BAR TIMES

2016.06.23 Thu

京王プラザホテル開業45周年でリフレッシュ無念、消えゆくポールスター

たまさぶろ 元CNN 、BAR評論家、エッセイスト

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林をイメージした壁画は、ジャパニーズモダンの様式美にあふれてる

東京・新宿、角筈の地がまっさらだった頃、1971年6月5日に京王プラザホテルは開業した。今でこそ、東京都庁がこの地に移転、議会棟がホテルの目の前に鎮座しているが、当時は新宿駅から少々離れた場所であり、そんな人気のない土地に宿泊客が来るのかとささやかれた。しかし以来、京王プラザに宿泊した客はのべ2900万人、飲食の利用は9200万人、婚礼を挙げた客が3万6000組となり、利用客の総数は1億5000万人を超えた。

50階程度のビルなど珍しくもなくなったが、昭和40年代には、霞が関ビル、世界貿易センタービルに次ぎ日本で三番目の超高層ビルであり、日本初の超高層ホテルだった。現在、霞が関ビル、世界貿易センタービルともに再開発計画の為、建て替えが決まっているため、当時の超高層建築で残るのは「京プラ」のみとなる(※京王プラザホテル発表資料による)。

その代わり…ではないだろうが、この7月よりスイートルームを含む、高層フロアを全面改装。「プレミアグラン」と名付けたクラブフロアに「プレミアグランスイート」を11室、「クラブルーム プレミアグラン」100室を設け、専用の「クラブラウンジ」を備える。つねにかわり続けるハイクラスホテルの姿勢に感心しきり…と思ったところで、ひとつ気づいた。

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専用のクラブラウンジ完成予想図も素敵だが…

私自身、そのバーテンダー・クラスに出席し、自身のバーテンダーとしての才の無さに驚愕し、弊著『【東京】ゆとりを愉しむ至福のBAR』でも取り上げた、「都庁を眺めながら」グラスを傾けることできるスカイバー「ポールスター」が6月いっぱいをもって閉店となる。ポールスターは、ここの45階に位置する。つまり本計画のクラブラウンジに取って変わられることになるのだ。

ありない! と言うのも、ポールスターは、ホテル開業からともに歩むBARであると同時に、現代日本インテリアデザイン界のパイオニア・剣持勇による設計の歴史的BARでもあるからだ。剣持デザインのラタンチェアは、日本産の家具として初めてニューヨーク現代美術館(MoMA)に収蔵されたほど。BARのインテリアは、まさに1970年代の日本のモダンアートを代表する作品そのものだ。

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この夜景も6月30日をもって見納めとなってしまう!

奇遇か運命か。剣持自身は、京プラ開業日の2日前、1971年6月3日にガス自殺でこの世を去っている。余談だがこの日付、一昨日のモハメド・アリと同じ命日ではないか。

そんな歴史的価値にあふれるBARを、部屋の改築などのために失ってよいのか…甚だ疑問である。しかし、BAR評論家が呟いたぐらいでは、その決定が覆されることはないのだろう。

ポールスターの最終営業日は6月30日。それまで足繁く訪れた、歴史あるBARを偲ぶことにしよう。同BARでは、ホテル・バーメンズ協会の重鎮・渡辺一也氏を始め、国際大会で大活躍をみせた高野勝矢氏など歴代の店長たちが思い出の一杯を振る舞ってくれる。ポールスターの「ラストカクテル」プランに前日までに予約された方にはウェルカムシャンパンが付き、「感謝カクテルディナー」は二人でカクテル3杯と料理4品のディナーコースが1万5000円で愉しめる。

それにしても、このBARだけは歴史遺産として永久保存するわけにはいかないのだろうか。永久に失ってしまうには、あまりに惜しい一軒だ。

 


 

たまさぶろ
元CNN 、BAR評論家、エッセイスト
立教大学文学部英米文学科卒。週刊誌、音楽雑誌編集者などを経て渡米。ニューヨーク大学にてジャーナリズム、創作を学ぶ。CNN本社にてChief Director of Sportsとして勤務。帰国後、毎日新聞とマイクロソフトの協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」をプロデュース。日本で初めて既存メディアとウェブメディアの融合を成功させる。これまでに訪れたバーは日本だけで1000軒超。2015年6月、女性バーテンダー讃歌・書籍『麗しきバーテンダーたち』上梓。米同時多発テロ事件以前のニューヨークを題材としたエッセイ『My Lost New York』、2016年1月発売予定。
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