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「The SHOCHU NAVIGATION」をレポートプロフェッショナルを対象とした初の
本格焼酎・泡盛マスタークラスを開催
主催:日本酒造組合中央会日本産酒類最大の団体・日本酒造組合中央会はバーテンダーを対象としたプロフェッショナル向けのセミナー「The SHOCHU NAVIGATION」を開催。沖縄・那覇を皮切りに、福岡・博多、東京・八重洲の3都市で順次実施された。同会として初の本格焼酎・泡盛マスタークラスとなる本企画は、国内外で活躍するトップバーテンダーを講師に迎え、焼酎カクテルへの最前線のアプローチをレクチャー。本格焼酎や泡盛になじみのない層や訪日外国人へ魅力を伝える、新しいスタイルを提案する。
また、世界のスピリッツに象徴的なカクテルがあるように、日本ホテルバーメンズ協会監修のもと開発された焼酎・泡盛の「ベーシックカクテル」が発表された。2026年2月5日の東京会場の模様をレポートする。
本格焼酎・泡盛に関心の高いバーテンダーの皆様で満席となった会場
東京会場は定員85人のところ、それを大幅に上回るプロフェッショナルからの応募があった。急遽、できる限り定員を増やしての開催となった。近年、本格焼酎・泡盛がバーシーンにおいて注目を集めていることや、現実的なメニューの導入やブラッシュアップの需要が伺い知れる。講師には、国際的に活躍し、焼酎カクテルを熟知するバーテンダーとして、長友修一氏(Bar Oscar)、南雲主于三氏(Spirits & Sharing)、古澤孝之氏(一般社団法人 日本ホテルバーメンズ協会 副会長)を、海外からはDeke Dunne氏が登壇。モデレーターに児島麻理子氏、蔵元代表として神 孝輔氏(神酒造株式会社)を迎えた。
当日は、以下のような構成で催された。
・本格焼酎・泡盛の基本情報
・日本国内での焼酎カクテル紹介
・海外での焼酎カクテル紹介
・ベーシックカクテル紹介試飲
・テイスティングワークショップ(東京のみ)
・試飲会&情報交換(蔵元・登壇バーテンダーとの交流)
蔵元代表として登壇した神 孝輔氏(神酒造株式会社)。
神氏による本格焼酎・泡盛の基本情報では、製法の特徴と独自性、2024年ユネスコ無形文化遺産認定の話題、世界の蒸留酒との比較などを解説。とくに印象的だったのは、原料由来の香りの違いについての実践的なテイスティングだ。黒糖焼酎と米焼酎を各3種類試飲し、フレーバーホイール(作成:酒類総合研究所)と照らし合わせながら、製法の違いが香りに与える影響を体感した。フレーバーホイールとは、味や香りの特徴を体系的かつ視覚的に表現した円状のチャートで、ワインやコーヒーなどでよく用いられるもの。焼酎・泡盛にも存在し、香味特性を直感的に理解できる。
南雲主于三氏。日本屈指のミクソロジスト。2022年に本格焼酎・泡盛や日本酒といった國酒に特化したバー「FOLKLORE」開店。
焼酎カクテルの第一線をいく南雲氏が、この日、テーマとしたのは、「レモンサワーから見る本格焼酎の可能性」だ。
「日本人のアルコール耐性にも寄り添い、不動の人気を誇るアルコール飲料、レモンサワーに注目します。一般的に多くのレモンサワーは甲類が使われていますが、これを乙類である本格焼酎をベースに『炭酸』『さっぱり』『軽い』という特徴を生かしてカクテル化しようという提案です」
ウイスキーがハイボールブームで起死回生を果たしたように、単体で飲むと重くて強い印象のスピリッツでも、割って爽快感と軽やかさをまとうことで断然飲みやすくなり、幅広い層に受け入れられる可能性を生む。 実際に3種類のレモンサワーのレシピを公開し、参加者全員が飲み比べをした。だが、レシピはあくまで一例にすぎない。
「重要なのは、本格焼酎・泡盛であればどの銘柄を選ぶかはバーテンダーの意図とお客様の好み次第です。柑橘は時季のものや名産のものを使ってもよいでしょう。アレンジに多様性があり、レシピのシンプルさは汎用性を持ち、アルコール度数の自在さで幅広い層に対応できるのが特長です」
カクテル化する際のポイントは以下。
「シロップをしっかり入れて甘味をもたせること。酸味を持たない本格芋焼酎は、柑橘などの酸味が強すぎると、本来持っている甘味が隠れてしまいます。通常のカクテルをつくる際の甘・酸のバランスを逆転させ、甘味10:酸味3ぐらいのイメージでつくるとうまくまとまります」
〈基本レシピ〉焼酎+柑橘+甘味+炭酸
〈具体例①〉
・芋焼酎[常圧蒸留]「尾鈴山 山ねこ 銅釜蒸留」ジョイホワイト/ヒノヒカリ(アルコール度数25度) ……40ml
・レモンジュース ……8ml
・日向夏ジュース ……10ml
・シンプルシロップ ……5ml
・炭酸 ……90ml
〈具体例②〉
・芋焼酎[常圧蒸留]「Miyako Zakura 赤ワイン酵母仕込み」綾紫(アルコール度数25度)……40ml
・レモンジュース ……5ml
・へべすジュース ……5ml
・シンプルシロップ ……5ml
・炭酸 ……80ml
〈具体例③〉
・芋焼酎[減圧蒸留]「木挽BLUE」黄金千貫(アルコール度数25度)……40ml
・レモンジュース ……5ml
・へべすジュース ……5ml
・シンプルシロップ ……5ml
・炭酸 ……80ml
長友修一氏。2023年よりクルーズトレイン「ななつ星in九州」車内、4席だけの隠れ家バーに、週1回バーテンダーとして乗車。焼酎カクテルを提供する機会がさらに増えた。
続いて、長友氏とDunne氏による焼酎カクテルとカクテルメイキングのデモンストレーションが行われた。長友氏は宮崎県出身なことから、バーを開いた時から傍らには本格焼酎を置き、スタンダードカクテルをツイストしたものを提供していたという。15年ほど前から海外に行く機会が増え、本格的に意識して焼酎を使いはじめた。
「焼酎と副材料をつなぐ素材をずっと探していて、やっと見つけたのが甘酒です。今日つくるのも甘酒を使ったもの。飲みやすさと複雑味の両方を満たすカクテルに仕上がります」(長友氏)
Dunne氏は自身のバーでも焼酎カクテルを提供。素材に重きをおき、お客様には見えない仕込みの部分に化学的なアプローチを取り入れてカクテルをつくっている。
「焼酎とひと言でいっても多彩なキャラクターがあることに感銘を受けました。焼酎を飲んだ時の発見をレシピに落とし込み、気に入った味を押し出すことをカクテルづくりのメソッドとしています」(Dunne氏)
Deke Dunne氏。米・ワシントンD.Cにあるスピークイージースタイルのバー「Allegory」のドリンク&クリエイティブディレクター。国際的な賞の受賞歴を持つミクソロジスト。
ベーシックカクテルを考案した古澤孝之氏(一般社団法人 日本ホテルバーメンズ協会 副会長)。
ラムの「モヒート」、テキーラの「マルガリータ」に代表されるように、世界のスピリッツには象徴的なカクテルが存在し、それらがスピリッツの価値を広げる役割を果たしてきた。そこで、古澤氏が本格焼酎・泡盛の「ベーシックカクテル」を考案。「ベーシックカクテル」とは、どんな銘柄にも対応でき、追加のアレンジもできる“余白”を残したレシピであること。そして、実務負担が軽く、導入しやすいことを考慮した。
「あらゆるバーテンダー、あるいは技術のない人でもつくれることを意識しました。焼酎は、常圧蒸留、減圧蒸留という蒸留方法の違いでもフレーバーがまるで変わります。開発した6種類のベーシックカクテルは、どの銘柄を選んだとしても、その多種多様なバリエーションに合わせてアレンジをきかせられる“余白”を残しているのが最大のポイントです。フードとペアリングする際にも、余白があることでうまく交差させられるでしょう。世界に広まるだけでなく、バーテンダーがレストランでも活躍する機会が増えていくことも想像できました」


静かな熱気を帯びながら、マスタークラスは幕を閉じた。その後の会場に設けたブースでのフリーテイスティングでは、蔵元に積極的に質問を投げかけるバーテンダーの姿が見られた。
事後の参加者アンケートでは、約70%が「焼酎カクテルのメニュー化を検討したい」と回答。
「身近な存在の本格焼酎・泡盛が、海外のバーテンダーたちから見ると日本らしさの象徴になっていること、大変魅力的なスピリッツであることを再認識できました。カクテルコンペティションやメニュー作成でもより一層意識して取り入れていきたい」「そのまま飲むものという先入観やバランスを取る難しさもあってこれまで避けていた内容だっただけに、非常に勉強になりました」「新たな可能性と洋酒とのマリアージュの参考になった」「日本の焼酎で創作する技術と作法が世界に通用するカクテルになると思い、さらにトップバーテンダーの講座が勉強になりました」といった声も聞かれた。
一方で、あまりにも日本人にはなじみ深いがゆえの大衆的イメージを払拭する難しさを指摘する声もあった。
日本の文化を宿すスピリッツ、本格焼酎・泡盛のカクテルはどう進化、深化していくのか。この先も行方を見守りたい。

インタビュー・文 沼由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『EST! カクテルブック』『読本 本格焼酎。』『江戸呑み 江戸の“つまみ”と晩酌のお楽しみ』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。
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