BAR TIMES

2016.03.7 Mon

麗しきバーテンダーたちBAR BLUE
松井利果さん

たまさぶろ 元CNN 、BAR評論家、エッセイスト

あのひとの手から紡ぎ出される至善のカクテルを、今宵も。疲れた夜、打ちひしがれた日、何かいい事があった時、分厚い扉を開けてバーへ足を踏み入れる。彼女たちはどんな時も変わらぬ美しい笑顔で迎え、それぞれの思いを込めた一杯をこちらへ滑らせてくれる。一口ふくむ、何も言う事は無い――。

幅約70センチのカウンターを隔てて、夜ごと客と向き合う女性バーテンダーたちの半生から、酒に寄り添う思い、職業観、目標まで、本音を引き出し紹介。北海道から九州までのバーでシェイカーを振る女性を紹介する。これは、単なるガイドではない。『【東京】ゆとりを愉しむ至福のBAR』の著者が贈る女性バーテンダー讃歌である。

2015年6月1日発売、書籍『麗しきバーテンダーたち』から転載とした。

 


松井利果(まつい・りか)さんのバーテンダー人生のスタートは、決して祝福に満ちていたわけではなかった。私が博多のバーで「次は熊本へ取材に行く」とつぶやいたところ、「松井さんですね」と言い当てられた。それほどまでに九州で名の知られた存在であってもだ。

高校卒業時、飲食業を考える中で見付けたのが、先代の「BAR BLUE」の求人。「女性スタッフ活躍中」の文言が目に付いた。試しにバーを訪れてみると、後に師匠となる女性バーテンダーから「未成年だから、ノンアルコールカクテルを作ってあげる」と「シンデレラ」を振る舞われた。

これが松井さんの人生を決定付けた。凛々しさと格好良さに憧れ、この道を目指すと決意。しかし、先生、両親から猛反対を喰らった。聞くと、師匠も両親に反対され、カクテルコンペで賞を取って理解を得たという。彼女自身も反対にめげずバーテンダーの道へ。「ちょっとお酒を呑んで帰宅すると、『やっぱり、そんな仕事だから酔っ払って帰って来た』と両親に叱られ、初めは大変でした」と苦笑する。

一方、師匠からノウハウを伝授され、日々、腕を磨く。努力が報われたのは、2003年。NBAジュニアカクテルコンペで銀賞受賞。しかも熊本で開かれた全国大会、両親の前で見事に受賞を決めた。

20160307_松井利果さん_記事内
松井利果さん(撮影:斉藤美春)


「始めてから4年経って、やっと認められました」と満面の笑みで振り返る。2010年には台北での「夜戦国際菁英調酒師大会」というコンペで見事チャンピオンに輝いた。

3年前に店を引き継ぎ、現在は店主として活躍。「アルコール度数が高くても、スーッと滑らかに呑める、優しいカクテルをお出しすることができれば」と、女性ならではの探究も忘れない。

半面、結婚、出産などを乗り越え、どうすれば長くキャリアを積み重ねられるか、という女性としての心配事もある。「一度は、世界トップの国際コンペに出場してみたい」と、その麗しく大きな瞳がまだまだ遠くを見据えているからに他ならない。

BAR BLUE(バー・ブルー)熊本県熊本市中央区手取本町3-9 FANビル5F TEL: 096-323-3933
※『麗しきバーテンダーたち』より転載。最新情報については、店舗に連絡を。


たまさぶろ
元CNN 、BAR評論家、エッセイスト
立教大学文学部英米文学科卒。週刊誌、音楽雑誌編集者などを経て渡米。ニューヨーク大学にてジャーナリズム、創作を学ぶ。CNN本社にてChief Director of Sportsとして勤務。帰国後、毎日新聞とマイクロソフトの協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」をプロデュース。日本で初めて既存メディアとウェブメディアの融合を成功させる。これまでに訪れたバーは日本だけで1000軒超。2015年6月、女性バーテンダー讃歌・書籍『麗しきバーテンダーたち』上梓。米同時多発テロ事件以前のニューヨークを題材としたエッセイ『My Lost New York』、2016年1月発売予定。
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