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バーをこよなく愛すバーファンのための WEB マガジン

2023.04.25 Tue

歴史と文化が宿る文京区、匠の居るBAR「愉しい場になるよう、居心地のよさを大切に」

井上晃次さん(BAR Inoue/白山)
PR:サントリー

確かな技術と比類なき職人魂が深い味わいを織りなすクラフトウイスキー、ザ・バルヴェニー。「ザ・バルヴェニー クラフトマンシップ プロジェクト」では、ザ・バルヴェニーを味わうのにふさわしい専用オリジナルグラスを日本の伝統工芸士、東京銀器の笠原宗峰氏が手掛けた。笠原氏が工房を構える東京都文京区は、日本有数の文教地区であり、東京銀器や東京籐などの伝統工芸が息づき、歴史的建造物が残る歴史と文化に彩られる街。そして、実は良質なバーが点在するエリアでもある。プロジェクトの最終章として、ウイスキーの豊富な知識と確かな技術を持つ4軒のバーを探訪。ウイスキーをいっそう味わい深く提供する“匠”の流儀を識(し)る。

口伝えで広がる隠れ家バーは「堅苦しくなく、居心地よく」 

白山駅からほど近く、懐かしい雰囲気を残す京華通り商店街に、静かに明かりを灯すバーがある。2020年に開店し、目立った看板は出さず、近隣の飲食店による紹介や訪れたお客の口コミで広がってきた。

オーナーバーテンダーの井上晃次さんは、自身の店を構えるまでに20種類以上の職種を経験。飲食業をはじめ刑務所の看守や郵便配達員まで、ジャンルもバラバラな数々の職業のなかで、もっともやりがいを感じたのがバーテンダーだった。
 
独立に際し、自身が好きな街の浅草で物件を探していたが、文京区白山にある現在の物件に出合い、即決したという。

「もともとはワインバーだった空間で、自分がやるべきバーが瞬時にイメージできました。30代、40代のお客様が多く、会社の経営者や金融関係の方、製薬会社の方、大学の教授や学生など落ち着いた雰囲気でお酒を愉しまれるお客様に恵まれています。堅苦しくなく、リラックスできる居心地のいいバーであるよう努めています」 


入り口は通りから少し奥まった路地にあり、知る人ぞ知るロケーション。

この1本に込められた職人技を想うと、あらためていいウイスキーだと感じる

井上さんは、ザ・バルヴェニーの存在をこんな風にとらえている。

「ウイスキー好きなら知っている上質なブランドです。癖が強すぎず、ウイスキーを飲みなれていない方にもお薦めしやすいですね。バーボン樽を主体に熟成させた甘い樽香や少しトロピカルな味わいがありながら、姉妹蒸溜所のグレンフィディックと比べてもボディがしっかりしています。香りや味がわかりやすいトワイスアップで味わってみてはいかがでしょう。ストレート、ロックはもちろん、ソーダ割りにしても薄まる感じがせず、爽快に飲めます」

味わいのみならず、ザ・バルヴェニーが大切にしている伝統や文化も井上さんを惹き付ける。その代表的なものが、5つの職人技である。

蒸溜所周辺の地元農家と大麦を生産し、伝統的なフロアモルティングを守り、蒸溜機のメンテナンスなどをする銅器職人(コッパー)が常駐。そして、ハイランドで唯一、樽職人(クーパー)を専属で雇用している。それらを総括するかのような、後熟を開発したモルトマスター・ディビッド・C・スチュワートと次期モルトマスターであるケルシー・マッケニーの存在があり、香りと味わいの一貫性を保持している。

「コッパーが常駐していたり、もう他の蒸溜所では見られなくなってきたフロアモルティングを続けている点がすばらしいですね。その伝統を守り続けていることに意味がある。造りやモルトマスターの存在に思いを馳せて飲んでみると、あらためていいウイスキーだなと感じ入ります。プロフェッショナルな技が集約したウイスキーが自分の店にある、ということがうれしいですね」


「BAR Inoue」オーナーバーテンダーの井上晃次さん。20種以上の職種を経験。話題は尽きない。


店内の雰囲気にになじむ、ザ・バルヴェニーに欠かせない要素をモチーフにした壁掛け。

カウンタ―には、小さな木樽に詰めたザ・バルヴェニーが。ここから注いで提供することも可能だ。

「清潔さや匂いに気を配り、香りが移らないようメジャーカップは都度洗います」

ザ・バルヴェニーの注文が入ったら、オリジナルグラスに注いで提供する。文京区に工房を構える東京銀器の伝統工芸士、笠原宗峰さんがひとつひとつ手作業で打ち出した純銀製の銀器だ。 

「初めて手にした時、普段使っているグラスとはまったく違う重みを感じました。よく見ると、グラスの底面に掘ってある『純銀』の文字も1個ずつ違いがあって手仕事のぬくもりを感じます。実際にこのグラスで飲んでみると、唇がフィットしてすごくいい。銀の質感のせいでしょうか。伝導率がとても高く、ソーダ割りを入れたタンブラーはその冷たさに驚きました。お客様もその点に非常に盛り上がって、次々に注文が連鎖するということもよくありますね(笑)」

日々の掃除に心を尽くす井上さん。それはお客の目につくところばかりではない。

「ビールのサーバーの清掃も毎日必ず行いますし、メジャーカップは使った都度必ず洗います。水の入ったグラスなどに浸けて別のカクテルをつくるバーテンダーも多いですが、香りが移ってしまう可能性がありますから」

やりがいは、「お客様にとってここが愉しい場になること。そしてもう一度訪れてくださることです」。
小さな心配りを重ね、居心地のよさを大切に、今夜も飄々とにこやかにお客を出迎える。


東京銀器の伝統工芸士、笠原宗峰さんによる純銀製のザ・バルヴェニーオリジナルグラス3種。


店内の清潔感はもちろん、香りにも配慮する井上さん。

グラスの丸い形に合った丸氷を入れてロックを提供。熱伝導が高く、持つ手にすぐその冷たさが伝わる。



井上晃次さん(いのうえ こうじ)
「BAR Inoue」オーナーバーテンダー。高校卒業後、銀座のビアホール「銀座ライオン」のホールスタッフ、刑務官、コンビニエンスストア店員、ホテルの配膳係、郵便配達員、立ち食い蕎麦店、洋服販売員など20種以上の職種を経験する。その中でも、23歳から2年務めた千葉県船橋のオーセンティックバー「ブルーカナリア」での経験が大きな影響を及ぼす。「東京ディズニーシー」内のラウンジや、都内高層マンションの住民専用バーを経て、2020年、自身の店を開店。

 
インタビュー・文 沼由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『読本 本格焼酎。』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。



   

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