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NEW1600.12.15 Fri

『BIRDY.』12周年記念プロジェクト「寅」の象徴である“成長”をスローイングで表現。ビロードのような質感で『ザ・シングルトン』をより立体的に

十二支でめぐる物語(寅年編)/吉田 宏樹さん(EDEN CELLAR)

『BIRDY.』は2025年11月、ブランド誕生から12周年を迎えました。
職人技術に裏打ちされた卓越した品質と洗練されたデザイン――。『BIRDY.』の12年は、常にプロフェッショナルバーテンダーとともに歩んできました。創造性、技術、ホスピタリティといったバーテンダーが体現する美学も、『BIRDY.』が大切にしてきた価値そのものです。

今回、この12という数字にちなみ、干支を重ね合わせた特別企画「十二支でめぐる物語」がスタートします。12人のバーテンダーが、自身の干支をモチーフにオリジナルカクテルを創作する特別プロジェクトです。

一杯のカクテルのみならず、そこに至る思いや歩みに触れられる内容です。世代もスタイルも異なる12人が紡ぐ、12の個性と12の物語。『BIRDY.』の12年とともに巡る、新たなストーリーをお届けします。

寅年生まれのバーテンダー 吉田 宏樹さん(EDEN CELLAR)

寅年(とらどし)編でご登場いただくのは、神楽坂「EDEN CELLAR(イーデン セラー)」の吉田宏樹さんです。ホテルバーで経験を重ねたのち、神楽坂に自身の店を構えた吉田さんは、素材や技法を丁寧に掘り下げながら、一杯の中に静かな強さと奥行きを描くバーテンダー。落ち着いた佇まいの奥に、確かな探究心を秘めています。今回は、寅年が象徴する「成長」というキーワードを手がかりに、自身のスタイルを反映させたカクテルとともに、その思考の一端を語っていただきました。

寅年生まれのバーテンダー 吉田 宏樹さん(EDEN CELLAR)。

■まずは、バーテンダーを志したきっかけを教えてください
祖父の影響で、もともと洋酒には親しみがありましたが、決定的だったのは成人式の日に父に連れられて訪れたホテルバーでの体験です。そこは、ただお酒を飲む場所ではなく、空気感や所作を通して文化や時間そのものを味わう空間でした。そのときの記憶は、いまも強く印象に残っています。
「イーデン セラー」という店名に“楽園”という意味を込めたのも、誰にとっての楽園でありたいのかを常に考えてきたからこそ。バーテンダーとしてキャリアを重ねてきた今、単にお客様と接するだけでなく、お酒やカクテルの魅力をきちんと伝え、その時間ごと楽しんでもらえる場をつくることを大切にしています。

■バーテンダー人生の中で、大きな影響を与えた人や出来事はありますか
2016年のHBA CLASSIC 創作カクテルコンペティション チャンピオンシップと、2019年のディアジオ ワールドクラスへの出場は、どちらも非常に大きな経験でした。
HBAは、ホテルバーテンダーにとって日本一を決める大会のひとつです。そこで優勝できたことで、多くの先輩方や仲間とのつながりが生まれ、まだ訪れたことのない土地の方にも自分を知っていただく機会が増えました。
バーテンダーとして生きていくうえで、大きな影響を与えてくれた大会だと感じています。
ディアジオ ワールドクラスでは世界大会にも進出し、スコットランドのグラスゴーを舞台に競技を行いました。想像をはるかに超える規模で、世界中からトップバーテンダーが集まる大会でしたし、海外の仲間が増えたことも含め、自分の視野が大きく広がったと感じています。
翌年がコロナ禍だったこともあり、あのタイミングで世界大会を経験できたことは本当に貴重でした。

寅年アレンジカクテル『Contrast』に込めた想い

十二支は、もともと動物を当てはめる以前に、漢字そのものに意味があるとされています。「寅」という字には、草木が伸び始める、成長の兆しといった意味があり、そこから草木が伸びていく姿や、弓矢の弦がピンと張った瞬間のようなイメージを連想しました。その“伸び”や“成長”をカクテルで表現するために選んだ技法がスローイングです。液体が一本の糸のように伸びる様子で成長を表し、同時に、ビロードのように柔らかく、膨らみのあるテクスチャーを生み出しています。その質感によって、『ザ シングルトン ダフタウン 12年』の味わいが、より立体的に感じられると考えました。

また、トラを表現するモチーフとして縞模様を想起しつつ、見た目だけでなく味として成立することも重視しました。黄色と黒のコントラストを意識しながら、チョコレートの風味が自然に溶け込むよう設計しています。使用しているのは、冷たい液体に触れると瞬時に固まるシェルトッピングタイプのチョコレートで、グラスの中を冷たい状態に保つことで、滲まず美しい模様を長時間保つことができます。

自家製のクラリファイド・アップルオルジェは、りんごとアーモンドミルクにスパイスを加えてつくったものです。『ザ シングルトン ダフタウン 12年』が持つりんごとアーモンドの要素を引き立てるため、風味だけを残すようクラリファイドしています。自分にしか表現できない味わいをつくるうえで、自家製素材は大きな意味を持っています。

『ザ シングルトン ダフタウン 12年』は、フルーティーさとナッティーでオイリーな質感を併せ持つ、モルトらしいウイスキー。水割りやハイボールはもちろん、カクテルにしても“芯”が残るため、副材料や技法を吟味することで、その魅力をしっかりと表現できる一本だと感じています。

ベースに選んだのは『ザ シングルトン ダフタウン 12年』。オイリーかつナッティーな風味のあとに、りんごの甘美な香りが余韻として残るのが特徴「ウイスキーを飲みなれていないお客様にもおすすめしやすく、非常に万能な一本です」と吉田さん。

グラスブランド SIP AND GUZZLE『Mustache 165 SQ』。ひと目で印象に残る、遊び心あふれるデザインのカクテルグラス。 吉田さんのカクテル『Contrast』では、グラスの外側にチョコレートで施したトラの縞模様が表現されて、こちらも印象に残る演出だ。

『Contrast』(コントラスト)
〈材料〉
・ザ シングルトン ダフタウン12年…00ml
・クラリファイド・アップルオルジェ…00ml
・オリジナル ビターリキュール…00ml
・ブリュット・シャンパーニュ…00ml
〈つくり方〉
①全ての材料をBIRDY. ダブルティンシェーカーに注ぎ、スローイングで合わせる。
②チョコレートで縞模様を施したグラスに注ぐ。
『Contrast』(コントラスト)のカクテルメイキング動画はこちらからご覧いただけます。
道具で人生が変わったエピソード

最後に道具へのこだわりや、道具によって人生が変わったエピソードについて伺いました。

バーテンダーにとって、技術を磨くことは欠かせません。シェークやステア、ボトルの扱いまで、日々の鍛錬がカクテルの完成度につながると考えています。ただ一方で、技術だけでは限界があり、周囲にあるバーツールの進化が、さらなる技術向上を支えてくれるとも感じています。

なかでも、ステアは特に難しい技術のひとつです。私自身も長く難しさを感じていましたが、『BIRDY.』のバースプーンを初めて手にしたとき、その感覚に本当に感動しました。引っかかりのない回しやすさ、スプーン部分の形状、そしてねじり部分の手なじみ。指への負担が少なく、流れるようにステアできる感覚は、今でもはっきりと覚えています。

バーツールの進化によって技術の精度が高まり、その結果、表現の幅も広がっていく。道具は単なる補助ではなく、バーテンダーの可能性そのものを押し上げてくれる存在なのだと実感した瞬間でした。

カクテル『Contrast』では、『BIRDY.』のダブルティンシェーカーを使用。今回の企画では、干支のイラストが記されたバーツールが特別に贈られた。吉田さんのダブルティンシェーカーのボディには、「寅」のイラストが施されている。

『BIRDY.』のブランドマネージャー 横山 哲也氏と。

吉田 宏樹(よしだ ひろき)
神楽坂「EDEN CELLAR(イーデン セラー)」オーナーバーテンダー。ホテルバーで長年経験を積み、国内外のカクテルコンペティションでも実績を重ねてきた実力派。HBA CLASSIC 創作カクテルコンペティション優勝、2019年のディアジオ ワールドクラス世界大会出場などを経て、神楽坂に「EDEN CELLAR」を開業。店名の“イーデン”に「楽園」を、“セラー”に「熟成庫」の意味を重ね、カウンターの傷や経年変化までも熟成と捉える空間を設計。お酒と同じように、店もまた客とともに時間を重ねながら育っていく場として、一杯一杯に向き合っている。



『BIRDY.』のカクテルツールは、バーツール専門店『BAR TIMES STORE』でご購入できます。

『BIRDY.』公式サイトはこちら。

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