BAR TIMES

2016.06.7 Tue

麗しきバーテンダーたち1と8
岡本 梓さん

たまさぶろ 元CNN 、BAR評論家、エッセイスト

あのひとの手から紡ぎ出される至善のカクテルを、今宵も。疲れた夜、打ちひしがれた日、何かいい事があった時、分厚い扉を開けてバーへ足を踏み入れる。彼女たちはどんな時も変わらぬ美しい笑顔で迎え、それぞれの思いを込めた一杯をこちらへ滑らせてくれる。一口ふくむ、何も言う事は無い――。

幅約70センチのカウンターを隔てて、夜ごと客と向き合う女性バーテンダーたちの半生から、酒に寄り添う思い、職業観、目標まで、本音を引き出し紹介。北海道から九州までのバーでシェイカーを振る女性を紹介する。これは、単なるガイドではない。 「【東京】ゆとりを愉しむ至福のBAR」の著者が贈る女性バーテンダー讃歌である。

この度、書籍『麗しきバーテンダーたち』発売一周年を記念し、電子書籍版から転載とした。

 


岡本梓(おかもと・あずさ)さんはバーテンダーではなくソムリエである。月島の「1と8」は、1階で和食を提供し、2階のワインバーを彼女が切り盛りしている。しかし、このバーでは、「サントリー山崎1984」を呑める。そして、私は彼女が白州と山崎プレミアムソーダで作るハイボールに魅せられ、この企画に無理やりねじ込んだのだ。

彼女は、そもそもワイン以外を店で扱うつもりはなかった。だが、客のニーズに合わせ、ウイスキーを置くことに。店の「1984」は、オーナーが故・佐治敬三氏から直接受け取った代物だ。彼女のハイボールの味わいからすると、ぜひシェイカーを握ってもらいたいと勧めるのだが、「遠慮しておきます」の一言で、私はまた白州のソーダ割りを呑むのである。

福島の役所に勤めていたところ、22歳の時に一念発起。ワインに携わるため、職を辞し、東京へ。1999年10月からフランスへと渡り、リヨン、ストラスブール、ボルドーを巡る。2004年には再びビザを取得し、東部のアルボワにあるジャン・マルク・ブリニョで、有機ワイン作りに精を出した。「人力で押し、ブドウをつぶし、昔ながらの製法だったので、体力勝負でした。ワイン作りは、本当に農業なんだなと身をもって経験しました」と微笑む。

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岡本 梓さん(撮影:斉藤美春)

帰国後「1と8」に。10年後には店を持ちたい、とおぼろげながら考えているが、小さい規模のオーベルジュも選択肢の一つという。

バーテンダーについて尋ねると「想像力が必要で、クリエイティブ。自分が思い付いたものを創り出す喜びがある。憧れますが、ソムリエだけでも精一杯で、そこの領域に行くのは、今の私には難しい」と賛辞を惜しまない。同じ女性として、「女性バーテンダーという存在は、非常に心強い。自分自身も負けないよう成長しなければ」と気を引き締める。

帰り際にまた、彼女のハイボールを2杯ほど空け、店の急な階段を転げ落ちそうになりながら、私は家路へ着くのだった。

1と8(いちとはち)
東京都中央区月島3-8-8 TEL:03-3536-1815
※※掲載情報は2011年取材時のもの。最新情報については、店舗に連絡を。


たまさぶろ
元CNN 、BAR評論家、エッセイスト
立教大学文学部英米文学科卒。週刊誌、音楽雑誌編集者などを経て渡米。ニューヨーク大学にてジャーナリズム、創作を学ぶ。CNN本社にてChief Director of Sportsとして勤務。帰国後、毎日新聞とマイクロソフトの協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」をプロデュース。日本で初めて既存メディアとウェブメディアの融合を成功させる。これまでに訪れたバーは日本だけで1000軒超。2015年6月、女性バーテンダー讃歌・書籍『麗しきバーテンダーたち』上梓。米同時多発テロ事件以前のニューヨークを題材としたエッセイ『My Lost New York』、2016年1月発売予定。
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