶ。CNN本社にてChief Director of Sportsとして勤務。帰国後、毎日新聞とマイクロソフトの協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」をプロデュース。日本で初めて既存メディアとウェブメディアの融合を成功させる。これまでに訪れたバーは日本だけで1000軒超。2015年6月、女性バーテンダー讃歌・書籍『麗しきバーテンダーたち』上梓。米同時多発テロ事件以前のニューヨークを題材とした新作エッセイ『My Lost New York ~ BAR評論家がつづる九・一一前夜と現在』、好評発売中。
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