BAR TIMES

2016.07.7 Thu

全米最多を誇るワシントン州の蒸留所探訪へ2.【シアトル・ダウンタウン編】

たまさぶろ 元CNN 、BAR評論家、エッセイスト

いくらシアトルには前職の同僚や大学時代の友人が多いと言っても、誰もがそういつまでも付き合ってくれるわけはない。ひとりで過ごさざるを得ない時間もたっぷりある。せっかくの滞在なので、漫然と時をやり過ごすにはもったいない。前々日のウッディンビルの蒸留所に気分を良くしたので、地元の蒸留所ツアーに参加することにした。参加したのは、Speakeasy Distillery Tour。シアトル市内の3つ蒸留所を巡り、参加費は89ドル。予約すると待ち合わせは、市内中心部にあるリカーショップを指定された。

Downtown Spirits
2300 7th Ave.,
Seattle, WA 98101
1-206-812-6591

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おっと、そこはまったく土地勘も、足もまったくない私、なんとか交渉の末、ホテルまで迎えに来てもらうことに成功。うむ、ニューヨークだったら、中々こんな融通は利かない。さすがは、シアトライト(※「ニューヨーカー」と同様、シアトルに住む人々の呼称)。この日のドライバーもナイスガイだった。

ホテルからリカーショップを経由し、他の客をピックアップ。再びバンに乗り込むと、ひとりひとりに「アップル・モスコミュール」が振る舞われる。最初に向かうLetterpressのウォッカを使用。スパイス・アップル・サイダー、フレッシュのライム・ジュースにジンジャー・ビアを加えたものだ。時はまだ14時前。昼下がりから呑むには、こんな爽快さがなければ、罪の意識を覚えるところだ。

バンは、ダウンタウンからハイウェイに入り南下する。「はて、いったいどのあたりまで」と考える間もなく10分もせず、ハイウェイから出る。そこはシアトル・マリナーズの本拠地、セーフコ・フィールドの近所だ。つまり、球場や米三大ネットワーク・テレビ局のひとつNBCのローカル支局が位置する街中である。

小さな建物にバンがすべり込む。「なんだ? 給油か?」と思うと、降りるように促される。すると「Letterpress Distilling Tasting Room」とある。ガレージかと思ったら、ここが蒸留所である。

Letterpress Distilling Tasting Room
85 South Atlantic Street., #110
Seattle., WA 98134
1-206-227-4522

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ガレージ?いえいえ、テイスティング・ルームの入口です

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これまで目撃した商業用蒸留器の中では最小!
参加者は、10人も入れば満員電車状態になってしまいそうな小さなテイスティング・ルームに押し込められる。まるで知人の自宅に招かれ、備え付けのカウンターの前でテイスティングしているような雰囲気だ。

まずは先ほどのモスコミュールに使用されていたウォッカから。いきなりウォッカですかい! 口を付けると「うお!」とむせるようなキックが襲って来る。さすがにこの時間からウォッカをショットで試すのは、BAR評論家と言えど、やや苦しい。ただ、変な癖もなく、先ほどのようにカクテルのベースにするにはけっこう使い勝手が良いだろう。

次にこの蒸留所の売りである「レモンチェロ」を試す。うむ、これは確かに口々に評判となりそうな出来。柑橘系特有のフレッシュさとスィートさの調和がウォッカに溶け込み、微妙なバランスを生み出している。美味い!

その後に、オレンジを使ったアランチェロ。レモンチェロよりもとろける甘さが、さらに魅力的だ。レモンチェロを買うか迷うが、すでにウッディンビルでウイスキーを一本購入済なので、ここは断念。

一行がバンに戻ると座席の上には、ソーセージとザワークラウト、それにミネラル・ウォーターのボトルが置いてある。いや、ウォッカの後には、ちょっと水分が欲しかった。ソーセージも有り難い。気が効いている。

加えて「LOVE LACE」とされたカクテルが回って来る。これから向かうBatch 206という蒸留所のバーボンにローズマリーのシロップ、フレッシュ・レモン・ジュースにクワントローを加え、ジンジャー・ビアでビルド。バーボンも重さを感じさせない香り豊かな一杯だ。

バンは海沿いの一般道をダウンタウンに引き換えしさらに北へ。すると通り沿いのドライブインのような建物に滑り込む。ここは雑貨屋などちょっと瀟洒な店舗も並んでいるので、ショッピング・エリアなのだろう。

Batch 206 Distillery
1417 Elliot Avenue West.,
Seattle, WA 98119

創業は、2012年3月。オーナーはシアトルでも有名なライブハウス経営者だったが、リタイアと同時に蒸留所に身を投じた。経営者だっただけに、テスティング・ルームのインテリアはご覧の通り、ちょっとしたカフェかラウンジのような設え。さっと試飲し、出て行く…というよりは、ゆったりとソファに腰掛け、あれこれと思い思いに楽しんでから、お気に入りの一本を手にして店を後にする…そんな客が何組か見受けられた。

そのためか、カウンターの片隅には自家製のピクルスが置かれており、「いくつでも食べていいよ」とのこと。テイスティングしながら、ポリポリとつまむ。イケる。

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オーナーのJeff Steichen

Batch 206のウォッカ、カウンター・ジンを二種類、シー・セブン・スターズ・ムーンシャイン、そして最後にオールド・ログ・キャビン・バーボン・ウヰスキーを試飲。中でも最後のコーン51%モルト49%のバーボン・ウイスキーは、わずか20か月ほどの熟成期間とは思われないぐらいに、フレーバー、テイストともにリッチである。

Kothe Distilling equipment製の蒸留器による二度の蒸留。アメリカン・オークの新樽、チャーは#3で熟成させる。その是非のほどは、酔っ払いには意見しかねるが、その出来には私個人、えらく気に入った。先ほどのレモンチェロを見送った甲斐あり。この一本を購入。オーナーもこの一本にブランド名「オールド・ログ・キャビン・バーボン・ウヰスキー」は1840年頃に存在したかつてのウイスキーから輪廻転生したものと考え、それだけに思い入れが深いらしく、日本からやってきた旅行者ににこやかに応えてくれた。

 


 

たまさぶろ
元CNN 、BAR評論家、エッセイスト
立教大学文学部英米文学科卒。週刊誌、音楽雑誌編集者などを経て渡米。ニューヨーク大学にてジャーナリズム、創作を学ぶ。CNN本社にてChief Director of Sportsとして勤務。帰国後、毎日新聞とマイクロソフトの協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」をプロデュース。日本で初めて既存メディアとウェブメディアの融合を成功させる。これまでに訪れたバーは日本だけで1000軒超。2015年6月、女性バーテンダー讃歌・書籍『麗しきバーテンダーたち』上梓。米同時多発テロ事件以前のニューヨークを題材としたエッセイ『My Lost New York』、2016年1月発売予定。
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