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バーをこよなく愛すバーファンのための WEB マガジン

2023.02.3 Fri

トップバーテンダーたちが再定義する
SUNTORY WORLD WHISKY 碧 Ao の水割り
1対1では香りが見えない
「碧Ao」が開く加水点はどこだ

伊藤学さん(MIXOLOGY HERITAGE)東京・日比谷
伊藤学さんに訊く〝ウイスキーの水割り〟の魅力と極意

水とウイスキーのみでつくる水割りは、極めてシンプルでいて、真っ向から向き合えばとても多面的にとらえられる飲み方である。ここでは、3人のトップバーテンダーが水割りを再定義し、個性豊かな世界5大ウイスキーの原酒をブレンドした「SUNTORY WORLD WHISKY 碧 Ao」の新しい飲み方を提案。食中酒としても愉しめる水割りの魅力を再発見する。
三人目は、伊藤学さん(MIXOLOGY HERITAGE)に話を伺った。


ー ウイスキーの水割りとは、どんな飲み方ですか ー
プロがつくる水割りは
ウイスキーのポテンシャルに合った水加減


ブレンダーがウイスキーと水を1対1で合わせ香味を確かめるように、水と割ることでアルコール度数が下がり、きゅっと詰まっていたシングルモルトの香りが開いて麦の甘さが出てきます。一般的な水割りは、グラスに氷を入れ、ウイスキーを注ぎ、水を入れて混ぜる。これだと急激にウイスキーの温度帯が変わってしまい、麦の甘さではなく苦味が出てきてしまうんです。ゆっくりゆっくり水を馴染ませてあげれば香りが開いて甘さが伸びる、そうするとクリーミーな舌触りの水割りができます。ただ、あまり水で伸ばしすぎるとまた苦味に変わってしまうので、ちょうどいい水加減が甘さのポイント。プロがつくる水割りは、そのウイスキーが持つポテンシャルに合わせた水加減を把握することが大事なんです。


ー SUNTORY WORLD WHISKY 碧 Ao の魅力とは ー
カナディアンはグレーン、バーボンはまとめ役。ブレンダーの凄みを感じた別格のヴァッテッド


最初に綺麗なアイリッシュがふわっと出たあとに、白州のスモーキーとアードモアのスモーキーが続いて、山崎のねっとりとしたシェリーとグレンギリーの華やかなエステリー、そしてアルバータのカナディアンが口の中を包んだと思ったら、最後にジムビームのバーボンがぶわっとまとめる。「SUNTORY WORLD WHISKY 碧 Ao」(以下、「碧Ao」)を口に含んむと、それぞれの味わいがタンタンタンとリズミカルにやってきます。特にジャパニーズとスコッチの出方が実に面白いんですよ。これはとにかく凄いぞって思いました。何が凄いって、ウイスキーのブレンドはやっぱりグレーンがないと難しいんですよ、丸くならないから。シングルモルトだけで混ぜるとどうしても喧嘩しちゃう。でも、「碧Ao」は、カナディアンがグレーンの役割を果たしていて、まとめ役にバーボンがいる。そこにそれぞれのシングルモルトが美しくのっている。しかも、ジャパニーズは山崎と白州、スコッチはアードモアとグレンギリーがあるので、国は5つでも7種類の個性の違うウイスキーが使われているんです。それをここまで綺麗にまとめるって至難の業ですよ。5大ウイスキーをヴァッテッドしたものは他にもありますけど、このまとめ方は別格。ブレンダーの凄さを改めて感じました。
「碧Ao」のブランドサイトには様々な飲み方が載っていて、それが実によく出来ているんです。例えば、1対3.5の炭酸割りでレモンピールを振るとアイリッシュが感じられる。それをオレンジピールに替えるとバーボンが出る。グラスの縁に塩をちょっと付けるとスコッチのスモーキーさが出る。それぞれやってみましたが確かにそうなんです。でもちょっとツウすぎる(笑)。私は水割りが一番良かったかな、やっぱり。

ー 伊藤学さんがつくる究極の水割り ー
シングルモルトと製法の違うアイリッシュとバーボン。ピタッとまとまるベストな水分量を探す


私のつくる「碧Ao」の水割りのポイントは、常温のウイスキーと水を少しずつゆっくりと合わせ、いわゆる“乳化させる”点にあります。急激な加水はアルコールが嫌うので分離するんですよ。ウイスキーをスワリングしながら少しずつ加水することで両者がまとまり、時間が経っても分離しない水割りができます。そして、アルコールと水がしっかりと結合することでとろみが生まれ、舌触りが滑らかになるんです。私自身、とろみはアルコールを急激に冷やすことで生まれるものだと思っていましたが、実はそうではなく、とろみはアルコールと水が結合した証拠なんです。
もう一つのポイントは温度帯です。つくる工程として、常温で結合させた水割りをステアしてグラスに注ぐのですが、その際大切なのが、ミキシンググラスとロックグラスの温度を同じにすること。そのためには、ミキシンググラスの氷を水でステアして十分に水分をまとわせ、その水を氷の入ったロックグラスに移す。これで中の温度が均一になり、出来上がりが全て同じ条件になります。
そして、もっとも重要なのは水の量。これには私もかなり検証を重ねました。このウイスキーはグレーンがないだけではなく、シングルモルトとは製法の違うアイリッシュとバーボンが入っています。バラバラの味わいをひとつにまとめ、43度のアルコール度数で仕上げているので、味がぎゅっと詰まっているんです。なので、1対1で割っても香りは開かず、徐々に加水していくと今度は香りがバラバラに出てくる。ピタッと香りがまとまる点をどこだどこだと探しながら加水を続け、ようやく感じ取れたのが1対1.5から。ステアで出る水分量を含めると最終的には1対2.3が絶妙なバランスでした。容量で言うとウイスキー30mlに水を45ml、ステアで出る水分量が25ml。つまり、ウイスキー30mlに対して70mlの加水。これが私のベストです。
5つの香りがひとつにまとまり、時間が経っても美味しく、舌触りはクリーミー。私のつくる渾身の「碧Ao」の水割りをぜひ一度飲んでいただきたい。

伊藤学さんがつくる究極の水割り
〈材料〉
・SUNTORY WORLD WHISKY
碧 Ao(常温)30ml
・水(常温)45ml
〈つくり方〉
ウイスキーを入れたワイングラスをスワリングしながら、水をゆっくりと加える。ミキシンググラスに氷を入れ、水を注いですぐに空けたら再度水を注いでステアし、氷に水を含ませる。ロックグラスに氷を1つ入れ、ミキシンググラスの水を移し、水をよく切る。ウイスキーをミキシンググラスに注ぎ、ゆっくりと長めにステア。ロックグラスに静かに注ぎ完成。



伊藤学さんのカクテルメイキング動画


伊藤学(いとう まなぶ)
1969年生まれ。1989年、新宿『カクテルバー・ギブソン』(現在は閉店)に入店。在籍時より、伝説的バー『いないいないばぁー』の藤田佳朗氏に師事。1993年、漫画『BARレモン・ハート』の著者古谷三敏氏が経営する『BARレモンハート』に移り、以後16年にわたり同店に勤務。2010年より2017年夏まで、六本木のバー『Ne Plus Ultra』にてマスターバーテンダーを務める。現在はスピリッツ&シェアリング株式会社におけるクラシックカクテル部門統括兼マスターバーテンダーとしてスタッフへ技術指導をしつつ、現場でカクテルをふるっている。

MIXOLOGY HERITAGE
東京都千代田区内幸町1-7-1 日比谷OKUROJI Tel: 03-6205-7177
有楽町駅から新橋駅の高架橋下にある商業施設「日比谷OKUROJI」の一角に、クラシックバーテンダーの巨匠、伊藤学氏がカウンターに立つ「MIXOLOGY HERITAGE(ミクソロジー ヘリテージ)」はある。HERITAGEの店名通り、ビンテージボトルの味わいを豊富な知識とブレンド技術でよみがえらせ、クラシックカクテルとして提供している。


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