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NEW1600.03.30 Thu

『キウォン』設立者 ブライアン・ドゥ氏によるマスタークラスを開催!韓国初のシングルモルト蒸留所
『KI ONE(キウォン)』の
味わいとビジョンを知る
マスタークラスをレポート

いま、アジアのウイスキーシーンに新しい潮流が生まれている。その象徴ともいえる存在が、韓国初の本格シングルモルト蒸留所が手掛ける『KI ONE(キウォン)』だ。新進の蒸留所にして、権威ある酒類コンペティション「IWSC(インターナショナル ワイン&スピリッツ コンペティション)2025」ワールドウイスキー部門では最高金賞に選ばれ、「SFWSC(サンフランシスコ ワイン&スピリッツ コンペティション)2025」でも高い評価を受けた。2026年3月21日、小諸ウイスキーフェスティバルの会場で、創業者のブライアン・ドゥ氏による特別セミナーが開催された。当日の様子と、世界が注目する『KI ONE(キウォン)』の現在地と未来像をレポートする。

韓国的テロワールを取り入れ、世界的なコンペティションで高評価を獲得

第3回目となる小諸蒸留所ウイスキーフェスティバル当日は、晴れやかな天気に恵まれた。雄大な山々に囲まれた標高約663mに位置する小諸駅を降りると、清々しい空気に包まれる。メインの小諸蒸留所をはじめ、小諸市内の飲食店や特設会場を巻き込み、まち全体が会場となる体験型イベントだ。国内外の蒸留所やインポーターが一堂に会するなかでも、ひと際注目を集めていたのが、韓国初のシングルモルト蒸留所『キウォン』の特別セミナーだ。レクチャーするのは、この日のために来日した創業者のブライアン・ドゥ氏である。

韓国系アメリカ人であるブライアン・ドゥ氏。「韓国にも世界に通用するウイスキー文化を根付かせたい」と、マスターディスティラーに40年以上のキャリアを持つアンドリュー・シャンド 氏を迎え、2018年にキウォン蒸留所を設立。2020年に蒸留を開始した。

ブランド名「KI ONE」には、韓国語で“起源”と“祈願”という二つの意味があり、「韓国初のシングルモルトウイスキーを、世界に広げていきたい」という蒸留所の願いが込められている。蒸留所があるのは、ソウル北東の山間部・南楊州(ナムヤンジュ)。標高の高い盆地特有の気候は、夏は30度を超え、冬は氷点下20度近くまで下がる。極端な寒暖差は、樽の膨張と収縮を大きく促し、原酒と木樽の相互作用を活発化させ、より速く、より深い熟成を進めることができる。“韓国的テロワール”ともいえる気候条件を味方につけているのだ。 製造はスコットランドの伝統的な製法をベースに、ポットスチルによる2回蒸留を採用。熟成にはアメリカンオークやシェリー、ポートやマデイラといった樽だけでなく、韓国らしさが光るボクブンジャ(ブラックラズベリーリキュール)樽や韓国産ニューオーク樽、ソジュ(焼酎)樽などを使い分け、独自のキャラクターを追求している。

そもそも、なぜドゥ氏はウイスキー造りに挑んだのか。

「私がマイクロソフト社で働いていた頃、飲み会をすると、友人たちは『山﨑』や『KAVALAN(カバラン)』といった自国のウイスキーを持ち寄ってくるんです。なぜ韓国にはないのかと聞かれ、『じゃあ、自分で造ろう』と思い立ったのです」

確固とした決意は、早くも結果に現れる。2025年、権威ある酒類コンペティション「IWSC2025」ワールドウイスキー部門で最高金賞を受賞し、「SFWSC2025」では“その他のシングルモルトウイスキー(スコットランド・日本以外)”部門で、「ベスト・オブ・クラス」を受賞。同一年に欧米双方の主要コンペティションでトップ評価を得た初の蒸留所となった。

『キウォン』のシグネチャーウイスキーを味わう

セミナーでは、テイスティングも実施された。現在のコアレンジとなる3種類のウイスキー「TIGER(タイガー)」「EAGLE(イーグル)」「UNICORN(ユニコーン)」に加え、モルトスピリッツをベースにしたジン「JUNG ONE(ジュンウォン)、さらにこの日のために特別なシークレットウイスキーも披露された。ドゥ氏いわく、「私たちはどれだけニューメイクをおいしく造れるかに尽力しています」。グラスに注がれたウイスキーやジンは、さらにそこから韓国らしさや樽の使い方を追求する熟成を経て、思わずため息のこぼれるような味わいに昇華している。シグネチャーシリーズのウイスキーは、単なる熟成年数や樽違いではなく、方向性の異なる個性が設計されている。

「TIGER」は“SWEET & FRUITY”。シェリー樽とワイン樽熟成の原酒をブレンドしたウイスキーで、濃厚な甘さとフルーティーさを持つキウォン独自の風味が広がる。

「EAGLE」は“BOLD & CLASSIC”。アメリカ産の新樽と厳選されたファーストセレクト・バーボン樽から生まれる力強いフレーバーを体現する。ケンタッキー産のバーボン樽とミズーリ産の新しいオーク樽を厳選し、それぞれの樽で熟成させた原酒をブレンド。甘いキャラメルやバニラの複雑で深い味わいが愉しめる。

『UNICORN』は“SMOKY & EARTHY”。スコットランドのピーテッドウイスキーをキウォン蒸留所として表現し、韓国で増え続けている若いウイスキーファンのために造られている。ピーテッドモルトを蒸留に使用し、スモーキーさとスコットランドの霧深い自然の風景を思わせるような土っぽいニュアンスが感じられる。

『KI ONE TIGER(キウォン タイガー)』
シェリー&ワインカスク/46%/700ml/ 香り:熟した果実、ハチミツ、オーク/味わい:クリーミーなカラメル、バタースコッチ、レーズン、ナツメグ/フィニッシュ:リンゴ、プラム、豊かなオーク感、バタースコッチ、オリエンタルスパイ

『KI ONE EAGLE(キウォン イーグル)』
ニューオーク&バーボンカスク/43%/700ml/ 香り:豊かなオーク、キャラメル/味わい:バニラ、ナツメグ、バナナ、レーズン/フィニッシュ:後引くオークとペッパーのニュアンス、シナモン

『KI ONE UNICORN(キウォン ユニコーン)』
「IWSC2025」ワールドウイスキー部門 最高金賞を受賞。ニューオーク&バーボンカスク/46%/700ml/ 香り:秋の落ち葉、スモーク感/味わい:オレンジ、オリエンタルなスパイス/フィニッシュ:はっきりとしたオーク感、ハチミツ、プラム

“シングルモルトジン”という新境地

韓国産ボタニカルを使用したジン『JUNG ONE(ジュンウォン)』も展開している。グレーンなどの雑穀を一切使用せず、モルトのみを使用。蒸留所で造られた高品質のモルトスピリッツのみをベースとし、“シングルモルトジン”という新境地を拓く。

『JUNG ONE(ジュンウォン)』は韓国語で「庭園」を意味。ジュニパーベリー、コリアンダーシード、シナモン、オレンジピールといったジンの伝統的な原料に加えて、エゴマの葉、韓国の山椒、若い高麗人参、そして蒸溜所の近くにある松の木から手摘みした葉などの地元ボタニカルも使用しています。(左)『JUNG ONE』/46%/700ml (右)『JUNG ONE BARREL AGED』/46.5%/700ml

会場を沸かせた“唐辛子樽”の実験的ウイスキー

さらに会場を沸かせたのが、この日のシークレットウイスキーだ。世界初の“唐辛子樽”という発想を実現した限定ウイスキー『Red Pepper Cask(レッド ペッパー カスク)』が登場!韓国系アメリカ人の著名シェフ、エドワード・リー氏と共同開発し、韓国の食文化に欠かせない唐辛子の辛味をウイスキーに落とし込んでいる。口に含むと目が覚めるような鮮烈な辛味が広がる!会場がどよめく。かつてないユニークさである。

「韓国産の唐辛子で2カ月ほどシーズニングした樽で再熟成しています。フレーバードではなく、樽そのものに辛味をしみ込ませることで、ウイスキーの骨格を保つことができます。韓国料理とのペアリングも想定した実験的なウイスキーです。カクテルなら、ブラッディメアリーに混ぜたり、ウイスキーサワーにしてもおいしいと思います」

唯一無二の『レッドペッパーカスク』は、わずか1500本という生産量で、2025年末にリリースとほぼ同時に完売した。

「近年、韓国ではアルコールの愉しみ方が量より質へと変化しています。その流れのなかで『キウォン』がウイスキー文化を根付かせることを願っています。日本の皆さんにも親しんでもらえたらうれしいですね」

ドゥ氏の言葉とともにセミナーは閉会。参加者たちは、新たなウイスキーの可能性に触れた静かな興奮とともに会場を後にした。

Brian Do(ブライアン・ドゥ)
「Ki One Whisky Distillery (旧:Three Societies Distillery)」創業者、CEO。米国生まれ、韓国にルーツを持つ。Microsoft やPR会社などでキャリアを積む。2013年クラフトビール会社を創業し、韓国クラフトビールの黎明期を牽引。韓国初のクラフトシングルモルトウイスキー蒸留所として新たなカテゴリーを切り拓いている。


問い合わせ先:伊藤忠食品株式会社
フリーダイヤル:0120-747-477 (10時~17時 *土日祝を除く)


インタビュー・文 沼由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『EST! カクテルブック』『読本 本格焼酎。』『江戸呑み 江戸の“つまみ”と晩酌のお楽しみ』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。

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