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NEW2022.12.9 Fri

ジョニーウォーカー ブラックラベル 12年 スペシャルトークセッション(後編)ブラックラベルにレシピなし
100年続く香味の継承はブレンド力にある

グローバル ブランド アンバサダー ティム・フィリップス × 夜香木 木場進哉 × LEAP BAR 中山理紗

ジョニーウォーカー グローバル ブランド アンバサダーであり、ワールドクラス 2012の覇者、ティム・フィリップス氏とワールドクラス2021 日本代表の木場進哉さん(夜香木/熊本市)、ワールドクラス2022 ファイナリスト中山理紗さん(LEAP BAR/千代田区神田)によるスペシャルトークセッションが開催されました。ティム氏が拠点とするアムステルダムと、ディアジオジャパンの本社がある六本木をオンラインでつなぎ、グローバルなスタイルのトークセッションが実現。後編では後編ではジョニーウォーカー ブラックラベル 12年の歴史や味わい、そして今後のブランドとしてのあるべき姿などを語り合っていただきました。

レシピのない味わいを継承し続ける。
それがジョニーウォーカーのブレンダーの使命
[前編の続き]

編集部:今回はブラックラベルの味わいをテーマにみなさんでお話いただきたいと思います。

木 場:ブラックラベルは100年を超える歴史がありますが、発売当初から変わらない味わいや香りの特徴はありますか。

ティム:とてもいい質問ですね。ブラックラベルをはじめとしたジョニーウォーカーの商品には、どのような穀類や麦芽を使い、どんな原酒を合わせるかというレシピが存在しません。ですから、創業者であるジョン・ウォーカーのつくった味わいや香りの特徴に極力近づけていくしかないんです。それが7代続くブレンダーの使命と言えるでしょうね。

編集部:ジョニーウォーカーのブランド自体、約200年の歴史がありますが、それはすごいことですね。

ティム:そうですね。ここで少しジョニーウォーカーの歴史について触れてみいたいと思います。ジョニーウォーカーは1820年、ジョン・ウォーカーによって生み出されました。彼は当時品質が安定していなかったウイスキーをブレンドすることで高品質で安定供給が可能なウイスキーを開発したのです。その後、息子のアレキサンダーが引き継ぐと、初となるウイスキーの大量生産に取り組みました。「オールド・ハイランドウイスキー」と名付けられたウイスキーは、海を渡り様々な国で愛されるようになりました。そして1909年、二人の息子に代を譲ると、すでに人気のあった「オールド・ハイランドウイスキー」と「エクストラ オールド・ハイランドウイスキー」をそれぞれ「ジョニーウォーカー レッドラベル」「ジョニーウォーカー ブラックラベル」と名付け、今に至っています。ですから、ブラックラベルは約100年前の味わいと香りが受け継がれていることになります。


1820年創業当時の様子。創業者ジョン・ウォーカーは食料雑貨店を開き、そこでブレンドしたウイスキーを販売。瞬く間に高い評価を得たといいます。

中 山:実際に比較してみたくなりますね。

ティム:ここに古いブラックラベルがあるので比較してみましょう。このボトルは1971年にボトリングされて、イタリアの免税店で出回っていたものを私が入手しました。50年前のブラックラベルです。アルコール度数は今よりも少し高めの43%。では、まず現在のブラックラベルの香りから。(香りを嗅いで)キャラメライズされたバニラとスモーキーさをすぐに感じますね。では次に50年前のブラックラベル。(香りを嗅いで)うん、今のブラックラベルに通じるバニラ香と少し焦がしたカラメル、スモークは少し優しい印象です。

木 場:やはり昔のものと同じ香味にするのは難しいのでしょうか。

ティム:この差についてブレンダーに聞いてみたのですが、50年も経過すれば瓶の中であっても一定の鋭さや明るさは落ち着くと言っていました。それよりももっと注目すべきは、使われている原酒が今とまったく違うにもかかわらず、香味がほとんど変わらないことです。と言うのも、ブラックラベルの原酒の熟成にバーボンで使用したアメリカンオーク樽を使っていますが、昔はバーボンをつくる際の原料の割合や、樽の内側を焦がした新樽で2年以上熟成させるといった今のような規定がなく、正式な製法が定義されたのは1964年になってからです。それ以前の樽は物によって全く状態が異なるため、当然ウイスキーの熟成にも影響を及ぼします。また、第二次世界大戦後は、シェリーを寝かせたヨーロピアンオーク樽がヨーロッパから多く入ってきました。

アメリカンオークとヨーロピアンオークでは木の性質が違うので、当然熟成させるウイスキーの味わいも異なります。現在とはまったく状況が違っても、香りを確かめると間違いなくブラックラベルだと分かる、これは本当にすごいことだと思うんです。


ジョニーウォーカー ブラックラベルの特徴的な香りを確かめる中山さん。


現在のブラックラベルと1971年にボトリングされたブラックラベルの香味を比較するティム氏。

木 場:ブレンダーの技術に改めて驚かされます。ティムさんは、今のブラックラベルが持つ魅力は何だと考えますか。

ティム:やはり12年という長期熟成によるオークの香りが印象的ですね。その中にクランベリージャムのような果実感とキャラメライズされたバニラがとても伝わってきます。その味わいを下支えするようにスモーキーさを感じます。このスモークはジョニーウォーカー全てに共通する香りです。口に含むと、キーモルトであるスペイサイドのカーデュとハイランドのクライヌリッシュには薫香がない代わりに、洋ナシやパイナップルの皮を思わせるトロピカルさを感じます。またフィニッシュには、ソフトスパイスのジンジャー、ナツメグ、クローブのスパイス感を感じます。ブラックラベルは世界でも突出したバランスの良いウイスキーだと思います。

木 場:確かにアメリカンオーク樽由来のバニラに似た香りと、スモーキーな香りが立ってきますね。(口に含む)明るいトロピカルさも感じます。

中 山:とっても美味しいです。この香味が100年受け継がれてきて、しかもそれがブレンダーの味覚や嗅覚、技術によって再現されているなんて驚いてしまいます。


ブラックラベルに隠れている香りを一つひとつ確かめながら味わう木場さん。

出身地オーストラリアの文化を表現。
ティム氏がワールドクラスで披露した
“電子レンジパンチ”とは

編集部:ここからはティムさん自身についてお聞きしたいと思います。ティムさんはジョニーウォーカーのグローバルアンバサダーに就任されていますが、実際にはどのような活動をされているのですか。

ティム:私がいるアムステルダムには、グローバルマッティングチームのオフィスがあります。例えば、世界各地のアンバサダーへ情報を発信したり、逆に各アンバサダーからの問い合わせがあれば関係各所に連絡をとり返答するといった調整を行っています。また、ブレンディングチームはスコットランドのオフィスにいるので、絶えずヒヤリングをして新しい商品の情報などを交換しています。もうひとつ、世界各地にアンバサダーがいるので、どんなお酒がどんな場所で、カクテルとしてどんな風に飲まれているのか、情報交換をしながら世界のトレンドを把握し、ジョニーウォーカーのブランド推進に役立てていくことも私の仕事です。

木 場:私もバーテンダーなのでとても興味があるのですが、ティムさんが過去につくったブラックラベルのカクテルについて教えてください。

ティム:2012年のワールドクラスでつくったカクテルに、ブラックラベルをベースにしたホットウイスキートディがあります。その名の通りウイスキーを温めたホットドリンクで、メースやシナモン、五香粉などのスパイスにドライフルーツとオーガニックハニー、紅茶を加え、ブラックラベルとゴールドラベルに合わせました。それをワインでよく見かけるバッグインボックスに入れて、火にかけるのではなく電子レンジで温めました。8〜10名のゲストに手際よくサーブできる、いわゆる“電子レンジパンチ”です。

編集部:ホットドリンクに電子レンジを使うとは驚きました。かなり斬新な発想ですね(笑)。

ティム:オーストラリア出身の私にとって、国の文化を伝えるためにどのようなカクテルでどのような手法が良いかと考えた時に浮かんだんです。オーストラリアはボックスワインの発祥であり、また、電子レンジの発明にオーストラリア人が関わっていたということもあって、それをワールドクラスという大きな舞台でアピールしました。その奇抜なアイデアで優勝できたのかもしれませんね(笑)。


ワールドクラス2012で優勝した際の様子。

この先200年続いていくブランドであるために
“畑からグラスまで”ブランド全体として
徹底したサステナビリティを実行

編集部:トークセッションも終盤となりましたが、「これからのジョニーウォーカー」をテーマにお話を進めたいと思います。中山さんからご質問をお願いします。

中 山:世界的に健康への意識が高まっている昨今、ジョニーウォーカーとしてローアルコールやノンアルコール市場についてどのようにお考えですか。

ティム:私自身もアルコールや糖分、肉類、加工食品を少し抑える傾向にあり、それは多くの人が考えていることだと思います。ただ、ジョニーウォーカーがノンアルコールになることはありえないので、飲み方を工夫するべきだと考えます。例えば、ジントニックやブラッディメアリー、キューバリブレといったホワイトスピリッツのカクテルのように、スコッチにはジンジャーエールがとても合いますし、炭酸水で割っても美味しく楽しめます。割ることでウイスキー本来の味わいが損なわれることはなく、中でも非常にバランスが良く、豊かな味わいを持つジョニーウォーカーであればなおさらです。自分に合ったドリンクベターを見つけるのがいいと思います。

木 場:これから先もジョニーウォーカーが存続するために何が必要だと思いますか。

ティム:「前進し続ける」というジョニーウォーカーが掲げるメッセージ「KEEP WALKING」は、ここ30年間変わっていません。そのメッセージ通り、200年続いたブランドをこの先も200年続けていくために我々はどう進歩しなくてはならないのか、真剣に取り組んでいます。実は2030年までかなり具体的な計画を進めていて、ジョニーウォーカーではウイスキーの全製造工程をネットゼロカーボンとし、すべての蒸溜所で100%再生エネルギーの使用を目指しています。また、梱包に使用される材料はすべてリサイクル、再利用、または堆肥化が可能なものとします。

木 場:かなり思い切った計画ですね。

ティム:今の時代、無駄を省いていくことは自然の流れだと思っています。他にもウイスキーをつくる上で水はもっとも大切な資源ですが、品質を保ちながら製造工程で使用する水を20%削減することを目標にしています。また、ガラスボトルのリサイクルはもちろん、軽量化を図ることで二酸化炭素の排出量を軽減していきます。ゆくゆくは紙製の再生可能スピリッツボトルでウイスキーを楽しめるように進めています。50年先、もしかするとガラスボトルがめずらしくなる、そんな時代がくるかもしれません。私たちは畑からグラスまで、より少ないことはより豊かなことと考えているんです。

中 山:なぜそこまでサステナビリティを徹底するのですか。

ティム:我々はアルコール飲料の世界的リーダーとして率先しなければならないと考えているからです。この先、ウイスキーづくりが地球を痛めつけるものであってはならないし、いつまでも美味しいウイスキーを提供できるよう今から取り組む必要があります。我々が活動することによって他のウイスキーブランドも後に続き、業界全体でサステナビリティに貢献できれば素晴らしいことだと思っています。

編集部:ジョニーウォーカーが掲げる「KEEP WALKING」のメッセージ通り、ジョニーウォーカーは常に前に進み、そして前向きな気持ちで歩む人を応援するブランドだということがよく分かりました。ティムさん、木場さん、中山さん、本日はどうもありがとうございました。


ジョニーウォーカーが掲げるサステナビリティについての詳しい内容はこちらからご覧いただけます。
https://www.johnniewalker.com/ja-jp/next_step/


TIM PHILIPS (ティム・フィリップス)


オーストラリア メルボルン出身。ブラックパール(メルボルン)、ミルク&ハニー(ロンドンとニューヨーク)、クラブハウス(フランス)など、世界中の有名バーで腕を磨き、バーテンダーとしてのキャリアは20年以上。オーストラリアのカクテルバー・オブ・ザ・イヤーを4度受賞する他、イギリス・バーテンダー・オブ・ザ・イヤー(2011年)、オーストラリア・バーテンダー・オブ・ザ・イヤー (2011年, 2012年)、 ディアジオ ワールドクラス優勝 (2012年) など数々の賞を獲得。また、世界のベストバー50に5度も選ばれた「Bulletin Place」や、レストラン「Dead Ringer」の創設者でもある。2021年、ジョニーウォーカー グローバル ブランド アンバサダーに就任。

木場 進哉(こば しんや)


1985年生まれ、熊本県長洲町出身。高校卒業後に酒屋でアルバイトを始め、その後、熊本市内でバーテンダーとしてのキャリアをスタート。22歳で上京し、「リゴレット」のバーに立つ。その後、29歳でシンガポールに渡り、スピークイージーの「CACHÉ」(現在は閉店)にて活躍。2019年に帰国し、2020年1月に「夜香木」をオープン。築約150年の旅館を改装し、2Fには姉妹店の和食「瑠璃庵」がある。
2021年World Class Japan Bartender of the year に輝く。

中山 理紗(なかやま りさ)


1986年生まれ、福岡県筑後市出身。建築学科を卒業後、建築設計事務所、建築系コンサルタント、アーユルヴェーダセラピスト等の職業を経て、2021年に株式会社オーチャードナイトに入社、バーテンダーのキャリアをスタート。2022年ディアジオ ワールドクラス ジャパンファイナル出場。シグネチャーカクテルはアーユルヴェーダとお酒を組み合わせ「心と体に優しいカクテル」をテーマにした「totonoe」。

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