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2022.10.20 Thu

日本初上陸!イスラエル初のシングルモルトウイスキーを語り合うイスラエルウイスキーの実力とは?

静谷和典(マスター・オブ・ウイスキー)× 渡辺剛博(株式会社サイズ代表取締役)

2022年8月、イスラエル初のウイスキー蒸留所「THE M&H」の製品が日本初上陸した。シングルモルトウイスキー、樽熟成ジン(全5アイテム)の限定販売では、瞬く間に予定数量が完売した。第2弾となる 2022年10月27日、死海熟成や日本限定シングルカスクの販売を控え、あらためてその特徴や味わいを、マスター・オブ・ウイスキーの静谷和典さんと輸入元・株式会社サイズの渡辺剛博さんが対談する。

年間300日以上が晴天という暑さと海沿いという環境が、ウイスキーを急速に、しかし優雅に熟成させます(渡辺)

静谷 イスラエル初のウイスキー蒸留所「THE M&H」が設立したのは2012年、蒸留開始は2014年のことですね。どんな特徴があるのでしょうか?
渡辺 ええ。台湾の「カバランウイスキー蒸留所」をはじめ、数々の新規蒸留所を成功に導いた故ジム・スワン博士をアドバイザーに迎えて設立しました。年間300日以上が晴天という地中海の気候がもたらす暑さと、海沿いという開放的な環境がウイスキーを急速に、しかし優雅に熟成させます。STR樽(※1)やイスラエル産赤ワインといった特徴のある樽を使ったり、死海での熟成を試みなど、日々新しい挑戦を続けています。
静谷 ウイスキーのラベルに牛と蜂を合わせたマークが描かれていますね。
渡辺 蒸留所名は「Milk & Honey」の略です。イスラエルは旧約聖書に記載された乳と蜜の流れる肥沃な大地「約束の地」とされ、イスラエルという国そのものを象徴します。


(※1)STR樽……シェービング(Shaving)、トースティング(Toasting)、リチャーリング(Re-Charring)という3つの工程を経た特別な樽。手作業のリチャーSTR手法は2006年、台湾「カバランウイスキー蒸留所」と故ジム・スワン博士によって開発された。ワイン樽熟成に付き物の酸味を除き、台湾の亜熱帯気候で可能な風味のコクを深める狙いがあった。

渡辺剛博(わたなべたかひろ)
CPUクーラーといった冷却系アイテムをはじめ、PCケースや小物パーツまでパソコンまわりの製品を幅広く取り扱うメーカー兼商社である株式会社サイズの代表取締役。2003年に創業してオリジナル商品をつくりはじめ、2008年にサイズを設立。長年の貿易・卸売・代理店業務のノウハウを生かし、2022年夏より「サイズ酒販」の看板を掲げ、イスラエル初のウイスキー蒸留所「THE M&H」のウイスキーの輸入を始動。

静谷和典(しずや かずのり)
新宿三丁目「BAR LIVET」「BAR 新宿ウイスキーサロン」オーナーバーテンダー。ウイスキーベースのカクテルの開発・普及も目指す。「CT Spirits Japan カクテルコンペティション2021」にてシングルモルトを使用した“ウイスクテイル”(ウイスキーをベースとしたカクテル)にてカクテル日本チャンピオンに輝く。ウイスキー文化研究所が主宰する知識、鑑定能力を問う資格認定制度の最難関「マスター・オブ・ウイスキー」を取得しており、雑誌『Whisky Galore』のテイスターとしても活動中。2022年秋には、ウイスキーをストレートで愉しむためのグラス「ウイスキーグラス 咲」を開発。「バーテンダーしずたにえん」として、TikTokやYouTube、 SNS でも幅広く活躍する。

酒販業界の未経験の渡辺さんと“ミルクアンドハニー”の出会いは、まさにミラクル!(静谷)

静谷 パソコン業界にいる渡辺さんが、なぜまたウイスキーを輸入することになったのでしょうか?
渡辺 コロナで外飲みができなくなって夜を持て余すなか、ふとウイスキーを買ってみたらはまってしまいました。250本は買ったでしょうか。僕の中ではひさしぶりにオタク魂に火が付いてしまい、とにかく実際に飲んで経験値を上げようと。
静谷 イスラエルのウイスキーとはどうやって出会ったのですか?
渡辺 日本に流通していないものや入手困難なものも飲んでみたくなり、最初は海外のオンラインショップから購入してみました。海外ショップで気になったブランドや商品を検索していくと、意外な国だったり新しく設立された蒸留所のものが目につき始めました。ある日突然、このイスラエルの“ミルクアンドハニー”という銘柄が目に飛び込んできて、試しに買ってみたのです。
静谷 最初の印象は?
渡辺 完成度が高いと感じました。同じように海外の新設蒸留所のものをいくつか買ってみましたが、若い、薄いと感じることが多かったんです。でもこれは明らかに違った。味の奥行きがあり、アルコールのアタックの強さがすごくまとまっていて「そつがない」とも感じました。ビジネスでウイスキーを扱ってみたいと考え始めていた頃で、“ミルクアンドハニー”を飲んだ数日後には蒸留所に問い合わせしました。
静谷 ええ~!(驚) そのフットワークの軽さは、渡辺さんが輸入業をやられてたゆえでしょうか。
渡辺 パソコンの部品かウイスキーか、扱う商品が変わるだけで大きな差はありません。パソコン業界はすでに成熟した業界で、ダイナミックな成長はありません。僕のいる地平からウイスキー業界を見ると、国内でも世界的にも、今、ありえないくらい盛り上がっている。とてもエキサイティングで、その熱さは今しか立ち会えないと感じたんです。彼らが酒販業界の経験のまったくない会社と取引してくれるとは思っていませんでした。メールの自己紹介は正直に書きました。アルコール業界の経験ゼロ。でも、やりたいんだと。そうしたら、次の日返事が来て、こうありました。「われわれも君のような人と仕事がしたい。志があって、自分たちのウイスキーに共感してくれる人と仕事をしたいと思っていたんだ」。
静谷 まさにミラクルな出会いでしたね!

樽の持ち味がすごく上手に生かされていて、若いのにすべてが平均点越えしている!(静谷)

静谷 最初はイスラエルと聞いて驚きましたね。でも今では、台湾の「カバランウイスキー蒸留所」ができたあたりから、インドしかり、いわゆる五大ウイスキー以外の蒸留所が台頭していて、タスマニア、スウェーデン、フランス……と、もはや全世界で造っているので納得できましたね。実際、すでにリリースされている5種をテイスティングしてみると、全部が全部うまくいくわけないでしょと思いながらも(笑)、すべてに樽の持ち味がすごく上手に生かされていました。若いにも関わらず、すべてが平均点越えをしている!という印象です。まろやかで角がなく、クリーミー。新しい蒸留所というと未成熟香がしそうなのに、それがなくシルキーな味わいが全体的に感じられました。
さっそくひとつずつ見てみましょう。


M&Hオーク樽熟成ジン
静谷 ここまで色が付いたジンは珍しく、樽熟されているにも関わらずジュニパーベリーの清涼感が鮮烈に広がります。サワークリームやラムネのような感じもしますね。
渡辺 最大の特徴は、ベーススピリッツがすべてモルトということです。樽はSTR。僕は、ロンドンドライジンはストレートで飲めないのですが、これは飲めますね。
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M&H Elements Sherry Cask
渡辺 オロロソシェリー樽およびペドロ・ヒメネスシェリー樽で熟成した原酒をバッティングしたものです。樽の個性を追求するM&Hシングルモルトウイスキーのコアレンジ商品です。
静谷 クリーミーさの中に酸を感じます。いい塩梅のシャープさもありますね。黒いレーズンというよりは、青みがかったレーズンのニュアンス。スペイサイドにも似た方向性なのですが、気候のせいなのか、どこか温かさも感じます。時間が経つと、カスタードクリームのようなニュアンスも出てきます。
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M&H Elements Red wine Cask
静谷 ワインの香りをしっかり拾えます。先のシェリー樽熟成以上のサワー感も感じる一方で、モルト感もしっかりある。名前が「ミルクアンドハニー」で「ワイン樽熟成」となると、ウイスキーを倦厭しがちな女性の方にも興味をもっていただけそうです。時間が経つとベリーソースや、ベイクドのベリータルトのようなニュアンスが出てきます。
渡辺 イスラエルは実はワインの生産が盛んで、キリストが最後の晩餐で飲んだワインもイスラエル産と言われていますよ。イスラエル国内の、テロワールにこだわったワイナリーの赤ワイン樽で熟成された原酒を使っています。ウイスキーに触れてもらえるきっかけになりそうな1本です。
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M&H Elements Peated
静谷 ピート麦芽を使うのではなく、ピートの効いた樽での熟成なので、そこまでピート感は強くないですね。心地いいスモーキーさ。煙の要素が下支えしていることで、むしろ甘さが引き立っています。焼き立てのハニートーストをイメージしてしまいます。
渡辺 アイラ島の蒸溜所で使用されたピートの効いた樽およびバーボン樽で熟成しています。軽やかなので、ピートにトライしてみたいという方にもお薦めです。
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M&H Classic
渡辺 バーボン樽およびSTR樽で熟成された原酒をバッティング。ライトでバランスの取れた「M&H」シングルモルトウイスキーのエントリー商品です。
静谷 オレンジや温州ミカンのように温かみがあって甘い柑橘のニュアンスを感じます。アップルミントのような清涼感とフルーティ感も醸し出していますね。アップルの要素もあって、焼きりんごのような感じもしますし、スワリングをすることでビスケットやバニラビーンズ、カステラの焼き目のようなトースティ感も感じられます。
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10月27日に発売する新商品、死海熟成や日本限定シングルカスクの全4種のテイスティングは後編をご覧ください。後編はこちら


インタビュー・文 沼由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『読本 本格焼酎。』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。

   

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